物欲日記 11

2019/2/21

 ひと目見たときからそのメルヘンと不吉を愛さずにいられなかった。星は飛び交いながら堕ち月は死んだ太陽よりなおぎらぎらと輝きペガサスが高笑いをしている。強すぎる星も月の異変も神秘的な獣も古来より凶兆だ。「そうそう私はこういうこの世の終わりを見たかったんだよね」とにこにこしてしまう。何の話かって、SRETSISの優雅で豊かなチュールスカートの話です。
 たっぷりした深い紺色のチュール地に、金と銀の大粒のグリッターの重なりによって形づくられた星と月とペガサスが張り付いている。
 メルヘンはきっと誰が見てもそうだけど、不吉、というのは私がそう言い張っているだけだと実はうっすら気が付いている。同じ布を使ったワンピースを、アイドルが卒業公演で着ている写真を見た。彼女はおそらく、この世の終わりを意識していたわけではなかったろうと推測する。万が一そうだったらすっかりファンになっちゃうな。
 私があのスカートにこの世の終わりを見出したのは、世界へとぶつけたい憤り、お前なんていっそ一旦滅んでからやり直せ! と言い放ってやりたい衝動を憑依させるのにしっくりきたからである。服は私を世界から隔てる一番外側の膜にあたる。だから服を纏うこと、何を纏うか選ぶことは世界への意思表明になるのだ。
 かの高橋直子さんは名著“お洋服のちから”で、ファッションで怒りや不機嫌を表現することのむずかしさについて言及されており、まったく賛成するほかない。しかし世界のことを(その破滅と再生も含めて)諦めきることができないので、私は今日もせっせと該当のスカートを穿き、懲りずに光を乱反射させる。いつかあなたの目を射ちゃったらごめんなさいね。

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楽しい人生

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