ふしぎな博士論文があった。


「吉川幸次郎の中国古典文学研究」というタイトルの博士論文をみて、たぶんだれもが、これは中国文学専攻の方だな、と思うだろう。
わたしもそう思った。
しかし、学科をみて、なんでだ、となった。
「長崎大学大学院生産科学研究科」
だったからだ。著者は孟偉さんという。中国の方だろう。

生産科学ってふつうに理科系だよな。HPなどをみてみたが、やはりそうで、工学や生物(養殖)などにかかわる研究をやってる。なんでそこの学生が中国の古典文学で学位をとったのだろう。
こちらが学位を与えたときの大学の審査報告だ。

https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/gakusai/summary/h26/1410seisan_gaku/file/seisan_gaku314sinsa.pdf

これを読んでわかったことは、この学生が環境科学を専攻していたということ。そして、吉川幸次郎を環境とむすびつけるために、大学側も「人文社会環境学」という言葉をひねりだしていることだ。
苦肉の策、という感じがする。
すぐれた研究であればどこの学科でなにをやろうとかまわない、とは思うが、じゃあなんのための専門なのかとも。
シェークスピアを学びたくて工学部に行くみたいな。
魚屋に野菜を買いに行くみたいな。
いまたまたま吉川幸次郎の「日本文明に於ける受容と能動」という冊子を読んでいて、ネットでこの論文にいきあたった。
とはいえべつに非難しているわけではない。ふしぎに思っただけだ。折を見て、この孟偉さんの論文も読んでみたいとかんがえている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?