「初めての体験」をいくらで売るか?

週末、友達にすすめられ、ハンドドリップ日本茶専門店「東京茶寮」で開催されたイベントに顔を出した。その名も「飲む植物園」。

「飲む植物園」とは?
「飲む植物園」とは、フラワーアーティストedalab.と、ドリンクディレクター・セキネトモイキによる体験型ドリンクケータリングイベント。

東京茶寮は普段、シンプルなコの字のカウンターに座ってしっぽりとシングルオリジンの煎茶の飲み比べを楽しめる喫茶店(らしい)。でも、「飲む植物園」では苔や花がカウンターの上に所狭しと生けられていて、なんだか温室の中みたい。スタンディングで、たくさんのお客さんが入っていた。

お会計を済ませると、おちょこのような小さなカップを渡された。まずは、カウンターの3辺それぞれに1種類ずつ用意された水出し煎茶を試飲。その中で気に入ったものをゼリー状の水が入った大きなコップに注いでもらい、カウンターに置かれたハーブや花を飾ったりハーブシロップを入れて飲む——。

おしゃれ。あたらしい。はじめて。ハーブやシロップを足すことで、次々に味を変えてたのしめる。コップの中にも、植物園ができる。まさに「飲む植物園」というコンセプトがぴったりだなと、満足度の高いイベントだった。

で、帰り道に反芻しながら「おもしろい」と思ったのが、値付けだ。

1人1000円。だいたい30分ちょっと滞在したと思うけれど、これが……高いのか安いのかさっぱりわからないのだ。

だって花や苔、珍しい植物に囲まれた空間(3辺それぞれ違う雰囲気でまとめられていた)で、日本茶にハーブを合わせるなんて体験、いままでにないから。あまりにあたらしすぎて、「ピンとこない」。

人は、なにかにお金を払うとき無意識に過去の経験を参考にする。

たとえば初めてのパン屋で食パンを買うときには、普段買っている300円の食パンが基準になる。だから、400円だと「セレブだな……」と思うし、200円だと「安い!」と思う。

でも、400円の食パンがいつものパンよりずっとおいしかったら「全然あり、なんならあと100円高くても買う」と思うし、200円のパンがいつものパンよりまずかったら「もう二度と買わない」と思う。これはコスパ云々ではなく、消費者としてふつうの感覚だ。

つまりなにが言いたいかというと、花にまみれ苔を触りながら煎茶にハーブを入れてオリジナルのお茶をつくる、という体験には、脳内で参照にする過去がなかったのだ。そもそも、ハンドドリップで淹れた煎茶を飲んだことすらないからね。

「あたらしい」を生み出せたら、強い。「自分が基準になれる」ということだ。もしこれから似たようなイベント(ドリンク×○○みたいな)に参加することがあったら、無意識にこの「飲む植物園」の満足感と比較しちゃうだろう。

「はじめての体験を売る」というのは、こういうふうにプライシングの面でも先頭を走れるということなんだなと、あらためてそんなことを考えた週末でした。


ちなみに東京ディズニーランドは開業当時、「友達や家族と行く」「5〜7時間滞在する」スキーをライバルとして、苗場スキー場のリフト券を参考に「ビッグ10」の値段を決めたんですよ。両方とも、3600円です。

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田中裕子

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