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〈いのち〉の大切さを知る体験講座

咄嗟の出来事(例:緊急事態への偶発的な直面)に対しての「対処・対応する能力」と,身の回りに生起する数々の問題を発見・解決する「問題解決能力」とは似て非なるものです。こどもたちに適切であると思われる言動等を求める前に,まずは私たち大人が誤った知識の習得や指導及び教育を行わないことが重要です。そのためには,大人(特に,「先生」,「講師」及び「インストラクター」などを名乗る者)の日常的な〈学び(研修と修養)〉が欠かせません。


1 救急救命士のお仕事を体験

8月25日(日),午前中に息子が通う小学校の環境整備(学校敷地内の草抜き。学校の先生方と保護者が協働作業を行う毎年恒例の行事。)に参加し,午後からは,広島国際大学でこどもを対象とした体験講座を受講しました。

小学校の環境整備は結構な重労働だったのですが(笑),今年も楽しく,みなさんとの会話を楽しみながら作業をさせていただきました。こどもたちが安心安全に学校生活を送られるようにと願いつつ。お陰様で(笑),現在,上半身の筋肉痛にやられております(笑)。

さて,夏休み最後のイベントとして受講した「子ども向け体験講座」。今回の講座内容は【救急救命士のお仕事体験】でした。

「とにかく体験!!」という趣旨で,2時間の講座の内,1時間50分はずっと動いている(体験している)といった,とても貴重な時間を過ごさせていただきました。




全体での学習の際,「救急救命士の仕事って何をするのか知ってる?」という問い掛けに対し,手を挙げしっかりと答えていた息子。

「苦しんでいたり怪我をしていたりする人を病院に着くまでに,命を助ける仕事だと思います。」

どこで知ったことなのか,言い回しは少々こなれてはいませんが(笑),バッチリな回答でした!!

「子ども向け体験講座」は基本的に小学生以上が対象。想定どおりに娘(4才)が「私もやりたいのに…。」と拗ねてしまったのですが,「じゃあ一緒にやろう!!」とある講師の方がマンツーマンで教えてくださったのです。本当に助かりました。誠にありがとうございました。




心肺蘇生法や異物除去,挿管(「病気などで呼吸機能が低下または停止したとき、気管にチューブを挿入して肺に酸素を送る医療行為。平成16年(2004)7月より講習を受けた救急救命士も実施できるようになった。」(コトバンク:気管挿管(読み)キカンソウカン,デジタル大辞泉の解説,出典 小学館))といった医療行為も体験。学科内にある救急車にも乗り,サイレンが鳴っている状態でどのように心音が聞こえるのかを体験してみたり,患者役と救命士役を行いながらストレッチャーの操作をしてみたり。




そんな一生懸命なこどもたちを見ながら,私が救急車で2度搬送された時のことを思い出していました。

1回目は,肋間神経痛の激痛により車中で身動きが取れなくなった時。
2回目は,息子出産時に個人病院から大学病院へ緊急搬送された時。

いのちを救おうとする人たちの懸命の処置のお蔭をもって,私も息子も,そして娘も,今,ここに存在しているのだと感謝の気持ちが溢れました。


2 子どもと一緒に親も学ぶ

こどもたちに加わり,私も疑問に思っていることを講師の方に訊かせていただき,〈いのち〉について親子で本当にたくさんのことを学ばせていただきました。

「もし母ちゃんが倒れたら,〇〇(←息子の名前)と〇〇(←娘の名前)が助けを呼んだり,救急車が来るまで今日学んだことを行ってくれたりせんといけんのんよ。」
とこどもたちに言うと,とても真剣な顔をして頷いていました。

何か咄嗟のことに直面した時,大人でもどうして良いのかわからないことは多々あると思います。

しかし,幼い時から何かしらの体験(経験)をしておくことで,「「あっ!!  そう言えば,これやったことがある!!」と思い出すことが大切だ。」と講師の方がおっしゃっておられました。

咄嗟の出来事(例:緊急事態への偶発的な直面)に対しての「対処・対応する能力」と,身の回りに生起する数々の問題を発見・解決する「問題解決能力」とは似て非なるものです。

日常生活の中で,さまざまな体験や経験をしながらひとりひとりが学び,それを〈生きて働く知識〉にできてこそ,咄嗟の〈対処・対応〉ができるようになると私は考えています。そのためには,「対処・対応する能力」も「問題解決能力」も,その他の「能力」も必要なのです。

〈学び〉が寡少で,どうして良いのか分からない人に,「目の前に人が倒れているから助けなさい!!」と言って何ができますか?  それも,こどもだったら?

救急救命講習を受けた人でも,慣れていないとどのように対応して良いのかオロオロするものです。知識を持っていても,それを〈実の場〉(実際の場面のこと)で活用できるようにするには,持っている知識を「実の場」でアウトプットして,それを内省(reflection)・相対化(relativization)し〈生きて働く知識〉とする(≒〈相対化〉する)必要があるのです。

例えば,保育施設や学校では避難訓練や防犯訓練がありますよね。この訓練を真剣に取り組んでいるこどもが多いのは,保育所や幼稚園だと言われています。

なぜならば,幼児期は「訓練」だと知らずに訓練を重ねているから,しっかりとその場で〈対処・対応〉できるのです。

このような訓練に何度も何度も真剣に取り組むことでインプットされた知識を,遊びなどを通してアウトプットさせ,いざという時のために〈生きて働く知識〉にするのです。

〈いのちを守る〉という大切さを教えていくのは大人です。その大人が誤った知識で,こどもや周りの大人たちに平然とした態度で教えることは,関与する全ての人たちに,後に大きな〈不幸〉をもたらします。

こどもたちに適切であると思われる言動等を求める前に,まずは私たち大人が誤った知識の習得や指導及び教育を行わないことが重要です。

今回,「子ども向け講座」を受講し,改めて〈いのち〉の尊さを実感するとともに,〈大人〉としての役割と日常に根差す〈学問〉の重要性を〈学び〉ました。今回の受講をただ「楽しかった」で終わらせるのではなく,日常生活にどのように生かしていけるのかを親子でしっかりと考え言語化し,アウトプット・内省(reflection)・相対化(relativization)していこうと思います。

最後に,集合写真の撮影を快諾してくださった救急救命学専攻のみなさま。



誠にありがとうございました!!

〈いのち〉を救う立派な救急救命士を目指して,これからも頑張ってくださいね。



画像・動画の撮影及び顔出しについては,講座責任者及びご本人のご同意がございます。皆様のご協力に厚く感謝申し上げます。


  2019(令和元)年9月2日


                             住本小夜子


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