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宇宙の果てより目の前の燕。(173日目)

14時に二度寝から目覚めた。久しぶりに今日は特に予定もない。天気予報では1日中雨だった気がした。つけっぱなしの冷房を消して、玄関を出た。

雨は降っていなかった。降水確率80%以上という話は何だったのか。空を見上げてみると、今にも耐えきれず泣き出してしまいそうなほどに、雲が立ち込めている。となりの駅まで1駅歩いて、その駅前にあるコメダ珈琲に行こう。玄関を出てから、目的地が決まった。僕にはよくある話だ。

車や歩行者を気にしながら歩くのは鬱陶しかったので、ちょっと遠回りして河川敷を歩くことにした。土手の上を歩くと清々する。屋根や木々と同じ目線から、まちを見下ろせる。さっきまでもっと遠くに感じていた空に、少しだけ近づけた気もする。

鳥が飛んでいた。カラスもすずめも鳩も、2羽3羽でまとまってパタパタと飛んでいる。その中に、明らかにおかしい動きを見せる鳥がいた。燕だ。1羽単体で、くねくねと低空飛行と急上昇を繰り返している。燕が低く飛ぶと雨が降るらしい。虫たちが羽に水分をまとうようになり、低く飛び始めるから、それを餌に狙う燕が低く飛ぶというカラクリだ。昔の人の勘の鋭さというか、自然を観察する力を現代人は忘れてしまっている気がする。

その時、ぽつりと水の気配を感じた。雨だった。目の前を舞う燕。その燕が教えてくれた予感。同時に、遠い宇宙の果てを飛ぶ人工衛星に想いを馳せる。雨予報だった天気予報。今ここを飛ぶ燕にも、人類の叡智を結集して生み出した代物は敵わない。コメダ珈琲で頼むアイス豆乳オーレのサイズを、無性にたっぷりにしたくなった。こういうときにケチらないためにバイトして稼いでいるのだ。結局、注文したのは普通サイズだった。

そういえば、先日、山梨にある某遊園地で、人生初の絶叫コースターに乗った。非人道的に振り回されながら視界をよぎる美しい富士の稜線を感じて、自分のちっぽけさを確かめることができた。内臓が浮き、地面に叩きつけられそうになるも、人類が生み出した装置に対する絶対的な信頼で、安全バーを握る両手が力む。天地の判別さえできない数秒間のあとに、自分の足で地面に立つことの心地よさを実感した。帰りの中央道は、小仏トンネルから八王子くらいまでずっと渋滞だった。自分たちの好きな音楽だけを流し続けた3時間。この渋滞がずっと続いてほしいと思えるドライブをもっとしたい。

最近は、卒論のことで頭がいっぱいで、こうやって文章を書くことができていない。正直、まじでこんなこと書いている場合ではない。自分の好きを追求することと、卒論を書き上げることが、重なり合って同じ作業になるように心がけたいと思う。

一年で一番長く太陽が顔を出している時期。燕が教えてくれた大事なことを、ここに記録しておく。

それにしてもここのコメダ珈琲は本当に居心地が良い。きっと建材の樹の香りがそう感じさせてくれている。週末は京都にでも行こう。

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