人と人、心と心、想いと想いを結ぶ人 水引デザイナー“長浦ちえ”さん

「水引」という名前は聞いたことなくても、祝儀袋や不祝儀、熨斗などで皆さん一度は見たことがあるかと思います。日常にはあまり馴染みがなくとも、何か特別なことがあれば、登場する水引。今回は水引を用い、表現をする水引デザイナー“長浦ちえ”さんのお話を伺いにいきました!

長浦さんプロフィール
出身地:
福岡市
活動地域:福岡拠点
経歴:武蔵野美術大学油絵学科卒業。2013年より、自身のブランド【TIER<タイヤー>】を立ち上げる。現在、プロダクトデザインの他に、企業の広告やイメージビジュアルのアートワーク・ディレクションなどジャンルの垣根を越えて活動。著書に『手軽につくれる水引アレンジBOOK』『手軽につくれる水引アレンジBOOK2』(エクスナレッジ刊)『はじめての水引アレンジ』(世界文化社刊)がある。
座右の銘:型があるから型破り。型が無ければ、それは型無し。

「目に見えない想いを形にする」


Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?

長浦ちえ(以下、長浦) 私が水引に携わって現在で15年程経ちます。自身のブランドとして「TIER(タイヤー)」を立ち上げています。「TIE」(英語で結ぶ)に(人)を表す「ER」が組み合わさった言葉です。「結びつける人」として人と人や心と心を繋いでいく人になれればと思い活動しています。肩書き自体も私のようなスタイルの仕事は、ほとんど類に無かったので、水引デザイナーと言っていますが将来的には「TIER」を肩書きにできたらいいですね。もともと水引を使用する場面は自分のためよりも、相手に贈ることの方が多いものです。例え、目に見えない相手でも水引を見た人や手にとった人たちが笑顔になればと思い制作しています。大きなことを言えば、相手を思いやる気持ちが伝播して、愛や平和が広がることを祈っています。
書籍を出版させていただいたことをきっかけに、「かわいい」や「おもしろい」というお声もいただき、嬉しい限りです。今まで人生の節目の時しか目にしなかったような水引を、少しは身近に感じられるようにできたのではないかと思います。ただ、上辺の可愛さや、色合わせの妙だけになってしまうと本末転倒になってしまうので、今後はより水引の由来や本来の意味・深さを伝えていきたいと考えています。


Q.それを具現化するために、どんな目標を持っていますか?

長浦 お話いただくお仕事は多岐に渡ります。広告としてのビジュアル制作や、商品としてのプロダクト製作などありますが、どんなデザインをするにしても、ご依頼いただく方からの想いやビジョンをくみ取ることを大事にしています。また、それらの広告などを見る側のことも考えます。自分もその企業さまや商品のファンになった気持ちになって制作しますよ。水引という素材を用いてデザインをしながら、ふと、日本人が本来持っている感覚を想い出すお手伝いをしているのかな、と思う時がありました。
ある商品開発をしていた際の話なのですが、まずはターゲット層やその層が好みそうなイメージを掲げ、商品デザインに落とし込み完成、店頭に並びます。しかし、いざ蓋を開けてみたら当初の予想と異なる展開でした。年齢やファッション性に関係なく、日本人がおめでたいと潜在的に感じるものがあるのだな、と気づいたのです。DNAレベルとでも言うのでしょうか(笑)。その時に、この潜在的なものを呼び起こすような、本来持っている感覚を想い出すきっかけとなるようなものを作る事が自分の役割ではないかと思い、これからも続けたい目標でもあります。



Q.その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような活動をしていますか?

