ケーブルカー

私の実家の近くにはケーブルカーがあった。確か私が保育園に通っていた頃に廃線になり、今はバス道になっている。
ケーブルカーが廃線になる少し前、もう最後だからと家族でケーブルカーに乗りに行くことになった。ちょうど夏休みだったので、私と姉は浴衣を着せられた(子どもがよく着ているテロテロのやつ)。私の実家はすごく田舎なので、基本的に夜にでかけるということはありえない、というより周りには民家しかないので、出かける先がなかったようなところだった。
なので、夜ご飯を食べたあと浴衣を着せられて出かけるというのは、当時の私たちにとってめちゃめちゃスペシャルなことだった。浴衣を着て、玄関の外で父と母の用意が終わるのを待ちながら、姉とアルプス一万尺の手遊びをしてた。2人ともテンションが上がりすぎて、アルプス一万尺をしながら姉がドンと私を押して、私はお尻からごろんとこけたけど、それすらもおかしくてケラケラ笑っていた。
そこから駅まで行って、ケーブルカーに乗ったはずやのに、そのことはほとんど覚えてない。周りがすごく暗かったので、ケーブルカーの中だけがやけに明るくて、そこしか生きていないみたいだったことだけ覚えてる。
ケーブルカーの線路は、今はバス通りになって、駅にはケーブルカーの車輪が今でも飾ってあって、それを見るたびにワクワクした自分たちと明るかった車内を思い出す。

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