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「売れる企画」量産 大作戦!

訳あっていろいろな人と話す機会が増えました。
そこで僕がよく言っているのは、「ちゃんと作れば、ちゃんと売れますよ」という話です。
これを言うと、自信たっぷりだな、と叩かれそうなんですが、1つだけ方法論みたいなものを考えているので、今回はそれを紹介したいと思います。

1「これ、好きなんだよな~」

企画を考えるとき。
みなさんは、どのようにして考えるでしょうか。

1 自分が好きなものをテーマにする(たとえば「数学」)
2 そのテーマでおもしろいと思う分野を選ぶ(たとえば「確率」)
3 1冊の本になるように企画に仕上げていく(たとえば「確率で世の中がわかる」)

たぶん、これがいちばんの正攻法です。
けれど、こうやると大体は失敗します(笑)
なぜかというと、「好きなテーマは、人が苦手とする部分が見えにくいから」です。

2「オレ、こんな詳しいんだぜ?」

本を作るとき、企画を考えたら著者を選びます(もちろん逆もあります)。
著者に会いに行き、「『確率』をテーマに本を書いてください!」などとお願いをします。
そこで、ああでもない、こうでもないと企画を揉むのですが、著者ほどでないにしても、「数学が好きで詳しい編集者」であれば、初心者が「ん?」と思ってしまうポイントを見逃してしまいます
その後、原稿があがってきて編集していても、

「オレはこんなことも知ってるぞ」
「ここをもっと深く掘り下げるべきだな」

と、妙に知識をひけらかしたくなる自分が出てきます。
あるいは、他の本と比べてマウンティングしようとしてしまいます。

もし、本を作る過程で、肝心の内容より「コラム作り」に必死になっているとしたら、それは壮大に間違った努力をしています。

いつの間にか、一般の読者にはとっつきにくいものになってしまうのです。

もちろん、そういった本も「専門書」という枠で需要があります。
1800円とか2500円とかするようなものに仕上げて長く確実に売っていく路線があります。
けれど、ここで紹介したいのは、何万部以上ものヒットの狙い方です。

3「べ、別にそんなキョーミねーし!」

僕が考えたのが、「自分が興味のないもの」をテーマにするという方法です。
ただし、まったく興味がないと、それはそれでモチベーションが湧きませんし、ピントもズレてしまいます(目をつぶって思い切りバットを振るようなもので、それでもまぐれのホームランはありますけどね…)。
また、なかには、どんな分野でも子どものような好奇心をもって臨めるスーパースポンジ編集者がいますが、そんなの凡人には不可能です。

本当は興味を持ちたい! だけど、なぜか体が拒否してしまうんだ…

そんなレベルが理想です。
僕の場合、「ファッション」であり、「人工知能」であり、「美容」であり…、と「無趣味」が高じて無限にテーマが思い浮かびます。

興味のないテーマを扱うと、「自分がなぜ敬遠していたのか」「どこが嫌いな部分なのか」「どこが好きになれそうか」という点が、面白いほどよく見えてきます。
自分の感情を客観的に言語化できるのです。

「おしゃれしてる人ってナルシストっぽくて気持ち悪いよね」

そんなこと、ファッション大好き編集者は絶対に口に出しません。
けれど、僕はこの手の話をバンバン著者にぶつけました(『最強の服選び』大山旬・著より)。
もちろん、「それでもおしゃれに気遣ったほうが人生トクだよね」と心の中で思いながらです(笑)

ヒットを「量産」する方法

もし、ヒット企画をたくさん作る方法があるとしたら、たぶんこうです。

・少し興味があって「5%」くらい知っているテーマを選ぶ
・その「微妙なニュアンス」を汲み取ってくれる著者を探す
・作る過程で知ったかぶりをせず、「疑問」はすべてぶつけて解消する

こうすると、自ずと「初心者にうってつけの本」ができあがります。
何を隠そう、自分自身が初心者だからです。
特に、「知ったかぶらない」という点が大事だと思っていて、これが冒頭に書いた「ちゃんと作る」ということです。

「ステンカラーコートってなんですか?」
「シンギュラリティは来るんですか?」
「乳液と化粧水って何が違うんですか?」
「それ知ってなんの意味があるんですか?」

と、初歩的な質問がバンバン思い浮かびます(あんまりすると怒られます…笑)。
そして、初心者にうってつけの本こそが、まさに売れる本です。

とはいえ、さらに深く広く刺さるようにしなくては、10万部や100万部の大ヒットにはならないので、その方法は別のハイパー編集者さんが書いたものに譲ります…
いわゆるヒットといわれるレベル(2~3万部)くらいは、この手法で誰でも簡単に作れると思っています。

「料理をはじめたいけど、なんか億劫…」
「毎週、掃除をしたいけど、気づいたらできてない…」
「また『カラマーゾフの兄弟』を挫折した…」

あれができない、これもできない…
そんな何にもできない「フツーの人」にこそ、「売れるもの」を量産できる才能が宿っているのかもしれません。
そして僕は編集者を続ける限り、大手を振って無趣味生活を貫こうと思っています…

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