学校

私が勢いで全寮制の先生になった結果(番外編)

自宅警備員有力候補から脱却すべく、全寮制高校の教員採用試験を潜り抜けた私。大学卒業後、無事社会人としての生活をスタートさせるものの、早速多くの壁にぶつかることになるのであった。

これはポンコツ高校教員が体験したすこし変わった全寮制高校の記録である。

① 自宅で心霊現象?

6月中旬の深夜の出来事である。
私はいつもの通り深夜の自宅にフラフラと戻っていた。山の中腹に位置する広大な敷地を有した学校内は、しんと静まり返って不気味な趣である。私の自宅はそんな学校敷地内の一番奥、学校敷地と自然森林の境目にあった。

私は肝が冷えていくのをグッと抑えて、周囲を見ないようにしながら家に駆けこんだ。ようやく自分の聖域に入った安心感に息をつきながら、入浴などの寝支度を終える頃には時計は午前二時に差し掛かっていた。

「明日も5時起きか、もう寝ないと。」

ため息交じりな独り言が古びた家の中に虚しくこだまする。私は一層憂鬱になりながら、携帯に届いたプライベートの連絡さえも見る余裕がなくその日も床に就いた。

どれほど経ったのだろう。

何かの物音が耳に届き、微睡から目が覚めてしまった。

「最悪だ、明日も朝早いというのに。」

私は苛立ちながら、どうにか音の正体を突き止めてやろうと布団の中で耳を澄ませていた。万が一強盗などの場合、こちらが不利なのは間違いない。私は少しでも周囲の音を聞き洩らさまいと必死になって聞き耳を立てていた。

聞こえてくる音は何かが開いたり、閉められたりしているような音であった。

音の近さからして、部屋の中の何かが開かれているのは間違いない。

私は、眠るまでに家中の窓や扉を閉めていたかどうかを思い出しながら、薄目を開けて周囲に何か異変はないかをできる範囲で調べた。見えない場所であっても寝返りを打つふりをして細かく周囲を見回す。その間も扉が開け閉めされているかのような音は際限なくなり続けていた。

すると、、、足の先。足の先にある物置の扉が開いたり、閉じたりしているではないか。独りでに開閉するような軽い扉ではない。昔ながらの木と金物で作られた重い物置扉である。

私は、思わずその光景にくぎ付けになってしまった。

開くはずのない扉が開け閉めされている。異常な光景に息を飲み、徐々に身体が恐怖へと縛られていくのを感じた。

すると次の瞬間、その扉の陰からニュッと白い手が生えてきたではないか!

あまりにも白い、全く生気のない手が、指がミミズのように這い回り、取っ手の場所を探るかのように扉を縦横無尽に動き始めたのだ。

「あれを見てはいけない!!」

私は慌てて、しかし起きていることがあの手にばれないよう必死で目を閉じ、震えながら近くに置いてあったぬいぐるみと携帯電話を抱きしめていた。


次に気が付いた時には、既に空は白んで夜の闇はとうに去っていた。

慌てて起き上がってみれば、昨日あれほど音を立てていた扉はぴっちり閉じられたままであった。

「あれは一体何だったのだろうか。」

私は、そんなことを考えながら布団を畳み、そっと和室から運び出した。


その日から引っ越しする日までの間、私はその部屋に近寄ることはなかった。


あとがき

いかがだったでしょうか。

実は、これ本当に私が在職中に体験した出来事です。今でも夢だったのではないかと思えてならないのですが、あまりにも鮮明に覚えているので思い出した今でも背筋が凍るような思いに見舞われます。

ここからは後日談なのですが、翌日隣の家に暮らしている先輩に物音について謝罪した所、特に物音は気にならなかったと言われてしまい、益々恐怖心を煽られるとなりました。

加えて、私が足を向けていた方角には飛び降りの名所と呼ばれている赤い橋がある方向であったことに引っ越してから気が付いたので、そこから退職するまでは一切その建物に近寄りませんでした。

その建物は、今でも若い教員が住宅として使用していることでしょう。ちなみに、私が引っ越した直後にその家を借りた後輩教師も何度か同じ現象に遭遇したそうですが、幻覚だと言い張り心療内科に通うようになりました。

ということで、次回も番外編として実際に学校で体験した怖い話を書いていこうかなって思っています。まだ何個かお話しできそうなネタがありますので、夏の読み物として楽しんでいただければ幸いです。

では次回をお楽しみに!!


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