Takashi Ueno

ライター→編集者

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最近の記事

東野圭吾の小説は、なぜこうも読みやすいのか

先日、近所に新しく紀伊国屋書店ができたと知り、フラっと徘徊しに行った。特に目的の本はなかったのだが、入り口の新書コーナーで「ある一冊」が目に留まった。 東野圭吾の『クスノキの番人』である。 東野圭吾はもとより大好きな作家なので、彼の新作ともなれば買わない理由がない。本を手に取るや否や、即レジに向かい購入した。 家に帰りさっそく読んでみると、言わずもがな安定の面白さ。 SF要素の混じった感動物語なのだが、改めて東野圭吾はミステリーだけでなく、いかなるジャンルにおいてもハ

    • 『パラサイト 半地下の家族』を観て、わしも考えた

      映画『パラサイト 半地下の家族』を観た。あまりの面白さに、2回も。 1回目は予想を遥かに上回る鬱エンディングにわりとダメージ受けたんだけど、2回目は特別誰かに感情移入するわけでもなく、始終フラットな視点でストーリーを俯瞰することができた。その結果、色々と新しい気づきがあったので、備忘録的な意味合いも含めて考察を書いていこうと思う。 ※ネタバレ含む まず簡単にあらすじを説明すると、 一家全員無職の「半地下の家族」が、地上の高台に住む富裕層の家庭にジワジワと寄生(パラサイ

      • 学校の部活動に必ずいるウゼェ母親どもの話

        ランニングの途中、母校の中学校のグラウンドを通りかかった。 およそ10年前、僕が野球部の仲間たちとともに汗を流した場所である。チームメイトは良いやつばかりだったが、野球そのものに良い思い出はない。 日曜日の午後。 ちょうど他校との練習試合を終えたところだろうか。 ふとグラウンドの中を覗いてみると、僕より一回り年下の少年たちがグラウンドの隅で体育座りをしていた。彼らの視線の先には、監督・コーチと思われる2人の大人が。そして背後には、観客席で我が息子を応援していたのであろ

        • ライターになって気づいたこと【其の一】

          ※全文書き終ってからタイトルを付けたのですが、ありきたりなブログタイトルになってしまって泣きそう… 2019年5月に、僕はライターとして小さな出版社に再就職しました。 まだ2ヶ月なので、職歴で言えばチンカスレベル。それでも、この短期間で沢山の新しい学びがあり、“書くこと”について考えさせられました。 それらの事柄を備忘録がてら書き記していこうと思います。 今回は2点。 ①“師”は身近に居た方がいい。 文字通り、「文章を指導してくれる人は常に自分の傍にいた方が良い」

        東野圭吾の小説は、なぜこうも読みやすいのか

          KingGnuという名の“沼”【後編】~常田大希という男について~

          グループのリーダーを務めるGt.常田大希は、Vo.井口理の歌声を「嫌われない声」と称している。 これは本当にその通りだと思う。 彼らの最新アルバム『Sympa』を僕は未だに毎日聴き続けているのだが、井口の声は一切嫌いになる要素がない。恐らく“ガナリ”だとか“鼻にかかった声”がヒットの阻害要因となり得る音楽業界で、井口の“全くクセのないクリアな声”はバンドにおいて最大の武器になっている。 それに対して、常田の声はあまり大衆向きとはいえない。 常田本人が「俺のダミ声じゃ売

          KingGnuという名の“沼”【後編】~常田大希という男について~

          KingGnuという名の“沼”【前編】

          「アフリカに生息する動物かなにか?」――― 4ヶ月前、友人に「“キングヌー”を知っているか」と尋ねられた際に、僕はこう聞き返した。 “ヌー”自体見たこともないが、その名から『何となくデカくて角の生えた牛』が連想できた。後々Wikipediaで調べた結果、分布も予想通りのアフリカだった。 しかし“KingGnu”は牛などではなく、2019年に入ってから急速にその名を轟かせている日本のロックバンドだという。 出会いの曲『白日』. 友人が「とにかく曲を聞いてくれ」とやたら

          KingGnuという名の“沼”【前編】

          Get wild and tough ~印度紀行【後編】~

          バラナシへ向かう寝台列車は既にホームに着いていた。 発車まであとわずかという時間なのにも関わらず、僕は改札すら潜っていなかった。 タクシードライバーのジャイミーと、周囲のインド人も引くような口論を道端で繰り広げていたからだ。 インドに着いてから一週間、うんざりするほどの長い時間をこの男と共に過ごしてきた。 最初は陽気なインド人だと思って気を許していた。しかし、日を重ねるごとに彼の本性は露わになってきた。彼は一体、僕にどういうストレスをかけてきたのか―――

          Get wild and tough ~印度紀行【後編】~

          ~印度紀行【中編】~

          ニューデリーのメインストリートを歩いていると、何処からともなくスパイスの香りが漂ってきた。 そういえば、インドに着いてからまだ何も食べていない。インドで最初に口にすべきものと言ったら勿論、カレーだ。 路肩にあふれる屋台の中から、カレー屋を見つけるのに時間はかからなかった。日本のインド料理屋で食べれば安くても500円はするであろうカレーを、なんと70円で食べることができた。 (※日本の美味しいナンなど存在するはずがなく、「チャパティ」というシケった小麦粉が出てくるだけ。お

