花澤香菜「Blue Avenue」

花澤香菜のニューアルバム「Blue Avenue」、めちゃくちゃ良かった。

「claire」は出てからはそこそこ聴いたけどそのうち聴かなくなった。「25」はちょっとしか聴いてないし殆ど印象に残ってない。1曲1曲はそれなりに良いんだけど、アレンジと彼女の声質からしてなんかスーッと抜けていってしまう感じがしてた。なんか軽いというか。

そんなわけで今作もそこまで期待せずに聴いたんだけど、前2作からがらりと変化してジャズ・ソウル・AOR・フュージョン・レゲエ(ダブ)といったブラックミュージックのエッセンス満載の作品に。これはCoco d'Or(SPEEDのhiroによるソロプロジェクト)、土岐麻子のSTANDARDシリーズ、原田知世の近作「恋愛小説」のようなジャズ風J-POPの意匠を汲みつつ、もう少し枠を広げてポップス要素を強めている、という位置付けの作品だなと感じた。

まず1曲目の「I ♥ NEW DAY!」のイントロのドラムの音がめちゃくちゃ良い。スカッとしてる。と思ったらニューヨークで名うてのミュージシャンにレコーディングしてもらってるのね…いやはや。しかしこのイントロが素晴らしくて曲にグッと引き込まれる。大人でおしゃれな感じがしつつもサウンドにフックがあるのできっちり耳に残る。自分の好みがこういう方向に傾いているとことの影響は間違いなくあるんだけど、それにしてもとてもよくできてるアルバムだ。

個人的に大好きなのはクラムボンのミトさんが作曲したM5「Trace」と本人作詞で北川勝利さんによるM10「プール」。「Trace」は一昔前のボッサラウンジみたいなリズムパターンが最後だけ変化して唐突に終わるところがとても好き。「プール」はレゲエって紹介されてるけど、聴いたとき「これフィッシュマンズだ!」と思わずにはいられなかった。レゲエ・ダブ的な浮遊感と花澤さんの声がとてもマッチしていて曲世界の奥底に沈んでいきそう。

既発シングル曲を混ぜてもあまり方向性にブレがでてない感じになっているのがとても良い。これまでの彼女の作品だけでなく多くのアイドル声優のアルバムでよく見られる「声優である本人の多面性を出そうとして色々な事をやって散漫になる」という現象がなく、極めて統一感のあるアルバムに仕上がっている。4月以降に聴いたアルバムの中では抜群に気に入っている。上の視聴動画は24分(因みにアルバムは64分だ)あるので、是非試聴してみることをオススメしたい。

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