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20歳の夏休み全部使って日本一周してみた(7:旭川〜稚内)

第7日目

ピピピピ、ピピピピ。ビジネスホテルあるあるのベッドに併設された目覚まし時計が朝5時にけたたましい音を響かせました。今日は6時3分に旭川を出る宗谷本線普通列車稚内行きに、何としても乗車しなければなりません。これを逃せば今日の最北観光は何もできなくなります。この稚内行きは朝のこの時間を出発するものしかないのです。

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といういことで準備を済ませ、駅近のビジネスホテルを発ちます。旭川の朝はとてもひんやりしていました。朝ごはんは昨日の夜にAEONで半額になっていた菓子パン×2。動き出した列車の席で貪り食います。そしてとても喉が渇きます。

おそらくこの宗谷本線はこの日本一周旅行で一番過酷な乗り物となるでしょう。6時間同じ列車に乗りっぱなしって考えたことありますか。飛行機ならまだしも、鉄道で、しかも普通列車ってとこがまた嫌なことです。移動も旅行の一つとして楽しめる僕にとってはそこまで苦ではありませんが、常人からしたら「お前何しとんの。」と言ったところでしょう。

相変わらず朝の時間帯の移動は車窓を楽しみたいものですが、気づいたら寝ています。最後に記憶に残っているのは塩狩駅でしょうか。塩狩峠で有名な急勾配の線路を走っているあたりで眠りにつき、次に目が覚めたのはもう名寄の一歩手前、風連駅あたりです。そこからまた眠りについて結局まともに車窓が楽しめたのは、音威子府を過ぎたあたりからです。

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この睡眠欲と車窓見たい欲との拮抗は、僕の旅行経験だとあるあるなのですが、共感してくれる人はいますかね。見たい車窓はあるのに、瞼が重くて目を閉じれば、その美しい車窓を逃してしまうという葛藤。どうにかならないものですか。

しかし、音威子府を出てからの石狩川と並走する区間の車窓は日本の鉄道でも屈指の美しい車窓だと思います。カーブに差し掛かると、これから走行するレールや鉄橋がちらりと前方に見え、旅情を掻き立ててくれます。疑似シベリア鉄道感があって、本当に素晴らしい景色です。是非とも名寄から先も永久に存続して欲しいと思います。

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稚内に着いたらまずはセイコマート。この駅に着いたらセイコマートを探す癖、タチの悪いことに去年もそうでしたが旅行終わっても継続するんですよね。多分、北海道が終わって青森秋田と行く時も夜になったらセイコマートを探し始めてしまう癖が本能的に働いてしまうでしょう。

腹ごしらえの後は、駅併設の観光案内所でレンタサイクルし、片道30kmの宗谷岬まで向かいます。この案内所のおじさんがまた面白くて、喋り方がはんなりとしています。淡々と受け答えをするので、「宗谷岬まで行こうと思うのですが片道30km遠くないですかね?」と聞いたところ、涼しそうな顔して「あ、行けますよ行けますよ」と今度は淡々とルートの説明が始まります。

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このレンタサイクルサービスは素晴らしくて、それこれ丁寧なルートの解説もありますし、荷物お預かりサービスもありますし、クロスバイクも綺麗でギアもブレーキもちゃんとしていて文句なしです。また、宗谷岬までの道のりもずーっと海沿いですので平らで走りやすいです。その代わりずーっと海からの風に当たり続けますので、体からクラムチャウダーのような美味しい匂いが漂ってきます。潮の香りということです。

ということで、その永遠と長い直線を走り続けます。途中右手には稚内空港の滑走路があったり、大量の白鳥で知られる大沼があったりします。しかし僕が向かう宗谷丘陵は27km先です。東京でいうと、葛西臨海公園から荒川を遡って、丁度埼玉県に入るくらいです。常に視界の奥には蜃気楼が見え、左手にはオホーツク海の水平線が見える最高の景色を楽しめます。

