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今年の桜は咲くのが遅かった

今年の桜の開花は10年ぶりに遅くなった、というニュースを聞いた。
温暖な九州地方と寒冷な東北地方との開花日が近い年でもあった。
理由を考えてみよう。


当たり前だけど南のほうが開花が早い

うちの県では北のほうが開花が早い年だった。
毎日、福井市から60km南下して職場に通勤しています。
いつもの年なら南のほうが開花が早い(ほとんどの地域で同じでしょう)
当たり前だと思われますが、今年は逆転現象も起こっています。
なぜだろう?

若狭町神子の山桜

サクラやモクレンなどの樹木、モモやナシなどの果樹の開花には、落葉中に低温に遭遇する必要があります。寒さに当らないと花は咲かないし、芽も出てこないことです。
例えば、冬も暖かい台湾では冬の寒さが少なく、ナシやリンゴは栽培できません。日本でも九州の暖かい地域ではナシの低温要求量(低温に遭遇する時間や温度)が足りないために発芽不良になる例があるそうです。
つまり、サクラなどは、
  落葉 → 低温遭遇 → 暖かくなる → 開花(発芽も)
という、順番を進行しないと生育できないのです。

休眠しないと花は咲かない

ちょっと具体的に。
なぜ暖かい地域のほうが開花が早いのかを見てみよう。
低温に遭遇すると、樹木や果樹は眠りに入ります。
これを休眠と呼びます。
休眠には自発休眠と他発休眠の2種類ありまして、
自発休眠とは低温に遭遇して自ら深く眠っている状態です。
この期間は暖かい高温になっても開花しません。
寒いほうが生育(休眠)が進む期間です。
この期間は樹種や品種によって、低温の度合いや時間が異なります。

他発休眠とは自発休眠が終わった状態、つまり十分に低温に遭遇したため、暖かくなれば開花に向かって生育が進む状態です。
暖かいほうが生育が進む期間です。
寒い地域のほうが自発休眠は早く進みますが、他発休眠は逆になり、暖かい地域のほうが早く開花するというわけです。

温暖地域と寒冷地域の開花までの生育

今年は特別?

今年はどうだったのか。
平年は1、2月が寒く、その後徐々に暖かくなるため、他発休眠期に逆転して暖かい地域のほうが早く開花します。
しかし、今年の2月は異常に温かかった。
この時期は寒い地域は他発休眠となっているが、暖かい地域はまだ自発休眠。
つまり、寒い地域は生育が進むけれど、暖かい地域は生育進まなくなります。この時期に温かくなると、生育の差が大きくなり、その後の他発休眠期の逆転ができなくなる場合があります。

2月が温かいと逆転しないことも

北のほうが開花が早くなることも

今年の福井県はこの状況だっとと思う。
北のほうの地域では2月の温暖のときにすでに他発休眠となっていた。
暖かい南のほうはまだ自発休眠だったため、生育の差が大きく逆転できなかったのだろう。
温暖化やヒートアイランドで暖かくなると、単純に開花が早まるわけではないということだ。そして、あまり暖かくなると桜が咲かないこともあるのではないか。かなり先の将来のことではありますが。

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