「何者か」になりたい、という焦りについて

HowtoTaiwanというすんばらしきメディアを、ご存知だろうか。そんじょそこらの台湾情報ガイド——「とりあえずまとめた」「有名どころを集めた」みたいなありきたりなやつ——とは一線も二線も画していて、

「わたしの好きな台湾を本気で紹介します〜〜〜!!!」
「台湾好き、集まれ〜〜〜!!!」
「みんなも台湾好きになって〜〜〜!!!」

といったつくり手の本心、ビッグでディープなラブが凝縮しているメディアだ。当然ディープなファンも多く、主催のイベントは毎回熱気がすんごいらしい。もう説明するのも野暮なのでクリック、クリック!

そのすんばらしいメディアを立ち上げ、編集長を務めているのが大好きなママ仲間の田中伶だ。

彼女とはいつ知り合ったんだっけ……とにかくはじめは「メディア女子会」的なノリの飲み仲間で、その飲み仲間がみんな同時期に妊娠してママ仲間に発展する、というミラクルが起こったのだった。ビールをお茶に持ち替え、なにかと支え合っている(でもときどきはやっぱりビール)。

さて、彼女が少し前に、こんなことを言っていた。本人は覚えていないかもしれないけど。

「How to Taiwanを立ち上げて、焦らなくなったんだよね」

はっとした。ああ、よかったなあと思ったし、いいなあと思った。

彼女はものすごくエネルギッシュで、明るい。そして自分の名前で生きていこうとするひとだ。いわゆる、自分の人生を経営できる人。

地元関西の大学在学中にキャリアスクールを立ち上げたり、卒業後は東京で起業したり、その後はベンチャー企業でごりごり貢献したりと、とにかくアグレッシブに見える。ちなみに、いまサイトを見たら

ブログ「As I Am. 使えるキャリア学」では大学在学中から5年以上、年中無休で毎朝8時に記事を更新し、話題のビジネス書の紹介や使える経営学の理論などを解説。

と書いてあり、平日noteの更新もちょぼちょぼなわたしはよりいっそう尊敬の念を深めた。年中無休で5年以上!

そんな彼女が、「焦らなくなった」と言っていたのだ。つまり、それ以前は焦ってたってこと。

……これは自分の経験を重ねての、完全なる妄想だけど。

20代のうちはだれかの成功やいい仕事を耳にしたとき、祝福しながらも焦りに襲われ、胸のあたりがもごもごしていたんだろう。
自分はまだまだだ。自分はなんでここにいるんだ。こんなもんじゃない。——悔しさをガソリンにしていたんじゃないか、と思う。

「自分は何者かになれる」と信じる気持ちと「どこで/なにで何者かになればいいんだろう」と焦る気持ちのミックスで、ほんとうは前に進みたいのに上を向いて足踏みしているような時期も、もしかしたらあったのかもしれない。

でも、思考を転がし、手を動かし、ものすごくがんばった結果、最愛のメディアを世に出した。そこに共感してくれるひとがたくさん集まってきて。大きくしたり、濃くしたりして。

HowtoTaiwan編集長として「何者」かになったことで自分の輪郭がはっきり見えて、ここでがんばればいいんだって足場が固まったことで、焦りから解放されたんじゃないかな——勝手に、100%妄想で、そんなことを思った。わたしだったらそうだなって。

◆  ◆  ◆

焦りや嫉妬を抱いたとき、素直に「すごい」と言えない人はいる。わたしにもそういうところがある。それはかっこ悪いことだし、なによりそうして鼻の穴をふくらませている本人がいちばんつらい。

でも、
自分がまだ「何者」でもないことを自覚していて、
「何者」かになりたいのであれば、
「何者」かになった人やなろうとしている人に対して焦りの感情を抱くのは仕方ないな、とも思う。

そしてその焦りや嫉妬は、ちゃんと向き合えば、ひとをちゃんと努力させる。大きくさせる。

自分の道を迷いなくすんなり見つけたひとを横目に、
それでもなにかを成すことをあきらめずに動き回って、いろいろなものに出会って、考え続けて……。

そうして、
納得できる肩書を自分につけられたとき。
進む道を見つけられたとき。
ひとはようやく、焦りから解放されるのかもしれない。

もちろんこの解放は、何者かになることだけじゃない。もがくことをやめるのも、ひとつの解放だ。みんなが「社会的に」何者かであれなんてまったく思わないし、それを希望しないひとだって多いと思う。

結局、どの道でも——バリキャリでも専業主婦でも売れないミュージシャンでも、インスタでも都心でも地方でも——自分が自分の感性で満たされていれば、それでいい。

だからこそ、満たされていないと自覚したときには、自分の道を納得できるまで模索することをあきらめたくないなあと思うのだ。


そうそう、満たされている、と言えばね。件の田中伶が先日こんなツイートをしていた。

満たされたことで、満たされなくなるなんて。もう、あなたはビッグになるよ、すてきだよ、と思った。

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田中裕子

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