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走っている途中、暇でしたので横を通り過ぎる自動車のナンバープレートを観察していると、札幌旭川北見などは驚かないのですが、川崎や名古屋を見かけると思わず2度見してしまいます。やはりここら辺まで走ってくるライダーの旅人や車中泊の旅行者は多いのですかね。最北端ですからね。訪ねたいものです。

宗谷小学校というのが近づいてきたら宗谷丘陵へ曲がる道も近いという案内を受けたので、地図上で確認しつつ白い道入口という看板を見つけます。小道にかかる橋を渡ると、川からとんでもなくデカい魚が飛び跳ねたと思ったら2頭の鹿がこちらを睨んでいます。邪魔するつもりはなかったのですが、びっくりさせてしまったみたいです。そんな顔しないで、許してください。

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この白い道は貝殻からできているので白いのですが、丘陵ですので本当に坂が急ですし、それがずっと続きます。丘の上からは車やバイクが何台も降りてきます。自転車で行けるようなところなのでしょうか。こう疑問に思うたびに、案内所で淡々と説明してくれたおじさんを思い出し、行けるのだと自分に言い聞かせて、時には自転車から降りて押して歩いて登り切りました。

登り終わって振り返ると、眼下には一面海が広がっています。そしてこれから向かう方には何本もの風力発電がぐるんぐるんと回っている奥で、如何にも夏らしい雲がもくもくと発達し、それはそれは予想を超える風景が広がっているではありませんか。その丘を縫うように白い道がすらーっと続き、宗谷丘陵の素晴らしさを目の当たりにします。

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あーもう素晴らし過ぎてずっとここにいたいのですが、この自転車は17時までに返さなければいけません。時間はすでに15時手前、これから30kmの道のりを戻るというのに間に合うのでしょうか。

去年、宗谷岬に来た時はバスで来てバスで帰ったので、宗谷岬を海側から攻める形で観光しましたが、今回は丘陵から降りて行く形で観光しますので、去年はこの先永遠と丘が続いているのだろうとしか想像しかできなかった方向から到着します。自転車でたどり着くと、最北端まで自転車で辿り着いた感があってなんかいいですね。無論、稚内駅までは鉄道で来ましたけど。

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トイレを済ませて自転車に戻ると、自転車の周りに野生の鹿が3頭、草をむしりに来ていまして、自転車を占拠されていました。鹿からの先程の仕返しでしょうか。丘を下って海へと続く急な坂道があるのですが、どうも空の模様が怪しいです。先ほどまで雲ひとつなかったのに、黒い雲がちらほらと生まれ、いつのまにか頭上には分厚い黒い雲がかかっているではありませんか。しかも怪しい冷たい風が突如びゅーびゅーと吹き出します。嫌な予感です。

こんなに天気が急変することあるのかと思うほど、目まぐるしい速度で黒い雲が移動しています。しかし、不思議と雨は降りません。最北端の碑の写真を撮って、早速稚内駅に戻ります。17時に間に合わないと、あのおじさんになんて言われるかわかりませんから。

行きは向かい風でしたが、帰りは追い風です。どんどんと加速して、ギアもmax8分で3kmのペースで進んでいたので、時速約25kmくらいでしょう。ものすごいスピードで来た道を逆戻りです。あっという間に稚内市街へ入りました。結局1滴も雨に降られることはなく、潮騒を聞きながら直線を走り続けました。

稚内に戻ってからは、明日以降の北海道&東日本パスを購入したり、ゲストハウスにチェックインして洗濯したりして明日からの準備を整えました。

宗谷岬へ行く道中、熊避けのためかリュックにぶら下げた金具を鳴らしながら歩く、如何にも旅人の風貌をした人が稚内へ向かっていたのですが、帰りもその人に追いつく形で後ろから通過しまして、最北端を歩いて巡る屈強な旅人としての印象が残っていたのですが、チェックインして自分の部屋に入ると、なんとその人が自分の隣で何やら荷物の整理をしているではありませんか。旅先ではこういう行き当たりばったりなハプニングが忘れられない出会いに繋がるので、素敵ですよね。

明日はゆっくり網走まで移動するだけの1日になる予定です。寝坊しなければの話ですが。おやすみなさい。

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