月に向かって走った日

昨日は、短歌の友人の結婚二次会だった。

何ヶ月も前から、子どもが泊まれるホテルを予約して、早めにインフルエンザの予防接種も済ませて、準備万端のつもりが、前日に娘が発熱。
これはもうあかん…と思ったけど、次の日の昼ぐらいに奇跡的に熱が下がった。迷った末、電車でなくて車をかりて行こう、ホテルの部屋で娘を寝かせて、夫と交代で二次会に行こうという話になった。
そこまでして行きたかったのは、二人を祝いたいというより(それもあるけど)、夜の街に出たい気持ちのほうが強かったから。

先に二次会に行った夫が部屋に戻ってきて、「鍵持っていって。好きなだけいってきて。」と言ってくれた。

二次会は30分しかおれず、その後の三次会も楽しかったけど、なんとなくうまく予定を合わせられなかったことが、心の片隅にひっかかっていた。

夜23時ごろホテルに帰ると、娘の熱が上がっていた。悪いことしたな、と反射的に思った。別に家にいたって、熱は上がったかもしれないけど、外に連れ出したことに心苦しかった。

翌日の予定はとりやめにして、朝6時にホテルを出て帰ることにした。車を運転しながら、チラチラと娘の様子をルームミラー越しに見ていた。疲れてしんどそうやけど、うまく眠れないようだった。

「おつきさま」というので、外を見てみると大きな丸い月があった。東西に走っていたので、ちょうど月に向かって走ってるようなかたちだった。夫が「今日の月は藤原◯◯(聞いたけど忘れた)が見た月と同じなんやって」と言った。え?どういうこと?しか頭に浮かばなかった。

しばらく車を走らせてると、やっと娘が寝た。ホッとしてると後ろから日が昇ってきた。前には相変わらず月がある。眼前には、もう少しで山に隠れてしまいそうな月があり、後ろからは日が昇って、世界にだんだんオレンジ漏れ出ていっている。

月が沈んで太陽が昇るのってあんまり見ない。そして、後になってこの日を思い出す時、一番覚えてるのはこの景色かもしれないと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?