②病的なまでに描写にこだわれ―うろ覚え創作論

「頭がおかしい」は一部褒め言葉らしいと理解したのは合宿を経て、2回目の参加の時だったように思う。

「頭がおかしい」→何が言いたいのかさっぱりわからん
「頭がおかしい」→何でこんな安易な表現を使ったんだ
「頭がおかしい」→僕にはとてもこんなめちゃくちゃな話は思いつかない

一応最後のものは褒め言葉だった、と今は認識している。
そこそこ評価してもらったようだが、もちろん修正は死ぬほどした。
そのうちのひとつが「描写に徹底的にこだわれ」ということだ。
全てにおいてそうだが、先生は理由なんてほとんど口にしない。
実践あるのみ、やってわからなければ才能のなさを自覚して励むしかない。

かくして、めちゃくちゃな話と評された拙著『ミッドナイト・ティータイム』は「紅茶」が物語の鍵となるのだが、原稿用紙六十枚の中に紅茶を用いた感情表現や、紅茶が関係ない場面でも比喩表現が至る所に散りばめられるように仕様変更された。

本当にいい加減にしなくては、そう意識して固く目を閉じる。頭を振って、紅茶を一気に飲み干した。しっかり保温して入れた紅茶は一気に飲んでしまうにはまだ熱く、舌がひりひりした。
わざとらしいその声がやけに癪に触って、すぐにテレビを消した。カップの底に残ったアップルティーは、きっと冷めてしまっているだろう。淹れ直さなくてはいけない。
対流に浮かんではまた沈んでいく鍋の中の茶葉を見つめていると、ミルクを加える前のこの紅茶よりも真っ赤に怒った母の顔や、黙り込んだ父の悲しそうな顔が浮かんではまた沈んでいった。
元から冷たい人間だったのか、考えないようにして逃げているだけなのか、次第にそれもわからなくなっていった。流しのへりに一片だけ張りついて取り残された茶滓みたいに、自分が汚らしく、いやらしく思えた。

上記はほんの一部。
主人公が紅茶の魅力にとりつかれる過程を書いているので、ひたすらひたすら紅茶の話をしているが、していなくとも上のような表現が延々続く。
文章全体にまとまりが出てくるし、若干の狂気をはらんだ物語でもあるので、執拗な紅茶描写は雰囲気づくりにとても役立った。
一言で素人作品を見違えさせてしまう、やはりプロはすごい。

続く。

***
最近の作品はこの頃に比べるとまるでプロットだ。
次作は校正の時間を倍取ろう。

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→いいタイトルをつけろ

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【お礼の紅茶】栗そのものを味わうようなプリミアスティーのマロンティー
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丹宗あや

うろ覚え(じゃないのもある)創作論

プロ作家の同人会から学んだ創作作法について(だいぶ記憶があやふや)。その他学んできた創作手法をシェアします。
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