愛あるエンディングの為に

明日のエピローグを書くような感覚で、文章を連ねたいと思う。

誰かと戦うには、戦う価値を知らなければならないと学んだ四年間だった。

盲目に突き進む日々の中で私が生み出したのは敵だけだった。友達が敵に変わり、人間不信になった時には、全ての言葉が明朝体に聞こえていた。

背伸びをしていることに気がついたのは大学2年生のときのことだった。サッカーボールがゴールに入ってもかっこ悪いと思ってシュートを繰り返し、木に引っかかって終わる作品を何枚描いただろう。

こんな作品はゴミだ。何も触ってない真っ白なキャンバスの方がよっぽど価値があると、実力の無さを嘆いた20歳を今でも忘れない。かつての私は未来の心配ごとばかり考えて、心は上の空だった。

それが結果的に心を盲目にさせ、鬱から人間不信へと発展したのだ。自分で自分の首を絞めて、安心した気でいたのだ。


今思う。ただ漠然と脈を打っているだけで時の流れに身を任せて生きていくことができる。私は自分の時間で生きればいいのだと。

今夜は星が綺麗だ、風も心地が良いと、今を感じて生きていけたら最高だと思う。


鬱が治ってから、秋のような暮らしを頭に浮かべることが多くなった。セピア調に色褪せた景色を何度も夢に見てしまうのは、まだ心が生きている証拠なのだろう。

過去でも未来でもなく、今一瞬一瞬を全力で生きることに心を委ねたい。そういう画家になりたい。

そろそろ戻ろう現実に。パラレルワールドでまた。


(2018年 東京藝術大学卒業制作展 絵画科油画専攻カタログ「委員長寄稿文」より引用)

愛あるエンディングの為に

F30号 油彩
2016 棚村彩加

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棚村彩加

いなくなったりなんかしませんよ、本当ですよ

コメント1件

スランプ、ありますよね。それはそれは底の見えない沼のような場所
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