長浦 基本活動というのを考え方に置き換えると、「水引を古典からロックまで」というコンセプトで考えています。つまりご祝儀袋などでも伝統的な要素が強いものから、デザイン性やアート性の高いものまで振り幅広く、その時々の背景や、時代が許容する瀬戸際を見極めながら例えば古典20%、ロック80%など割合を調整します。

「長浦さんの世界観でお願いします。」と言われると嬉しくもあり、プレッシャーも感じますが、チャレンジすることを大事にしています。頼んでくださる方の想いもあるので、自分にしか作れない表現をしたいです。もし、私以外でも作れるようなものであれば私でなくても良いと思っています。
例えばこれまで、水引で高野山金剛峯寺のポスター、香椎宮の参道入口看板バッハなどの作品がありますが、全てオリジナルのものなので、当然事前に答えとなる作品はありません。「きちんと形になるのか?」と少し不安になることもあります。そんな時は、まずは手を動かしてみます。そうすると次の一手が見えてきます。常に対象と向き合い、できるまでの道のりをイメージしながら制作することを大事にしています。


Q.そもそも、その夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

長浦 実は、絵が得意だったから美大に入学したものの、これを表現したい!と確固たるものもなく、私は何をする人間なんだろう?とずっと疑問に思っていました。最初は自分のイラストを売り込んだりしていましたが、断られ続け自分には何ができるのか落ち込んでいました。だんだんお金も尽ききて、働かなければと思い求人誌を目にした時に、「水引を使った商品企画」というのを目にして、そこで初めて水引の世界に飛び込んでみました。商品企画開発・デザインの仕事を任せていただていたのですが、その頃は自分が世の中にどう役立っているのか、社会とどう繋がっているのかまだ見出せずにいました。そんな折、1年間フランスのパリに行く機会をいただき、パリで水引活動を行ったことが自分の中で大きな発見と出会いになりました。右も左も分からないパリの地で、暗中模索、悪戦苦闘の中、肩書も名声もない日本人の私が作る水引作品を、パリの人はとても美しい、買いたいと言って下さいました。自分が作ったものがフランス人の手に渡る・・・世界が動いた感覚になったんですね(笑)また日々の海外生活の中で認識した日本人の当たり前の考え方にも気づくことができたのは、今の仕事にとって大きな発見でした。日本人の自分が水引を通して伝える意味があるのかもしれない、と。美大では見つけられなかったアイデンティティのカケラがそこにありました。
また、高野山金剛峯寺やミッション系の学校、香椎宮さまとお仕事をさせていただいた時に、皆さん「水引で光を表現してほしい」と仰いました。そこには、何か宗教を越えた人間としての愛や平和や希望があるのではと自分なりに解釈し、それを表現できる水引自体にも可能性を感じました。


Q.同じようなお仕事をいただいても、光に着目する人、しない人がいますが、長浦さんが光に着目した背景には、何があったのですか?

長浦 幼少期の記憶に遡ります。小さな頃から、何でこんなに沢山の人がいるのにあの人とは知り合いじゃないのかな、なんてぼんやり思っていました。そしてモノを異様に大事にする子供だった(笑)。そんなことは当たり前のことだと気にも留めずに成長してきて、先述したパリでの「日本人の当たり前の考え方に気づく」に繋がります。私が幼い頃からぼんやり考えていたことは、日本人にとっては空気のような感覚、「ご縁」や「八百万の神」ということだったのです。幼少期に抱いていた、良く分からないけど繋がりがあるような感覚、それは実際には目に見えないものですが、今、水引というコミュニケーションツールを使い、目に見える形として繋がりを表現できていることに不思議な巡り合わせを感じながら日々お仕事をしています。とても幸せなことです。作品や商品を通して、ご縁を意識したり、有り難いことだと感謝するきっかけをお手伝い出来たら良いなと、私自身そんな小さな祈りを込めながら制作をしていきたいと思っています。

記者 感謝の気持ちは当たり前にすることでもありますが、ついつい忘れてしまうものでもあります。人を思いやる気持ちを思い起こす水引を使って見えない想いを形にしているんでしょうね。本日は貴重なお話、ありがとうございます!

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長浦さんの活動、連絡については、こちらから↓↓


【編集後記】
今回、インタビューを担当した風見、清水、原田です。
ここでは書ききれない程の、エピソードもありお話しててとても面白かったです。水引の伝統も大切にしながら人を想い、作成されている姿がとても素敵でした。
貴重なお話、ありがとうございます!今後もご活躍を応援しています。

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。


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清水七央子

リライズ・ニュース

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