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存在だけは知っていた。

夫の骨折が落ち着いてきたので、夜に仕事させてもらうことが増えた。結果忙しいビジネスマンパパみたいな生活となり、むすめにとってレアキャラに……。こりゃいかんと週末、思いつきでサンリオピューロランドにつれていった。

サンリオピューロランド。キティちゃんやマイメロディ、キキララ、最近人気のぐでたまなどのキャラクターが目白押しの日本初屋内テーマパーク。……程度の前情報で車を走らせたけれど、結論から言うと予想以上にたのしめた。

まず、ピューロランドはアトラクションこそ多くはないけれど、とにかく撮影スポットが多い。というか、全館撮影スポットだった。

背景はどこを切り取ってもカワイくて、「インスタ・TikTok時代を見こしていたのでは……?」と思うほどドレスアップした女子がセルフィーしまくり撮りあいまくり。来場の目的は写真撮影的な雰囲気の子も多く、ああ、撮ることは若いひとたちのメジャーなレジャーなのだなとあらためて実感。

それで、むすめはもちろんわたしも初ピューロランドということで「サンリオ沼」にハマった人たちをはじめて見たのだけど……ああ、こんな世界もあるのね、といくつかおどろきもあった。

たとえば、キティちゃんと写真を撮るブースがある。そこは手持ちのカメラでは撮ってくれないため1600円(!)で台紙に入れられた写真を購入しなければならないのだけど、それだけではない。「1本500円のバラの花(たぶん造花)をキティちゃんに渡せる」というオプションも用意されているのだ。

バラの花を渡してキティちゃんを喜ばせることができる、その一瞬に500円(一応お返しのプレゼントももらえるが)。夫は「ホストクラブみたい」とつぶやいていたけれど、わたしたちの前のお姉さん3人組はそのオプションを選択していた。キャッキャしながら「会えてうれしい!」とキティちゃんとハグ。あ、たのしそう……。

あとレストランでは、隣に座っていたお母さんが「男の子だけどなんとかサンリオ好きに育ててやったわ!」と笑っていた。ガチだ!

知っていたけど、知らなかった——ピューロランドからの帰路、運転しながらそんな感覚に浸っていた。熱烈なサンリオファン・キティちゃんファンがいることはなんとなく頭にあったけれど、はじめて目にして心で理解した感じ。やっぱり現場の空気を吸うっておもしろい。

そして、ふだん仕事で会うひとやSNSでフォローしているひとに、サンリオクラスタがまったくいないことにふと気づいた。

「いることは知っているけれど、いる実感がわかないひとたち」というのがいる。近くにいないから、ふだんは存在に思いを馳せることのできないひとたち。

今回サンリオ沼にハマっているひとたちは、まさにそうだった。「ああ、ピューロランドには、こんなにたのしそうなひとたちが毎日押しかけてるんだな」とはじめて明確に意識したから。いまこうしてnoteを書いている間にも、キティちゃんの部屋にウキウキしながら向かっているひとがいる。

ピューロランドに行ってそんな感想かい、という感じもするけれど、いかに自分がふだん意識していない世界があるか、そこでも世界はたのしく動いているかをかみしめた。世界にはいつも見ている正面だけじゃなく、横側も裏側もあるし、並行に走っている世界もあるのだ。

そういう世界の多様さを、むすめにも知ってほしいなあ。そんなことを思いながら、多摩センターからの道を走ったのだった。

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