贈り物

 私が彼を好きになったのは、古いものを大事にする人だったから。色褪せた本やくたびれた服、親から譲り受けたという楽器、そういったものを大事に大事にクローゼットの中に片づけて、そして時折取り出して、大事に大事に使っていた。

 私が彼と暮らし始めたとき、指輪の代わりにといって指ぬきを貰った。祖母が着物を作るときに使っていた指ぬきなのだけれども、ぼくの宝物なのだといって。きみもぼくの宝物として大事にするよといって。それで私はその指ぬきを受けとった。この人ならその言葉のとおり、私を大事にしてくれるだろうと思ったのだ。

 かれは私を大事に大事にしてくれている。萎びた私の身体に綺麗な服を着せてクローゼットの中に丁寧に片づけ、時折取り出して愛でてくれる。湯浴みをさせてくれて、新しい服に着替えさせてくれて、手ずから食事を与えてくれて、また丁寧に片づけてくれる。

 お礼にクローゼットの中で見つけた綺麗な色のキノコを、私はかれに贈るつもり。次にかれに会えるのはたぶんかれの誕生日。それまで薄暗くて湿ったクローゼットの隅のほうに蹲って、大事に大事に育ててあげる。

――了――


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