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わたしはおまえが大嫌い

「どんなタイプの男のひとが嫌い?」

道を歩いていたら突然問われた。ほかでもない自分に。

こうした脈絡ゼロのセルフインタビュー、昔からぼーっと歩いているときにしばしば降ってくる。今日のテーマはこれ。もしかしたらすれ違ったひとが妙に気にくわなかったり、逆にすんごい好みだったのかもしれない。

しかしこの問いに関してはもう、答えがいくつかある。そのトップとも言えるのが、タイトルのとおり。

「女性をおまえと呼ぶ男」だ。わたしは「おまえ」が大嫌い。

少女マンガではヒロインへの「おまえ」呼びが一般的だけれども(そしてそれが女ごころを掴んでしまうのだけど)、リアルの男性に突然そう呼ばれるのはちょっとありえない。「失礼だからやめて」と意思表示するし、しつこく呼ばれたら「強い男アピールなの? 格下だと思ってるの? 本来の『御前様』の意味で使ってるの?」と真顔で詰める。

ちなみにさっき、85パーセントの女性が男性から「おまえ」と呼ばれるのはイヤだと思っている、というネット記事を見つけた。だよね。

実際、一度テンションが上がって調子に乗った夫に「ちょ、おまえ」と言われ、静かに能面になったことがある。夫曰くわたしは「反おまえ原理主義」なのだそうだ。原理主義……。


よく言われることだけれども、英語なら「you」で済むところを、さまざまな言葉で上下などの関係を細かに表現できてしまうのが日本語特有の性質だ。それが便利でもあり、豊かでもあり、センシティブなところでもある。

だからこそ、ふつうに「おまえ」と使ってしまうひとに対して、相手を尊重する気持ちや想像力、言葉への敏感さをまるっと喪失している感じがして「イヤだ」と感じてしまうんだろう(なので、お互いに「おまえ」でOKと通じ合ってるなら全然構わないと思う)。

言葉は強い。「おまえ」と呼ばれることに甘んじた結果、「おまえ程度」になってしまう気すらしてしまう。大げさかもしれないけども、「おまえ」扱いを受け入れることで、それに合わせてナチュラルに自分の存在を下げてしまうイメージ。「あなた」と呼ばれ続けるのとでは、自分に持つ印象も変わってくるだろう。

だからたとえば、上司なるひとに「おまえ」と呼ばれる環境にいたら。それはもはや「部下」じゃなくて「弟子」扱いで、そのつもりがないひとにとってはつらいだろうなあと思うのだ。だって本人は「部下」であっても、「下」のつもりはないんだから。

でも……そんなぞんざいな扱いに対してはじめは「最低」「下品」「暴力」「何様」といった反発の言葉が頭を巡りながらも、だんだん自尊感情とか判断力とか失ってしまいそうで怖い。やっぱり言葉は、強いから。


少し前、弊社バトンズの社長・古賀さんとツドイの今井さんと飲みに行ったとき、古賀さんがもう気持ちいいほど酔っ払いになった。でも、ちょっと何言ってるかわからない、みたいな中でもわたしたちのことを「今井くん」「田中さん」と呼んでおり。

めちゃべろべろだなあとなかば呆れながらも「しゃーないな」と笑えたのは、ここのラインがあるからかもなあ、と感じたのを思い出したのでした。

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