愛玩動物

 水際に立っているとやって来て、くれろくれろと水中から手をのばしてくる。鬱陶しいので土を蹴ってやると、痛かったと見えて、ばちゃばちゃと水音をさせ、あっという間に岸から遠ざかった。そして遠くのほうからもの欲しそうにこちらを見ている。期待でそのカタチがぱんぱんに膨れあがる。そして萎む。膨れあがり、萎む。膨れあがり、萎む。

 その細い眼で、じっとこちらを見ている。

 人であれば自分を愛玩して当然なのだと、そう思い込んでいる様が片腹痛い。誰もおまえに教えてやりはしないのか。おまえは醜い。ごてごてと歪に膨れた皺だらけででこぼこの塊。皺の隙間から細く、濁った水の色をした瞳が垣間見える。

 なぜ自らを愛らしい存在だと思い込んだのか、誰がおまえにそう教えたのか。おまえは身の程知らずの自己像に拘泥したまま、その醜い姿で人に媚びへつらい生きようとする。

 じっと立っていると、そろりそろりとまた岸に近づき、その細い濁った目で見つめる。

 自らには愛らしいところなど露ほどもないということを、この生き物は知らない。

――了――


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