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陰陽論がスゴイっていうはなし③

前々回前回から続いて「陰陽論」の話です。「陰暴論」ではありません。

※「陰陽論」の話はこれで最後です。

おさらい

改めてこれまでのおさらいを簡単にしておきます。陰陽論とは東洋(古代中国)で生まれた思考フレームワークのひとつで「あらゆるモノやコトは、必ず””と””の二つの性質を持っている」と考える、”世界の見かた”です。

この陰陽に基づく世界観を表現した図式が、陰陽図とか太極図とか言われてるこのマーク↓です。

西洋にも、世界のあらゆるモノ・コトを「2つに分けて考える」ことで複雑な世界を単純化し、分かりやすくするための「二元論」という考え方があります。「陰陽論」も「二元論」も対象を2つに分けて考えるという点だけでいえば同じですが、東洋の陰陽論のスゴさは「分けて考える」を超えたところにあるっていうのがこの一連のポストの主題です。

ココが凄いよ陰陽論!」と題して、陰陽論のスゴイところ3つのうち、1つ目と2つ目を前回までに紹介してきました。その3つとは以下です。

①矛盾もOK!
②取りこぼさない!
③未来予知もできる!

----ここまでおさらい---

ということで、最終回③「未来予知」のはなしです。

陰陽論と三角関数と波

冒頭の陰陽図(太極図)ですが、ちょっと左に90度回転してみます。
ついでに、①のときに言及した中にある小さな●〇もいったん忘れてみましょう。

こうなります。↓

円の左側から右側に流れる「白と黒の境界をなぞる曲線」のカタチ、どこかで見覚えがありませんか?

そう、コイツ↓↓です。

高校の数学で習う「三角関数」のグラフです。三角関数とは「円運動」を数式で表したものですが、「円運動」は「波(波動)」です。

三角関数」と「円運動」と「波(波動)」の関係は、以下のアニメーション画像を見れば何となく分かるでしょうか。(数学の授業で方眼紙に書かされた記憶が…😂)

(画像引用元:https://www.watto.nagoya/entry/2016/01/22/003000)

つまり、陰陽論は”波(波動)”を表現していることになります。

モノゴトを”波”で捉えるというのは、とても重要な考え方です。

「陰極まれば陽となり、陰極まれば陽となる」

「陰陽論は”波(波動)”を表現している」とは、具体的にどういうことでしょうか?

以下の図を見てください。

先ほどの三角関数のグラフ上下に””と””のラベルをつけてみました。

このグラフでは、一番最初は陰と陽どちら側にも偏ってないところからスタートし、徐々に陽の性質が増していき、やがて陽のピークに達します。ピークを超えた後、陽の性質は徐々に減っていき、逆に陰の性質が増していきます。そして陰がピークに達すると陰の性質は徐々に減り、再び陽のピークに向かっていくわけです。

このように、陰と陽の性質が互いに増進と減退を繰り返すことを陰陽論では

「陰極まれば陽となり、陽極まれば陰となる」

といいます。

この法則を上図のように「陽=太陽」、「陰=月」に置き換えると、まさに1日の昼夜の移り変わりを表せるわけです。ちなみに陽と陰の中間になる真ん中のラインのところは「朝焼け」「夕焼け」ということになりますね。

余談ですが、映画「君の名は」で物語のキーとなるシーンとして描かれた「片割れ時」「黄昏時」ですが、「昼でも夜でもない」=「この世(陽)でもあの世(陰)でもない」と、まさに陰陽が入り混じった演出でした。

さて、”陽”を太陽、”陰”を月に置き換えることで陰陽図は「1日」の移り変わりを表現したわけですが、これが「1年」だったらどうなるでしょうか?例えばこんな感じです。

「陽」のMAX夏(夏至)「陰」のMAX冬(冬至)、中間のところはそれぞれ春分秋分という感じでしょうか。

このように、陰陽は必ず一定の周期で増減を繰り返すので、次の展開がどうなるか読めるというわけです。これが「未来を知る」ということに繋がります。

「いやいやwww春の次に夏が来るなんて当たり前で皆知ってるし。これを未来予知ってちょっと言い過ぎじゃない?笑」

と思っちゃいますよね。

確かに「夜」と「昼」が交互に訪れるのは当たり前ですし、「春」が終わったら「夏」が来ることは誰もが知っている事実です。

では、「陰」と「陽」をもっともっと身近なものに置き換えたらどうでしょうか?あるいは「波」の周期を1日や1年ではなく10年や100年単位で考えたらどうなるでしょうか?普段、そんな風に考えることはあまり無いと思います。

