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企業目線で、お客様を切り刻まないために

こんにちは。TangityでデザインチームのマネージャーをしているTomiです。
今回は少しギョッとするタイトルですが、実際に起きているこの課題と、課題へのアクションについて、少しお話したいと思います。


企業のデジタル活用で起きていること

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進みデジタル技術を活用すると、One to Oneマーケティングが進み、自分に合ったオススメが提案され、便利になることも多いです。これ自体は否定するものではありません。
しかし、企業が行うデジタル技術には限界があり、お客様を切り刻んでしまっていることがあるのです。
どういうことか?

例えば、こんな感じです。

  • Amazonで日用品を買うAさん

  • Peatixでデザインイベントに参加するBさん

  • SHEINで子供と洋服を選ぶCさん

  • Disney Landで休日を楽しむDさん

  • Disney+でファミリー映画を楽しむEさん

  • GoogleMapのナビを見て運転するFさん

  • Snowpeakでキャンプを楽しむGさん

  • Netflixでアニメを楽しむHさん

  • Spotifyで音楽を楽しむIさん

  • … 他にもいろいろ。

このAさんからIさん、実際には、同じ一人の人なんです。
ですが、スマホのアプリやサービスごとに、IDを変えて、連携もせずに、それぞれ別の人のように扱われている。

皆さんのスマホの中でも、同じこと、起きていませんか??

なぜ切り刻まれるのか

こうなっている背景には2つの理由があると考えています。
一つは企業目線での限界、もう一つはお客様目線での不安、です。

企業目線での限界

一つ目の企業目線での限界、は、前述したアプリ毎のユーザーIDの違いなどがその典型例です。
最近はID統合が進み、企業内では統一されていることが多いですが、1人の人間に対して企業ごとでしか分析ができていないケースがほとんどです。
そのため、キャンプ好きなこの人に、Amazonからアウトドアガジェットをリコメンドする、Spotifyからアウトドアにピッタリな音楽を提案する、といったことは、できていないのです。

お客様目線での不安

次に、お客様目線での不安、です。
iPhoneのこちらのCMを見たことはありますでしょうか?

私自身も、生活者としては、それぞれの企業には必要最小限しかデータを渡したくない。
アプリは常に、”App にトラッキングしないように要求”を選ぶ。Cookieも必須以外は全部OFF。ちょっと手間だけど、その方が安心。

なぜって??
だって、信用、していないんです。
どうせ商品の押し売りにしか使わないんでしょ、って思っている。
そんな不安な状態では、お客様は最低限の情報しか提供してくれなくなります。

企業の「Life Time Value(顧客生涯価値)向上」の限界

もちろん、企業は企業目線で「ロイヤリティを高め、顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を上げよう」と一所懸命取り組んでいます。
デジタルマーケティングの仕組みを使って、Aさんが閲覧した内容をトラッキングし、閲覧した内容からそれぞれの好みに合うようなレコメンドを出そうと必死に考えています。

でも、その裏のロジックって、誰か似たような動きをした人の行動を、違う人に当てはめているだけだったりする。
しかも、そのサービスの一断面のログデータだけで人を判断して…。

つまり、企業で言われるLTVは、「その企業でいくら買ってくれるか」であって、「お客様一人一人の生涯をより良いものに」という純粋なお客様目線の生涯価値とは離れて捉えられることが多いのが実態です。
そしてそのデータ分析を突き詰めても、一部のお客様のごく一部の断面の記録でしか見れていないのです。
そんな既存のLTV向上のアプローチだけでは、限界が来るのではないでしょうか?

私たちのチームができること

こんな切り刻まれた企業目線のデータで、しかも結果を記録したデータを分析するだけで、本当にお客様のことを理解するのは至難の業です。
お客様一人一人の生涯を本当により良いものにしようとすると、そのお客様のことを多面的に深く理解することが欠かせません。
ここに、デザインアプローチの共感のプロセスがその能力を発揮します。

お客様の深い理解

「未顧客理解」という本に
 ”なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?”
というサブタイトルがありますが、本当にその通りだと思います。
データ分析をいくら極めても、データで取れるお客様の断面しか、見ていない。
しかもそのデータは、すでに接点があるお客様の行動の結果が記録されているものであって、その他のユーザや、「なぜその行動をしたのか?」という理由は、データには書かれていない。

そんな時には、インタビューや観察などのデザインリサーチを通じて、お客様の価値観や潜在課題・ニーズを深く理解することが大事です。
ターゲットとなるお客様が、どんな価値観で、どんな利用文脈で関心を持って、何で心が動くのか。それを知るには、データベースに記録された結果ではなく、生身のお客様に真摯に向き合い、深く理解する必要があります。

業界や企業を超えた共創

また企業ごとの取り組みにも限界が出てきています。
先ほど例のように、企業ごとのデータはその企業との接点でしかお客様を見ていない。
また多くのお客様は企業ごとの機能的な価値には満たされ始めており、より統合的に情緒的な価値を高める必要があると考えています。

ここに私たちのチームは、お客様のより良き未来を生活者視点で構想する、というアプローチを取ります。
業界・業種の壁なんて、お客様には正直どうでもいい話。
なので、徹底的に生活者目線でありたい世界を考え、その実現に必要な企業や団体を巻き込んで、共創型で未来を作っていく。
当社には公共・金融・法人の様々なお客様企業・団体がいらっしゃり、その皆様とともに共創することで、お客様企業・団体にとってもよりよい機会を作ってゆける。そう信じています。

これが、タイトルで「切り刻まれている」と表現した課題と、その課題へのアクション、です。

最初の一歩も大事

とはいえ、こんな大袈裟な取り組みは難しいよ、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方は、ぜひ、「生活者としての感覚を活かす」というアクションを取っていただけるとうれしいです。
具体的に言うと、企業で働いている人は、仕事をしているときは企業目線で考えて、生活者としての感覚を封じてしまうことがあります。
こういうターゲットにこういうものをレコメンドしたら、きっとコンバージョンが上がるよ、など、ロジックで考えている。

ですが、お客様は生活者です。考えるあなたも生活者です。
まずはその生活者としての感覚を仕事にも活かしていただき、自分だったら、家族だったら、友人だったら、と問いかけたり、これめんどくさいよ、もっとこうだったらいいのに、という感覚を大事にしていただきたいのです。

不満は次の改善の種。生活者としての感覚を活かす人が増えたら、きっと、世の中のサービスが、少しずつ良くなっていくと思います。


以上、Tomiでした。

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