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ABD体験記

先月、はじめてABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)なるものに参加してきました。以前からちょっと興味あったのですが、知り合いの方に誘って頂いたので参加したところ、想像以上にハードで刺激的で楽しめたので、紹介します。

ABDってなに?

ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)は「読書法」の一種で、平たく言うと

「みんなで協力して一冊の本を読む」

というものです。単に分担して読むだけだと、いわゆる普通の「読書会」になってしまいますが、ABDでは分担して読んだ部分を各自が要約&プレゼンし、参加者同士でお互いが読んだ部分を共有するところが特徴的です。

他にも
「手ぶらで参加OK!」とか「短時間で本が読める!」とか「記憶の定着率が高い!」とか、読書会らしからぬ特徴があり、本を読むこと自体が苦手な人には色々と向いてる手法かもしれません。

どんな本を読むの?

基本的にはどんな本でもいいみたいですが、やはり一人で読むには骨が折れそうな本少しずつ理解を積み重ねながら読み進める本がとくに向いていると思います。

ABDでよく題材となる本は、ベストセラービジネス書の「ティール組織」のようです。

別にビジネス書でなくとも技術書や小説、漫画でもやろうと思えばいけるかもしれません。

ただ、ページ数が少ない本や一人でもサラリと読めるライトな本などは、まずは自分で一通り読んで、それからお互いに感想を言い合った方が、後述する「対話」をより効率的に楽しめると思います。その意味でABDは「一人で読むのはちょっとしんどい…」系の本の方が向いていると思います。

ちなみに、私が参加したABDの題材本はコチラでした。

このインテグラル理論は、ティール組織の元になったモデルだそうです。

「みんな」って何人ぐらいでやるの?

厳密に参加人数は決まってはないようで、題材とする本のページ数によって適切な人数がおのずと決まる感じでした。つまり、参加人数が多ければ多いほど一人当たりに割り当てられる分担は少なくなりますが、あまり多すぎると細切れすぎてサマリーが理解しづらくなります。逆に、参加人数が少ないと分担が多くなるので、要約を作るのに多くの時間がかかってしまいます。

私が参加したABDの題材は400ページ以上ある本でしたが、2日に分けて開催され、各回10人くらい参加者がいたため、一人当たりの分担量は10~15ページ程度でした。

ABDの流れってどんな感じ?

ABDには大きく分けて以下の3つのステップがあります。

1. 要約
2. プレゼン
3. 対話

1. 要約

その名の通り、割り当てられた本の一部分を要約します。あらかじめ、題材となる本のページをバラバラ(!)に裁断し、参加者の人数でだいたい均等の分量になるよう分割しておきます。参加者全員が分割されたパートのいずれか1つを担当して要約します。

要約結果はB5サイズの紙に書きだしていくのですが、目安としては2ページ分に対して紙1枚。10ページなら用紙5枚くらいでしょうか。あとでプレゼンするときのことを考えて、できるだけ大きく見やすい文字で要約結果を紙に書きだしていきます。本に書いてある図や絵、ときには書いてない図や絵も付け加えながら、書いてあることが一目で伝わるように工夫して要約していきます。

その際、あくまで客観的に、そこに書いてあることのエッセンスを抽出して「要約」に徹することが大切で、本に書かれていることに対する個人的な意見や感想、主観が入らないよう注意する必要があります。(でないと、次のステップで要約を共有するときに著者の意見と要約者の意見が混ざってしまうとほかの参加者が混乱を招くため)

この要約が思ったよりも大変な作業で、蛍光ペンを持ちながら本の中で「これはポイントだ!」と思うところにラインを引きながら読み進めていくのですが、最後まで読み終えて見返してみると、ラインを引いたところが結構たくさんあって、しかも「どれもが重要」に思えるから厄介です。

「えっ…この中から絞って、さらに論旨を繋げるの?無理じゃね?」

とか思っちゃったりするのですが、それでも何とか「やっぱここは残した方がいいかなー」「ここは思い切って削っちゃうかー」なんてことをアレコレ悩みながら要約を作り上げていきます。あまり悩んでると、進行係の人から「あと●●分で終わらせてくださいね」なんてプレッシャーが掛かってくるので、さらに焦ります。

