自信

 最初の結婚がダメになったあと、一人暮らしをした。
そのときに、近くのナフコで家具をいろいろ買った。
ずっと憧れていて欲しかったのが
本棚の前に蓋のようなものがついていて、
そこに本が飾れるタイプのやつ。

 ナフコで、お手頃なやつを見つけたのだけど
自分で組み立てるタイプのやつだった。
売り場をウロウロして、何度も考えた。
こんなの自分に作れないんじゃないか?と。
ウロウロしてたら、スーツを着た中年男性の店員さんが声をかけてきた。
配送もできますからねーと。
そのとき、その人に
「これ、いいなと思ってるんですけど1人で組み立てられるのかなーと思って…」
と言うと
「何言ってんの!おっちゃんでも1人でできたんやから!
おっちゃんよりもっと若いんやから大丈夫!」
と言われた。
若さは大丈夫な理由になるか?
と思ったけど、おっちゃんの勢いがよくて笑ってしまった。
てっきり、作ってくれるサービスもありますよー
とか言われると思ってたので
(そういう有料のサービスもあった)
半分ガッカリして、半分うれしかった。

 その日のうちに届けてくれて
お昼からまるまる使って組み立てた。
暑い時期だったので、クーラーガンガンにきかせて
間違えないように説明書を何度も見た。
休憩もいれながらやろうと思ってたけど
おもしろくて休憩せずに仕上げられた。
3時間ぐらいかかったけど、どこも間違わなかった。
そのとき、すごい達成感があった。

 前の夫に私は「こういうのができない人」
ということを何度も言われていた。
特にやったこともなかったので、確かにできなかったし
一緒に本棚を作ったこともあったけど
向こうの意図するように私が動かないので
何度も険悪なムードになった。
でも、できないのはやったことがないからだった。
私はいつの間にか、それを自分の能力のせいだと思っていた。

 一人暮らしは3年ほど続いたので
他にも組み立てた家具はあった。
今の夫との結婚をしてからは
カラーボックスを何度も組み立てた。
今の夫は、すごいきれいに組み立ててる!
と何度も褒めてくれた。
娘のおままごと用のキッチンも組み立てたし
どこもこわれることなく、今も使われている。

 今、私は組み立て家具にビビることはないし
そのほかのことだって、
時間をかけて、注意してやれば
なんでも自分でできると思ってる。
大げさだけど、あれは小さな自信のタネだった。
でも、もしあのときおっちゃんが
「大丈夫!」と言ってくれなかったら…と考える。
未来は変わっていたかもしれない。

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