誰かが誰かのつんく♂さんになる社会

ツイートもしたけれど、感動したのでnoteにも書く。

つんく♂さん……(嗚咽)。わたしも昨日の帰りのフライト後に「エライエライ」なんて言われたら、寝不足の疲れもあって機内で号泣していたと思う。

むすめは2時間泣きどおしだったわけじゃないけれど、始終「なにか気にくわない」と主張しまくっていた。

その「なにか」がわからず、抱っこでなだめすかし、高いテンションと笑顔でごまかし、最終的におやつで黙らせる1時間半ちょっとは、周りの人への申し訳なさと子を食べ物で釣る恐怖感とで精神がへとへとだった。

席は後方通路側を確保。できたら予約時点で隣が空いている席がよい。
ビデオをダウンロードしておき、シールブックなど魅力的なおもちゃを持ち込む。
いつもは食べないお菓子やジュースを用意。
空港で遊ばせて、なるべく体力を削る。

——ちまたにあふれるノウハウは事前にチェックして、すべて実行したつもりだ。それでも、ダメだった。

◆  ◆  ◆

出産育児は、予習がそのまま役に立つことと、「あれ、なんてことないな」と拍子抜けすることと、「聞いてたのより難易度高いぞ」と腕を組むことが織り混ざっているなあと思う。

たとえば産休中、出産育児にまつわるあらゆる文章やコミックエッセイ、ブログを熟読して傾向を予習、対策を講じていたおかげで、産後はふつうに元気だった。狭い家に四六時中一緒にいると息が詰まると、マンスリーマンションを借りて母を召還。母が帰るタイミングで夫の育休スタート、などなど。

「なんてことないな」で頭に浮かぶのは、夜泣き。もちろん泣きやまなくて困ったことは何回もあるけれど、夜は比較的すぐにまとめて寝てくれるようになった。『赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド』を熟読して予習していたのに、ほとんど出番がなかった(でもとてもいい本だった)。これはもう、運だ。運としか言えない。ありがとうと拝むしかない。

あと、卒乳も一瞬だった。執着なさすぎてびっくりした。初日にして「えっあなた、もうこれで育ったこと忘れてない?」と呆れるあっけらかんさ。『ママはテンパリスト』を読んで、方法論を頭に入れておいたのに。

「思ったより難易度高い」は、noteにも書いたことがあるけれど、検診のたびに引っかかるいろいろとのんびりな発達に対する心配で圧倒的に心理的リソースを持っていかれるところ。これはまったく想像していなかった。

そしてフライトでも発揮した現在進行中の主張の強さもリアルには考えられていなくて、ちょっと面食らっている(子2人孫2人甥姪たくさん見てきた母が「ああ、この子は大変だねえ」と同情してくれた)。

……とまあこんなふうに、予習の結果は「いろいろ」だった。

正確には、予習で得た知識は役に立ったし自分を助けてくれたのだけど、「1歳」がリミットだったように思う。だんだんと子どもに自我が芽生えきて、Aを押せばA’の成果が得られる、みたいなことが激減してきた。いよいよ人間になってきた。

そんないまひしひしと感じているのは。
親がいちばん必要としているのは頭でっかちな予習ではなく、
つんく♂さんのようなひとの存在。そして社会の在り方ということだ。

爆速で成長し「予習」が効かなくなってきたむすめとの暮らしは、お手上げなことも多い。泣きたくなることもある。そんなとき、ユーモアを交えてチアアップしてくれる味方がひとりいるだけでどれだけ救われるか……。

行きのフライトでは、着陸態勢に入った後わんこ蕎麦のように子におやつを渡す半泣きのわたしに見かねたのか、隣のビジネスマンが「うちの子はもっとひどかったですよー」と笑い、むすめに変顔をしたり話しかけたりしてくれた。荷物を取るときは、むすめを見ていてくれた。あの人は間違いなく、わたしのつんく♂さんだった。

ああ、社会で育てるって、税金の配分とか保育園問題とかの話だけじゃなくて、こういうことなのかもしれないなと思う。

そしてそれは一方的に享受するものではなく、返していくこともできる。だから子育てがひと段落しても、あのフライトの途方にくれた気持ちを忘れずにいなきゃ。「子育てを終えた女性がいちばん母親に厳しい」と言われないようにしなきゃ。

いつか困っているママを見かけたら、その人のつんく♂さんになりたい。いや、絶対つんく♂さんになろう。

うん、みんなでつんく♂さんになりませんか。

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田中裕子

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