イヤイヤ期のなにがつらいのかという話と、人間の幸せについて

1歳11ヶ月のむすめ。イヤイヤ期と言うには控えめらしいけれど、少なくとも自我を獲得し、思うがままに爆発させているのはまちがいない。

「お着替えしようか」「イヤ」

「お風呂入ろうか」「イヤ」

「歯磨きしようか」「イヤ」

以前は意気揚々と取り組んでいた大葉ちぎりなどのクッキング補助も、最近は「イヤ」にシフトチェンジ。「ごはん食べよう」「絵本読もう」以外、まず「イヤ」を繰り出してくる。 

子どもが「イヤ!」と言ったとき、強引にことを進めようとしたら怒って余計に時間がかかる。だから気を逸らそうとしたり、道化になったり、優しいトーンで説得したりするわけだけど、その「地雷を踏んだらやばい人に気を遣う感じ」にもかなり気力を削られる。

すぐ機嫌が悪くなる人といると、疲れる。相手が子どもだろうと、親として大人げなかろうと、疲れるものは疲れるのだ。

とはいえ、これも大切な成長過程だと理解はしているし「イヤ!」と主張するときの顔ってかわいいな、ザブングル加藤みたい、と眺めて楽しんだりしている。

……とはいえ、やっぱりときどき精神の閾値を超えて無になる瞬間がある。

イヤイヤ期のパターンもおそらく子どもそれぞれで、うちの子の主攻撃は「ぐずり倒す」だ。一日の大半を泣いて過ごすこともある。癇癪を起こすことはまったくないけれど、ずっとシクシクしている。

これがまあ、なかなかしんどい。「家の中でも手をつないで歩きたい」と主張しては泣き(メンヘラの彼女みたい)、「しまじろうがいない」と気づいては泣き(自分がベッドに持っていってたじゃん)、わけもわからず泣く(お手上げ)。イヤイヤ期であり、シクシク期だ。

さらに、もともと抱っこちゃんだったのに拍車がかかってほぼコアラ状態、おろすと号泣。とくに外では不機嫌なことが多く、絶対におろされまいと固い決意を見せ、少しでもおろすそぶりを見せるとシクシクする。

このまえ駒沢公園でママ仲間たちと遊んだときは水遊びを断固拒否、うちの子だけほぼ終日わたしの腕の中にいた。もはや二の腕が武田真治になりそうだし、同年代のご機嫌な子どもたちを見て切なくなる。

先日、いつものようにシクシクしているむすめを慰めているとき、ある気持ちが風に運ばれてやってきた。

「楽しそうな姿が見たい」

ずっと悲哀や文句のにじみでたネガティブな声を聞き、不機嫌な顔を見ている。ああ、笑い声や歌声を聞きたい。夢中に遊んでいる姿を見たいんだなあ、わたしは。

子どもが楽しそうだと、夢中になっていると、目がキラキラしていると、親はふしぎなほど癒やされる。満たされる。あらゆる理不尽が昇華される。これは子育ての大きなよろこびだと思う。

一方で、子どもが楽しくなさそうだと、そのよろこびが得られない。おおげさではあるのだけれど、人生がつらそうな様子に、こちらも暗くなってしまう。

イヤイヤ期の「イヤ」に疲れる、それもゼロではない。けれどなにより、大好きな子どもには笑っていてほしい、楽しそうに生きていてほしい、好きなことにのびのび取り組んでほしいと願っているからこそ、そうじゃない姿に心が重くなるのだ。

そして、この「楽しそうな姿を見たい欲求」は子どもに対してだけじゃないなと気づいた。わたしは夫にもよく「できるだけ笑っていてほしい」「楽しく仕事ができますように」と言っているし、比較的クールな愛犬(柴犬)が公園を走り回って満足そうな顔をしていると、ものすごくうれしくなる。

家族であれ、会社であれ、コミュニティであれ、基本は同じだと思う。そこにいる人のいい表情や幸せそうな姿を見ることは、きっと人間の癒やしになる。

これは想像だけど、飲食店の人やイベントを主宰する人のモチベーションもそこにあるんじゃないだろうか。どれだけ大変でも、お客さんのいい顔を見たら昇華される。もっとがんばろうと思う、みたいな。

わたしは子どもにサービスを提供しているわけじゃないけれど、ただ子どもの楽しそうな顔を見たい、つまり「自分が」幸せになりたいのだな。これはエゴなのだろうか。

——シクシク泣いている子の頭を撫でながら、そんなことを考えた。

むすめがこれからどう育つかサッパリわからない。けれど、少しでも楽しそうな姿、いい顔を見るための試行錯誤はつづく。

ああ、はやくむすめがご機嫌に、楽しく、落ち着いて過ごせるようになりますように。できましたら遊びに集中したり、お外遊びも——いや、ぜいたくは言わないので、外をご機嫌に歩けるようになりますように。

そして。「遊ばない子」「外嫌いな子」へのアドバイスがありましたら、ぜひ田中まで……!


余談。

この記事を読んで「ブラブラかあ、そう思ったらかわいいもんだね」なんて思っていたころが、わたしにもありました。

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