【J1マッチレビュー】北海道コンサドーレ札幌vsFC町田ゼルビア【2024 第4節】

Attack Momentum by Sofascore

今回のお相手は公式戦では8年ぶりの札幌。2016年当時のメンバーで今も在籍しているのは町田が三鬼海、中島裕希で、札幌が阿波加俊太、深井一希、宮澤裕樹、菅大輝(荒野拓馬も所属)みたいです。漏れていたら警察さん夜露死苦ですが、まあ選手残ってるもんですね。札幌と言えば2017年になぜか味スタ西で行われたトレマで初見参のチャナティップにゴールを奪われたのを見た記憶があります。

さて。前節からのスタメンの入れ替えは町田が藤本一輝。やはりバスケス・バイロンは負傷とのこと。同時に宇野禅斗の負傷も発表されていた。札幌は退場処分明けの中村桐耶と田中宏武。スポーツ紙では浅野雄也のシャドー起用のほか、町田出身でもある青木亮太が右サイドに入るとあったがサブにもいない。負傷者の多い札幌にまたひとつ心配事が増えたのは残念。

前半

アタックモメンタムを見ての通り、立ち上がりは札幌に主導権を握られる展開だった。キックオフ後に町田がロングボールとロングスロー連発から決定機を作り出したのだが、藤本のボールコントロールが大きくなり阿波加がキャッチ。セットプレー攻撃をゴールキーパーにキャッチされるのはよろしくなく、後退しながらの守備ラインおよびファーストディフェンスの設定で後手に回ることになる。大外で田中宏武に交わされた藤本がエリア手前のファウルで止め、流れの悪い展開が始まった。

その後も被カウンター、自陣ファウル、そしてセットプレー守備に追われて試合をコントロールできない。町田で初スタメンとなる藤本の順応待ちにも見えた。まさに我慢の時間帯だったが、ミドルブロック、ローブロックを敷けば札幌のボール保持に崩されることはなく機を伺うことができていた。札幌のセットプレーからの波状攻撃を、菅の可能性の低いミドルシュートで終わらせたのは一つのターニングポイントだった。

10分、ゴールキーパー谷晃生が参加するビルドアップを試みる。これ自体はあっさりとロングボールで終わり札幌にセカンドボールを回収されてしまうが、札幌のファーストディフェンスの仕方を把握できたし、ネガトラから攻撃的プレッシングに移行できるようにもなり次へと繋がるアクションができた。

10分 セカンド回収&ネガトラ424設計

おもろい。ここでの攻防を皮切りにようやく町田のスタイルが出せる地上戦が始まる。札幌のボール保持は3-2-5ベース。町田のファーストディフェンスは4-2-4気味となり、ボールサイドの相手ウイングバックを監視しつつ、2トップが中央封鎖しながら逆サイドに誘導し、サイドの選手で奪うあるいは困難なボールを出させる意図があった。その際にセンターハーフの一人が札幌の下りるセンターハーフ対してマンマーク気味に上がるのが特長だった。鳥栖の札幌対策に近いと思われる。

町田のプレッシングはすぐに全てが上手くいった訳ではなかった。奪いきれないところから札幌に押し返されてオープンバトルの様相となることが多かったことは今後避けたい課題となるだろうし、札幌のボール保持のレベルが低くないことも物語っていた。ただ、噛み合わない布陣でのボール非保持を強いられるなか、札幌のボール前進を最終的にはマーク交換しながら跳ね返して主導権を握る。

ゲームチェンジャーは仙頭啓矢だ。ビルドアップ妨害では下りる駒井善成らセンターハーフに対して喰らい付き、奪ってからのショートカウンターを誘発。町田のボール保持においてはビルドアップ時は札幌のマンマーク習性を利用して下りて中盤にスペースを作りつつ、ボールホルダーがロングボールを蹴りやすいよう配置でサポート。マークに来ないときの移動を切り替える判断・戦術眼にも優れ、リンクマンや定位置攻撃でのサポートおよびチャンスメイクのタスクもこなす運動量。まさに仙頭というものを見せていたと思う。その仙頭をカバーする柴戸海の動きもフィットしてきた気がする。

仙頭の隠れた動きが影響しロングボール主体の前進が増え、定位置攻撃からチャンスを作り出す町田ではあったが決めきることができない。特にオ・セフンのフィニッシュ部分の課題改善には時間がかかりそうだ。終盤には再びオープンバトルの様相となり、スローインからのU字展開や、中村桐耶がビルドアップからボール前進にかけコンビネーションを利用して突破してくるなど、町田にとってダメージの大きそうなアタックも見られるようになりながら後半を迎えることとなる。

