見出し画像

バリ人に学ぶ異文化との共存。【バリから始める地方創生(5)】

少し前ですがまた地方についての記事が出ていましたね。「この町に住むための7か条」みたいな。”都会風を吹かすな!”というワードが強めのインパクトです。

「都会風を吹かすな、品定めされるのは当然」

ジャック・ニコルソンがイタリアの田舎町でつぶやいているとすれば似合いそうです。葉巻をくわえさせましょう。


強面ジャックさん。

でもこれは日本の話。
そんなハードルの高いところに誰が行くかい!となる気がしますが、移住者を受け入れる側にとっては本音なんでしょうね。過疎で人口減少には困ってるけど、来て欲しいのはうちらの話が分かる人間だけ、つまり仲間が欲しいんであって、いけ好かないやつはお断りだ、と。(移住者がトラブルを起こすことがあるから、というのもきっとありますけどね。)

前回書いたのですが地方移住の本質は都市部と地方の人間が混ざり、そこで化学反応を起こすこと。どちらも「俺ら色に染まれ!」の姿勢ではそれは起こりようがない気がします。

前回の記事↓


バリ人と外国人

さてバリ島の話。

バリ島は世界中から観光客が訪れる世界有数の観光地です。観光に止まらずそのまま移住する人間も多数いまして、僕自身もそうだったわけです。

住みはじめの理由は様々ですが、バリ島の住民430万人に対し、長期滞在も含めると居住している外国人の数は数万人を軽く越すと思われます。それが特に有名観光地や都市部に集中することを考えると、各地域で移住者と地元民との衝突が避けられない!!

・・・と思いきやこれがそれほど多くないんですね。

それにはこんな価値観が影響していると思います。

「TAMU思想」

思想ってのは僕が勝手に言い始めましたけど、TAMUはタムと読みます。インドネシア語で”お客さん”を意味し、”外国人”ほどの意味合いでも頻繁に使われています。

悲しい話として聞くこともあるんですよ、すごく親しく付き合ってきて身内だと思っていたバリ人家族が別の地元の友人と話している時に「うちにいるTAMUがね」みたいに自分たちのことを話してて

「あぁ、所詮うちらはタム(客)なんだ・・・。」

と疎外感を感じたりする。所詮何年住んでも外国人は外の人間で仲間には入れてもらえてないんだと。

でもこれって悪いことじゃないんじゃないかと僕は思ってて。

文化の担い手とTAMU

インドネシアという国は90%近くがイスラム教徒なんですが、このバリ島だけは島民の90%以上がヒンドゥー教徒。それもインドのものとはだいぶ違って土着の宗教観と交じり合った独自のバリ・ヒンドゥー文化を作り上げています。

毎朝毎夕のお祈りがあり、お供えを作り、お寺の行事や成長に伴った儀式など日々やることが盛りだくさん。島内1万を超えるという寺院にてこれが6か月に1回だとか10年に1回だとか、それぞれに行われるわけです。

祈りが日常のバリ島

時には朝から深夜まで、時には明け方までかけて女性も男性もお寺や集会所に詰めて大いに働きます。数回だけ僕も祭事のお手伝いに参加したことはありますが、はっきり言って全てを続けることは至難の業!僕はバリ人にはなれません。

しかし生まれた時からそれが当たり前のバリ人は当然のこととして続けています。外国人にはそれは強制されません(よかった)。

でもそれは「TAMU」だからです。

確固たる自分があれば他者を受け入れられる

僕ら外国人はそのバリ文化に惹かれながらやっぱり異邦人。憧れながら、うらやみながら、同じバリ島に住み、しかし永遠にバリ人にはなれない。

でもこの繋がっているようで一線を引かれてるようなゆるいつながりを僕はすごく肯定的にとらえています。

冒頭の「都会風を吹かすな、品定めされるのは当然」という「俺色に染まれ!」対決ではなく、お互いの価値観を尊重しながらともに歩くのに必要なのがこのTAMU思想な気がするんです。

その土地の歴史、文化、習慣に最大限のリスペクトを払うのは当然のこと。そのうえで相手を受け入れるための隙間のような時間、とらえ方があればお互いのいい部分がもっと見えるような気がしますし、そこから地域文化の担い手も現れてくるんじゃないでしょうか。

実はこれ人口減少が続き、やがて移民を受け入れる時代が来た時に必要な日本の姿勢かもしれないとも思うんですよね。自分たちの文化を良く理解し、誇りを持った上でこそできる「TAMUだから。」という関係。どちらの側にも優しい言い訳なんじゃないかと思います。

日常雑記

みさとサンバルを作っている僕ら(夫婦二人)ですが実は”またたびクラフトコーラ”なるものも製造しています。

「またたび」と言うと猫を連想されると思うんですが実はまたたびは人にとっても有益なもの。漢方では「木天寥(もくてんりょう)」と呼ばれ「また、旅に出る」が語源にあると言われるくらい体にいいものなんです。

美郷町の大和地域ではそのまたたびの実を漬けたシロップが伝統として残っていまして、それをクラフトコーラにしたものが「またたびクラフトコーラ」。

これが町内では好評でして、朝起きて飲むとスッキリする、仕事終わりに最高!と順調にお買い上げいただいています。そしてこの度、三瓶山にある「さんべ荘」さんでも販売開始することとなりました!

おりしもさんべ荘さんで「羽生善治vs藤井聡太」王将戦が今週末に行われます。ひょっとしたら、万が一、またたびクラフトコーラのパワーが勝者に味方するようなことがあるやも!?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?