そうしてなんとか要約が終わったら、自分が担当した要約ページを壁に貼り付けます。このとき、自分の前後の要約ページを担当した人と並んで表示されるように貼る位置に気を付けます。(↓こんな感じ)

2. プレゼン

全員分の要約が出そろったら、いよいよプレゼンの始まりです。何をプレゼンするかというと、自分が担当した部分の論旨です。プレゼンの持ち時間は1人3分くらいです。要約ペーパーに書いたことをそのまま読み上げようとするとあっという間に3分経ってしまいますので、要約ペーパーに書いたことをさらに自分なりに消化してストーリーとして論旨を繋いで喋ります。本の章立てに沿って担当順にプレゼンしていくので「リレープレゼン」と呼ぶそうです。

このとき、担当部分だけ読んでもわからなかった「言葉の定義」や「前提条件」を前の人のプレゼンを聞くことではじめて知るような事態が起きます。

「ああ、アレってコレのことか」「アレは前の章に書いてあった話か」

プレゼンでは、このようにギリギリになって「自分が読んだ箇所に書いてあった、理解できなかった言葉や表現の意味がようやく分かる」という状況もハッタリで乗り越えなければなりません。つまり、あたかも前の人の担当分も読んでいたかのような体で自分の担当分をプレゼンするわけです。日常生活や普段の仕事の中ではあまり演じることのない「ハッタリをかます」という立ち振る舞いなので、ちょっとドキドキしつつも逆境を楽しむという、ある意味で貴重な場といえるかもしれません。

3. 対話

最後が対話(ダイアローグ)です。この対話の時間こそが、ABDをABDたらしめる要素であり、読書会や輪講とは大きく違うところかと思います。全員のプレゼンが終わったところで、要約が並んだ壁の前を全員で改めて眺めながら、プレゼンを聞いてて気になったところ、共感したところ、自分が担当した部分と繋がったところ、矛盾しているところなどを探していきます。そうやって気づいたことを、参加者同士で要約を前にしながらあーだこーだ話すのが対話です。

「この部分とこの部分って、同じ事を言ってるのかな?」
「これは、○○の主張と近いね」
「これとこれってなんだか矛盾してない?」

元々、一人の人間が深考して生み出した論旨が凝縮されたものが本になったわけで、それをバックグラウンドや前提知識が全く違う人が機械的に分割した部分を解釈していくわけですから、そもそも要約同士が元のように綺麗に繋がるわけがないのです。

各人が担当したページの中からどの部分を論旨として抽出したのか、それをどのような表現を用いて用紙に落としたか、それをどのような言葉、仕草でプレゼンしたか、そういった要素の1つ1つによって、たとえ同じ本を題材にしても毎回違う結果になるはずです。その差を吸収し、昇華させるのが対話であり、読書会や輪講にはないABDならではの楽しみ方だといえそうです。

やってみてどうだったの?

素直な感想としては「けっこう疲れる!でも楽しい!達成感ある!」という感じでした。わずか十数ページとはいえ、限られた時間の中でその論旨を過不足なく抽出し、かつそれを数ページの紙に分かりやすく表現するのは、今思えばなかなかハードワークでした。慣れてくるとそうでもないかもしれませんが。ただ、自分の担当分のプレゼンをきっちり終えて「役目を果たした」時と、全員分のプレゼンを終えて「この本を一冊、読み通した!」感は何ともいえぬ達成感があります。おそらく(というかほぼ確実に)一人で読んでいたら、最後まで読み抜くことなく力尽きてたと思うので・・・。

他の観点としては、人海戦術による要約とはいえ、一度は最後まで読み切ったという達成感と自信から、題材となった本を改めてイチから読んでみる勇気が沸いたことです。実際、この本はABD後すぐにAmazonでポチり、今手元にあります。(といっても読み途中の本がまだ終わってないので積読中ですが)

ABDで各章の要旨は他の参加者の成果物と議論した内容は覚えていますし、自分が担当した章などは上記の通り短時間で集中して読み込んだので、1か月経った今でも文章を見ればすぐ内容が思い出せます。記憶の定着率が高いという前評判も決して誇張ではないと思います。

ABDは公式サイトで無料のマニュアルが公開されており、誰でも実践できるようになっています。私もABDが主催できるようもう少し経験を積もうと思います。

皆さんも、もし心が折れそうだけど読んでみたい本があったらぜひABDを試してみてください😃

おしまい。

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