後半

中村のドリブルでの攻め上がりの脅威が増してくる中、町田にとって幸いだったのはそこからのアタックが安直な縦の攻撃だったことだろう。リトリートやチャレンジ&カバーがし易いスピードと前進だったため最後での部分での問題にはならなかった。

町田のオ・セフンターゲットでたまにあるのがスペースへ放り競らずに受けれるロングボールだ。相手のセカンドボール回収用の布陣の隙を突くことがたまにある。そして再びビルドアップユニットに戻して、相手の陣形を分断させてからもう一度ロングボール。今度はセカンドボールを回収し、相手ラインが残り一つとなる所でゴール前に人をかけて攻める。跳ね返されても即時奪回や被カウンターを防ぐ守備陣が待ち構えている。

その攻守両方の切り替え局面に表れ、攻撃・守備陣を繋ぐ動きを見せていたのも仙頭だった。52分にゴール前の侵入、被カウンターでリトリート、カウンターを防ぐとなると切り替え0秒からサイドアタックの起点、そしてパスゴーから2v2で平河悠をエリア侵入させる浮き球のワンツーを出す。縦横無尽にリンクする振る舞いは、藤尾翔太の先制ゴールを生み出した。

スコアを動かすほど札幌のボール保持に規制をかけた後は、しばらく町田のターンが続いた。そして66分にコーナーキックから追加点。ストーンをほぼ配置せずマンマークを振る舞う札幌のコーナーキック守備に対し、力業のフリックからドレシェヴィッチが追加点を決めた。

ここからは残念ながら反省タイムでした。J1最高のオープンバトラーである札幌とまともにやり合ったため70分以降は強度の低下が否めなかった。札幌の体力が落ちると睨んでてすみません。菅、駒井、中村、荒野の流動的な動きとプレスを外す動きが復活する。町田は交代策として76分に負傷のオ・セフンに代わりミッチェル・デュークを投入。前線のプレスの活性化および肉弾戦で札幌のビルドアップ頻度の削減を図るが、そこはようやく登場の阿波加。4-4-2は1-3-2-5に振り回された。

緊急事態の町田は細かなチャレカバユニットをブロックから分散させて多層の壁を作り最後の部分で守り切ろうとするも、平行と時間を操る小林祐希の登場により、最後は我が軍とのトレーニングマッチの活躍でプロ入りを決めた原康介にゴールを奪われた。失点の原因にはポジトラでの前線のボールロストが絡んでいた。もう少しボールを保持できないとこの先も強襲に耐えられない教訓となったのではないだろうか。

町田は失点の前にセンターハーフを代えて4-4-2維持で乗り切ろうとしていたが、方針を改めて昌子源、奥山政幸、安井拓也を投入し5-4-1/5-2-3で根性のスペース埋めを敢行。最後は仙頭に代えて下田北斗も投入し、札幌の反撃を1点に抑えて試合をクローズした。

所感

これがJ1だなと言う試合。町田がどこまでオープンバトルをしないで済むかに注目していたけど、まあまあしなくてはならなかった。藤本のチームへの適応がもう少し進んでいれば減少させることはできたかもしれない。けど早い段階で体験できたので今後の成長に良い影響をもたらすとは思う。

仙頭はマジで凶悪だった。武闘派が集う我が軍のなかでただ一人、理論を持って札幌を一時黙らせた姿にただただ驚き感動している。ただの意識系おしゃべりさんではなかった(知っとるわ!)

札幌の多彩なボール保持の場面にも関心した。色々な事情でビルドアップの質が上がらないのが切ない。あとベースである縦志向のアタックも改善の余地がありそう。良いチーム!これからも頑張ってほしい。

あと我が軍、オープン上等!のチームにもなりそう。えげつない。仙頭+柴戸のセンターハーフの組み合わせはJ1だと球際面で不安を覚えていたのだが、それをかき消す運動量と切り替えがこのコンビには備わっていた。いや相手のボールコントロールレベルが代表級だったときはまだ不安はあるので、オープン上等はまだ怖いです。

試合結果

明治安田J1リーグ 第4節
2024年3月16日(土)14:03KO 札幌ドーム
北海道コンサドーレ札幌 1-2 FC町田ゼルビア

屋内 / 22.1℃ / 27%
主審 荒木 友輔 副審 梅田 智起、塚田 智宏
第4の審判員 野堀 桂佑
VAR 清水 勇人 AVAR 田中 玲匡

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