          ~印度紀行【中編】~

          I believe Indian. 信じることで全てが始まる気がするの。~印度紀行【前編】~

          インドに行ったけど、騙されることなく帰ってきました―――― と、色んな人に嘘をついてきたことをこの場で謝罪したい。 『外国でカモられた人』というダサいレッテルを貼られたくなかったのだ。この気持ちをわかってほしい。 インターネットにありふれている、インド旅行を経験した人たちのブログはどれもこぞって、「こんな切り口でインド人が騙そうとしてきたけど、その手には乗らねーよ!笑」みたいなツッコミが多いんだけど、同じくインドを経験した僕から言わせてもらえば、「いや、もっと騙されるや

          I believe Indian. 信じることで全てが始まる気がするの。~印度紀行【前編】~

          悪意に満ちたナイフで汚れない弱者を傷付けないように。

          カラオケほど人の性格が滲み出る場所はない。 カラオケの楽しみ方は人それぞれだが、僕はカラオケにおいて、他人を思いやる気持ちを誰よりも持ち合わせていると自負している。 「カラオケなんて所詮自己満足の場なんだし、各々が好きなように歌えばいいんだよ」 たまにこんな発言をする人がいる。確かに間違いではないと思う。 ただ、この理論を提唱するのはいつも決まって“歌ウマ”だ。 歌が苦手な人は、自分の音痴のせいで場をシラケさせてしまうんじゃないかと内心怯えているし、流行りの曲を一切

          悪意に満ちたナイフで汚れない弱者を傷付けないように。

          日常に潜むエロ、あるいは男のロマンについて。

          俳優・新井浩文氏の性的暴行事件発覚から2週間が経った。 連日、彼に関するメディアの報道は後を絶たないが、つい最近の昼のワイドショーで、漫才コンビ「おぎやはぎ」の小木が放った言葉に、僕は不覚にも爆笑してしまい、そして共感した。 番組MCがゲストに「なぜ健全な派遣マッサージでそういう行為に及んだのか」という疑問を投げかけたのに対し、小木はこう述べたのだ。 「多分ね、出だしから『風俗店』が前面に出ている店ではもう興奮しないんですよ。あえて、こう・・・健全に見える店でハプニング

          日常に潜むエロ、あるいは男のロマンについて。

          ある日突然、我が家に『半ケツの日』という祝日が誕生した。

          「なんか面白い話して」 ・・・という雑な振りをくらった際に、わりとこすらせてきた話がある。 僕が小学生で、まだ自慰行為が何たるかも知らなかった頃の話だ。 当時からマンガ「ワンピース」は小学校で絶大な人気を誇っていて、『ワンピースの単行本を全巻持っていて最新話まで話を知っているヤツは強い』みたいな風潮がクラスにはあった。 僕は自分でコミックを購入していたわけではなかったが、8つ上の兄は既に大学生でそれなりの財力があったため、新刊が出るたびに即購入していた。 クラスの友

          ある日突然、我が家に『半ケツの日』という祝日が誕生した。

          いつだって小松菜奈の遊び相手にされたいだけの人生なのだ。

          僕の好きなYouTuberの一人に、『オサミンティヌス3世』というゲーム実況者兼歌い手がいる。 先日彼が出した動画がこちら↓ ●【世界初】フォートナイトのピアノで弾き語りしてみたwwww【そっけない/RADWIMPS】 この動画内で歌われている、RADWIMPSの「そっけない」という曲がすごく素敵だな~と思い、本家のMVを観てみた。 「そっけない」の公式MVがこちら↓ ●そっけない RADWIMPS MV 「“思わせぶりな女”に恋心を抱いた男(多分童貞)」の淡い心

          いつだって小松菜奈の遊び相手にされたいだけの人生なのだ。

          中3の頃の逸話を聞いてほしい。

          誰にも打ち明けていない話がある。 およそ10年前、中学3年生の頃の話だ。 当時僕の学校では、3年生だけで行われる『主張大会』なるものがあった。 各クラスから最も優れたスピーチをした者が一人ずつ選出され、クラス代表者は最終的に全校集会の場で“全校生徒”に向けて発表する。 スピーチを通じて、生徒に「考える機会」を与えることが目的だ。 言い換えれば、「中学生版TED talk」みたいなものである。 トークテーマは自由だが、基本的に中学生が馴染み深い「環境問題」「絶滅危

          中3の頃の逸話を聞いてほしい。

          はたちのニューヨークで、僕はポカホンタスと出会った。

          カフェが好きだ。 ただ小説読むだけなのに、わざわざ身だしなみを整え、髪をセットし、僕はカフェに行く。 それはきっと他の人たちも同じで、 「ドヤ顔でMacBook開きたい」 「分厚い参考書開いて頭良いと思われたい」 「ビジネス書読んでデキる人に思われたい」 そんな自己顕示欲を拗らせた中身スッカスカの人間が集結する場所、それがカフェだ。 (特にスターバックスやタリーズなどの“中堅チェーン店”に多い。実際は作業時間よりもスマホでSNSを閲覧していることがほとんどなので

          はたちのニューヨークで、僕はポカホンタスと出会った。

          “クラスのマドンナ”ほど、実は裏の顔を持っているのかもしれない。

          大学に1つ下の後輩がいた。 僕と彼女は、所属ゼミが一緒になったことがきっかけで知り合った。 年齢の割に大人っぽく、顔もスタイルも文句なしのパーフェクト。芸能人で言うならば、今田美桜に似ているかもしれない。以下、彼女を「今田」と呼ぶ。 今田は学内で所謂“高嶺の花”的な存在だったが、だからといって近寄りがたい雰囲気などは一切なかった。不思議なことに彼氏の噂は全く聞くことはなく、周りの男子から飲みの誘いがあれば快くOKする。めちゃくちゃ可愛い上に、フットワークも軽いところがよ

          “クラスのマドンナ”ほど、実は裏の顔を持っているのかもしれない。