Waltz for Debby

 子どもが2歳になる少し前、
仕事にも復帰していて、仕事の日は保育園に預けて
仕事がない日は、朝からお弁当を作って児童館に行く
そんな毎日を送っていた。

 でも、なんだかいろんなものがたまっていっていて
なぜか、すごくイライラしていた。
自分の人生を自分で過ごしている感じがなく
何かに追われながら自分の人生を送ってる感じがした。
人生の多くの選択を、自分で決めることにこだわって生きてきたはずなのに
どうしてこんなに使役されてる感じがするのか。
言葉でもうまく説明できず
誰かに話すこともできなかった。

 そのころ、毎日見ていたEテレの0655という番組で
ピアノのきれいな曲が流れた。
なんの曲やろう?きれいな曲やな。
なんか聞いたことある気もするけど
澄んだ音がするきれいな音やな

そう思った時に、涙が出てきた。
理由もわからないし、今でも説明はできない。

すぐにNHKに問い合わせのメールを送った。
すぐに返事がきた。
NHKすごい。

ビルエヴァンスの「Waltz for Debby」という曲だった。
すぐにその曲を聞きたかっけど、検索しても地元のツタヤにはなく
ネットで買った。
すぐに買わないと、自分が死んでしまう気がした。
届くまでは、YouTubeで繰り返し聞いた。
自分が気になった曲を自分で買って聞くことができる
そんなことが、自分を踏みとどまらせてくれた。
生きる、というのはそういうことなのかもしれない。

今も、慌ただしく毎日を送っている。
自分の時間はあるようでないような。
それでも、何かに使役される感じはなくなった。
ようやく人生の手綱を握れた感じ。
まだうまく操作はできない。

この曲はずっと聞いている。
特に雨の日が似合うように思う。

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