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評価せずに寄り添うということ

23日は結婚記念日で(7年目に突入!)、夫婦ディナーを催した。毎回フレンチやイタリアンでかっちりやるのもつまらないねということで、「地元の店をNO予約ではしご酒」がテーマに。立ち飲み日本酒、鮨、スペイン料理とよく食べ、よく飲んだ。その結果、昨日noteに書いた惨事が起こったわけである。

さて、はしご酒の間、むすめはベビーシッターさんに託すことにした。いつものキッズラインで、でもはじめてのシッターさんに依頼。パジャマやオムツ、歯ブラシなどを用意し、ウキウキしながら到着を待った。

チャイムが鳴る。ドアを開けると若い、笑顔の優しい女性が立っていた。……のだけど、むすめは部屋にシッターさんが入ってきた瞬間「ママいなくなるつもりだ!」と察し、大絶叫の大号泣。いつも来客にはウーワンワンとひとしきり吠える愛犬テンコも、むすめの取り乱しように黙っていた。

むすめの絶叫と本気の涙、自分にまっすぐ伸ばされる両の手にわたしが逡巡していると、シッターさんはにっこり笑って「まっすぐ成長してますね」と言った。思わぬ言葉に、えぇっ、とシッターさんを見る。アホ面だったと思う。「大丈夫ですよ、慣れてますから。どうぞ行かれてください」。

あ、はい、ありがとうございますとうなずき、いそいそと部屋を出る。それでも気になってしばらく玄関の外で耳をそばだてていたのだけど、ものの1分ほどで泣き声は聞こえなくなった。すごい。安心して待ち合わせ場所に走った。

そして4時間後、転んで舌を切り、手を擦りむいて血だらけになった夫(後に骨折と判明)と帰宅したわけだけど。

完了後しばらくしていただいた長いレポートに、ウソでも誇張でもなく、本当に感動した。

一部、引用します。

お母さまが出掛けられてから、ミッキーのパペットで話し掛けると、すぐに泣き止んでくれました//シッターさんが来るとお母さんが出かけることの「見通し」を持ててるということですし//「気持ちを切り替える力」がしっかり備わっていたので、私はその姿に感心しました。

「うー」とタコのような口で嬉しさを表していたので私も真似したところそれが面白かったようで//「人と同じことをする」というのが楽しいと思える力、他者の存在を感じてるということなので、とても素敵だと思いました。

てんこちゃんの毛が気になったようで、コロコロをしたいと表し//その後、寝室に向かう//何かと思ったら、掃除機を指差すではありませんか…!「掃除したいの?」と聞くと、「うんうん」と//掃除をしたいときに、掃除の道具は何があって、それがどこにあるか理解している。これには驚きました。

自分でも、どうしてこんなに感動するんだろうと不思議なくらい、ぐっときた。何度かこのレポートを読み返して、その理由がなんとなくわかった。

評価や比較とは違う次元の言葉だからだ。
まっすぐ、絶対値で、むすめを見てくれているんだ。

別に、むすめは「すごいこと」は何もしていない。月齢に対して成長がはやいわけでもない。親にとっては日常の姿ばかりだ。でも、それらをこの子の「素敵なところ」としてすくい上げ、言語化し、「感心した」「素敵だと思った」「驚いた」と率直な感想を添えてくれた。だから、うれしかったんだと思う。

たとえば、世の中には「言葉のはやい子」というのがいる。1歳前半で2語文(「お茶・ちょうだい」)をぺらぺら喋れるような。

この場合の「はやい」は、比較対象ありきだ。「発達の平均や同じ月齢のほかの子より先に習得した」という意味だから。それはひとつの評価と言える。

SNSでも子育てクラスタにおいては、「もう○○できた!」「すごい!」というやりとりは多い。それが悪いわけではまったくないけれど、やっぱり、ふつうの子より一歩前に進んでいるよろこびや驚きが含まれているんだろうなと思う。こうした「すごい」に関しては、公文でもう中学校レベルまで進んだとか、もうショパンを弾いてるのとか、もうバタフライなのとか……これからも限りなく耳にするんだろう、きっと。そしてその裏側には、「すごくない」子がいる。

でもこのシッターさんは、「すごい」とか「すごくない」の評価軸を持たずにむすめを見てくれた。ただ彼女の持つ性質をすくい上げてそのまま見てくれた。寄り添ってくれた。「愛情いっぱいに育ってますね」というメッセージを、全力で伝えてくれた。

もちろん保育士さんもそういうスタンスなのかもしれないけれど、やはりマンツーマンは密度が違う。ひとつひとつのアクションにひとつひとつ言葉を添えてくれる経験は、なかなかできない。

——ね、ウチの子、すごくはないけど、素敵でしょう?

そんな気持ちにさせてくれるなんて、最高のシッターさんだ。

やっぱり人気なのかぜんぜん空きがないけれど、このひとに託すためにまた夫婦で飲みに行きたい。このひとの目で、むすめを見たい。

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田中裕子

batonsのライター。編集、インタビュアー。本をつくったり、雑誌やウェブで記事を書いたり、イベントの司会をしたり。鹿児島出身、東京在住。保護犬の柴犬テンコがかわいい。 noteは平日毎日更新(予定)。https://tnkyuko.themedia.jp/

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コメント4件

うわぁ、めちゃめちゃ素敵です。そういう目で子供を見れないので…(どうしても贔屓目に見てしまう)さぞ素敵な方なのでしょうね
シッターさんの観察力と表現力、素晴らしいですね…!私も暖かい気持ちをおすそ分けしていただいた気分です。
そして、旦那様の骨折…大変ですね😱インフルエンザも流行しているようなので、田中さんも無理せず(という訳にもいかないかもしれないですが…)、何とか乗り切れますように…🙏💦
「まっすぐ、絶対値で、むすめを見てくれている」→自分の行動を振り返って反省とともに、すごく沁みました。ご夫婦の関係性も、とてもステキです!
素敵なシッターさんとの出会いに乾杯ですね。
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