実はこうやって陰陽論を様々なケースに落とし込んでみないと「未来を知る」の本当の意味は掴めません。

陰陽論と景気循環

例えば、を「景気の良し悪し」に置き換えれば、経済学でいうところの「景気循環」説になります。景気循環説とは、世の中の「景気」には周期性があるという考え方です。陰陽論的に言えば「好景気が極まれば不景気となり、不景気が極まれば好景気となる」わけです(下図参照)。

わざわざ言われる間でもなく、体感的に分かる事ではあるんですが。

(画像引用元:https://asset-formation.com/2015/02/21/economy-basic-11/)

この景気循環説は経済学の分野で様々な研究がされており、周期の捉え方にも様々な説があるようです。代表的な説は以下のようなものがあります。

例えばコンドラチェフという人の説は、景気循環は「技術革新」を要因として起きると考え、50年~60年という非常に長い周期で捉えています。(下図)

産業革命の時代から人工知能の時代を予知しようとするのはなかなかチャレンジングですが、このコンドラチェフの波によれば、これから2025年あたりにかけて景気はまだまだ谷に落ちていくように見えますね。東京オリンピックが終わった後、日本経済はガタガタになるという観測が出ていますが、まさにそれを予言したかのような波になっています。人工知能やロボットによる技術革新で景気が上向くのはしばらく先になりそうです笑😰

誤解なきよう補足しますと、この景気循環説のどれが正解ということではありません。単に世の中の何を「陰」と「陽」に見立てるか、そしてその周期のスコープをどこまで取るかの違いだけです。上の例でも示したように、1日の昼と夜の移り変わりを表現するのか、1年の春夏秋冬の移り変わりを表現するのかは単にスコープの差であり、どちらもこの世の規則性を表現したものに違いはないのと同じです。

陰陽論と人生曲線

仮に「陽」と「陰」を「人生の幸福度」に置き換えてみたらどうなるでしょうか?「人生の幸福度ピーク」と「人生の幸福度ドン底」が半年周期でやってくる人もいれば、1年周期でやってくる人もいるし、もしかしたら10年周期でやってくる人もいるかもしれません。景気循環説と同じで、陰と陽の捉え方によって色んな見方ができるわけです。ポイントは、自分の周期がどのくらいで、今その周期のどの段階に自分がいるかを把握することです。

なぜなら「陰極まれば陽となり、陽極まれば陰となる」わけですから、もし今が陽にいるなら、いつか必ず陰に転じるときが来るわけです。逆に今が陰だとしたら、いつか必ず陽に転じる日が来ると予測して備えられるからです。

これは言い換えれば「永遠に”陽”のままであり続ける」あるいは「永遠に陰のままで居続ける」なんてことは絶対にありえない!ということです。

人間、有頂天になってたりドン底に陥っていたりすると、この原則を見落としがちです。この原則を肝に銘じておくだけでも、十分「未来の予知」といえるのではないでしょうか。

なお、「循環」という話は景気だけには留まりません。近頃起きているVUCAな時代っぽいできごと(英国のEU離脱、米国の国粋主義化、中国経済の急激な失速etc)は、どれも陰陽論で説明できます。「歴史は繰り返すモノなんだよ」と言ってしまえばそれまでで、それは単に結果論を述べただけです。未来に活きません。「陰と陽」を何に見立てて、その変化をどんな周期で捉えるかまで考えないと、次の変化のタイミングを予測することができないからです。

さいごに:不易流行と日本人

江戸時代の俳人「松尾芭蕉」は、俳句を通してこの世は「不易流行」であると見抜きました。「不易流行」とは、この世には「永遠に変わらないもの」と「常に変わり続けるもの」の2つが同時に存在するという意味ですが、これはまさにここまで述べてきた陰陽の周期の話そのものです。芭蕉が陰陽論に強く影響を受けていたことが伺えます。

陰陽論は古代中国で生まれ、おそらく日本には4~5世紀頃には伝わっていたはずです。そこから1500年以上江戸時代の芭蕉まで受け継がれていたわけですから、日本人はコンドラチェフどころか遥か昔からこの陰陽論の考え方が肌感覚で身についていたわけです。なので、日本人なら誰でも陰陽論に基づいた未来を予測する素養があるんじゃないかと思ってます。今の学校教育は西洋(二元論)べったりなので、なかなかその素養が発揮されにくいのが残念ですが。

おしまい。

おまけ

西洋の二元論では2つに分けた要素「Aと非Aの割合は1:1、つまり50%:50%」だと考えますが、東洋の陰陽論では「陽と陰の割合は49%:51%」が良いとされているようです。例えば東洋医学では、体内の酸性度は完全な中性よりは「弱アルカリ」の方が良いそうですし、家庭における夫婦の力関係も全くの対等よりは「夫49:妻51」つまり奥さんに華を持たせるくらいの方が円満な家庭になるということになります。西洋では「夫婦は対等(50:50)」が当たり前なのを考えると、やっぱ西洋と東洋って根本的に感覚が違うんだなーと思います。

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