旅が楽しいのはきっと、帰る家があるからだ

「遠くへ旅をしたね。よく帰ってきてくれたね・・・」

1945年、デビッド・リーン監督の映画「逢びき」。
夫以外の男性に心を寄せ幾度かの逢瀬を重ね、けれど一線を超えることなく終わりを迎えて家路に着く。
そんな主人公へ、ラストシーンで夫が言ったセリフだ。

ほとんど映画を見ない、昔のことはあまりよく覚えていない私が、テレビの深夜放送だったこの映画をはっきりと覚えているのは、主人公の在り方に自分を見出したからだと思う。

「帰る家があるからこそ、旅が楽しい」。
他人のことは分からないけれど、自分はきっとそういう人間なんだと。

家事が苦手で独りの時間が必要な自分は、いわゆる結婚向きとは思えなかった。社会人2年目の実家暮らしは息苦しく、家庭に対する憧れもなかった。

結婚=幸せという、短絡的なものじゃない。それでも、家庭を持ち、帰る家がある心安な日々は、自分を幸せにする要素だ。

あの時の直感がきっと、今の日常に続いている。

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