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しぜんのおんがく

風のつよい夕方に
母ちやんと山へ
お花とりにいつた
山のおんがくは
おそろしかつた 数え年 八歳(大正十三年五月)

チドリにしてはめずらしく、「しぜんのんがく」「山のおんがく」という表現は《抽象度》が高い言葉です。スケールの大きさを感じます。即物的な具体を超えていくチドリの成長を感じさせる一編です。
二行目の「母ちやん」拗音、三行目の「いつた」最終行の「おそろしかつた」などの促音が、大文字表記になっていることにお気づきでしょうか。
これらは、現代の印刷・出版の世界では「捨て仮名」「半音」と呼ばれ、ふつう小さな文字で記されます。
小文字表記になったのは、太平洋戦争後の1946年(昭和21年)のことでした。
それまでは、大文字表記。歴史的仮名遣いでした。漢字熟語も例えば‥「今日」は仮名で書けば「けふ」「観光」は「くわんくわう」、「薩長」は「さつちやう」でした。
むかし小学校で習った安西冬衛の一行詩「てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った」を思い出します。「てふてふ」は「蝶々」‥‥歴史的仮名遣いと現代仮名遣いの違いと味わい。
今日はちょとした言葉のトリビア、豆知識で失礼しました。【千鳥の詩文のすべては HP「田中千鳥の世界」で公開、読むことが出来ます。】

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