学校

私が勢いで全寮制の先生になった結果(採用編)①

地元の教員採用試験に落ち、一般企業の内定すらないまま大学4年生の夏を終えようとしていた私。そんな私の元に偶然舞い込んだのは、『全寮制高校の教諭を募集します』という一通のメールだった。

これは、落ちこぼれ大学生の私が経験した少し変わった教員生活記録である。

①勢いで受けると決めた採用試験

当時私は教員志望ながら、持ち前の陰気な風貌とコミュニケーション能力の低さを持て余し、自宅警備員有力候補と家族に揶揄されるという日々を送っていた。

「何とか就職しなければ人生が詰む。」

そのような焦燥感にかられ、連日『教員 求人』でググっていた折、最初にスカウトメッセージを送ってきたのが件の全寮制高校だ。

初めて自分を必要としてくれる学校に出会えた感動を胸に、募集要件をすぐさま確認すると、以下のようなことが書かれていた。

・主な業務内容は教科指導、部活動顧問、学寮チューター(週三回)
・寮監及び宿直業務(希望制)
・教員住宅、食事補助あり
・初任給 26万円より

私は阿呆であった。この破格な初任給と福利厚生に見事釣られてしまった。

即座に学校へ電話をかけ、その日のうちに採用試験を受ける事を決定したのである。

②疑わなかった学校案内

電話から一週間後の日曜日、私は残暑の厳しい季節に合っていないリクルートスーツに身を包み、地元から3時間電車に揺られて待ち合わせの駅へ向かっていた。

どうやら駅から学校までは徒歩1時間かかるそうで、学校側の厚意もあって送迎を依頼したのである。実際に改札から出てみると、豊かな自然と寂れた温泉地の案内看板が特徴的な懐かしい風景が眼前に広がっていた。

そうこうしている内に職員の方と合流し、自動車で山の中にある広大な学校へと足を踏み入れたのである。本筋と関係ないが、この時学校の隣にある橋で谷をのぞき込んでいた妙な女性がいた事を今でも鮮明に覚えている(後から知ったのだが、橋は有名な飛び降りスポットだったらしい)

学校の校舎に到着すると、当時の教頭と森の中に不釣り合いなブレザー姿のにこやかな女子生徒が待っていた。

なんと、女子生徒は自ら新しい先生に学校を案内したいと休日であるにもかかわらず登校してくれたというのだ。私は、思わず感激して彼女と握手を交わして感謝を述べた。この時点で違和感を感じなかったことを、この半年後に後悔するのである。

全寮制ということもあり広々とした校舎を案内されながら、教頭と女子生徒から学校に関して様々な説明を受けた。

生徒のほとんどが小中学校に馴染めなかった不登校経験者だということ、教員は寮監を兼ねることで生徒と信頼関係を築いていること、人里離れた立地でありながら生徒が将来社会貢献できる人間になる為に最新の授業形式やロールプレイングを行っている事など、話を聴けば聴くほど理想的な教員と生徒の関係を目指している学校だという好印象を抱かざるを得ない言葉が並べられている。

加えて、ほとんどの説明を女子生徒が会話の中で聴かせてくれている事から学校側の一方的な説明よりも安心感を得られてしまったのだ。

このような要因から学校案内が終わる頃、私もこの学校をすっかり信用していたのである。

採用編②へ続く

あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

お分かりになった方もいらっしゃると思いますが、私はこの頃ただ先生になりたいという焦りから観察し思考する段階を放棄して採用試験に臨んでしまいました。

今でも、あの時もっと学校に関する調査をしていれば違った未来だったのかもしれないと後悔することもあります。

しかし、この記録はそのような後ろ向きな思いを吐露するために始めたものではありません。私自身が漸く現状を受け入れられるようになってきたからこそ、改めて振り返ってみようと思い立ったものです。

内容故に前職をかなり非難してしまう部分や自分の行為を棚上げしてしまう部分もあるかと存じますが、これが教員だった時の私自身です。

皆様がこの記録をお読みになってどのように思われるかは分かりませんが、どうぞとんでもない阿呆が現代にもいるんだなと笑っていただければ幸いです。

最後に2つほど失礼いたします。

これをうっかり読んじゃった学生の皆さん、企業研究はグーグル検索結果3ページ目くらいまでしっかり読みましょう。

そして、万が一学校が分かったとしてももう過去の話です。今は違っていることもありますので、ご留意ください。


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