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今日の風

よろこび

この言葉が自然に浮かんできて、筆を使って紙の上に書いてみた。

美しい形になった。

よろこび

この言葉の本当の意味を感じ取ることができるようになったのはいろんなことを通り抜けてここまでたどり着けたから。

見えないまま、流されるように生きてきてしまった。
かたくなな自分に溜息をつきながら。

だけど今、私はこうしてしあわせをかみしめながら生きている。

長い時間をかけてつらいことを通り抜けて、それでも待っていてくれた今のこのしあわせに心から感謝している。

こんなまわり道なんて本当はしたくなかった。
こんなに長い時間、自分を見失いながら生きるしかなくなってしまっていたから。

だけど。

必要だったのかもしれない。

そんな風にも思う。

そう思うことが救いになるわけでもなくて、取り戻すことのできない日々を後悔することもあるのだけれど。

よろこび

この言葉の深い意味が理解できるようになれたのは、あのつらい日々があったからなのだと考えたい。

そう考えることで自分のことを救いたい。


よろこび
の文字を形に変えて見たことで、外側から自分のことを見つめ直せる気持ちになった。

ことばに変えてみることは大切なことなのかもしれない。

自分を外側から見るための最初の一歩なのかもしれない。

そんなふうに感じる。


「コーヒーがはいったよ」
彼の声がする。

一人暮らしの長い彼にはこういうことが苦ではなく、自然な感じでさらりとできる。

そのことに感謝して、すんなりと受け入れていく。
私の顔に笑顔が浮かぶ。

淹れたてのコーヒーは熱いから気をつけて飲まないと。


日射しがつよくて暑いから、南側の窓を開けた。

風が通り抜けていって、空気が入れ替わっていく。

あたらしい一日が始まっていく。


よろこび

その四文字を自然な気持ちで、紙の上に書きあらわせた。

そのことが私にとっての今日の歓び。


今日の風が吹く。
かけがえのない、一日がはじまっていく。

ありがとう

全部のものに思える今日を大切にしたい。

通り抜けてきた沢山の悲しみを吹き抜けていく風に任せて預けてしまって。


このお話は、『裸足で踊ろう』の続きです。
そして、『風の向き、心の在処。』の最後のお話です。

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