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最長片道切符を手に入れるまで。(最長片道切符の旅出発前)

つい先日、最長片道切符を発券してきました。夏の最長片道切符の旅で必要となる大事な大事な乗車券です。今回は、この最長片道切符を発券するまでの流れを書きたいと思います。なんてったって、1枚7万円以上もする高額な乗車券を購入することなんて、今回が最初で最後でしょうからね。

これから最長片道切符の旅に挑戦しようとしている人に向けて、需要はあるのかわかりませんが、割とつぶさに発券までのプロセスを書いていこうと思うので、ぜひ発券の際は、ご参考にしていただければ幸いです。

まずは発券に当たり、前提の知識について整理します。

鉄道にあまり詳しくない方でも、感覚的にJRの好きな駅から好きな駅まで乗車券を購入することができることくらいなら知っているでしょう。そして実は、JRの切符は全てオーダーメイドで作ることが可能で、駅と駅を結ぶルートを自分の好きなように指定できるのです。

例)都区内から都区内へ中日本をぐるりと経由する乗車券

例えば品川から新宿に行くために、山手線に乗れば198円で行くことが可能です。

山手線で20分。

しかし、品川から新宿まで、東海道線で名古屋まで行って、きしめんを食べ、中央本線で長野県の車窓を楽しみながら帰ってきたらどうなるでしょう。実はこの場合にも、乗車券の発行が可能で、距離に応じて運賃が変動しますから、乗車券のみで10670円となるのです。

在来線で行っても1日で東京~名古屋を往復できる。

そこで、オーダーメイドで切符を作ってもらうには、その経路を明記した紙が必要となるのです。今回、発券してもらう切符は、日本全国に張り巡らされたJRの路線図を可能な限り遠回りするようにルートを辿るわけですから、経路が膨大に長くなってしまうので、準備段階からかなり気合を入れないといけないのです。

発券依頼前の準備

ということで、早速、みどりの窓口に行って「最長片道切符を1枚ください~」と注文しに行きましょう。嘘です。そんなことを言ったところで、最長片道切符という商品が売られているわけでもないので、怪訝そうな顔をされるだけでしょう。複雑な切符を購入するわけですから、そんな簡単な話ではありません。発券には、入念な準備が必要となるのです。

発券するのに必要となるのは、学割証と全ての経路が書かれた紙の2点です。この2点と少しの勇気と知識さえあれば、みどりの窓口で誰でも簡単に最長片道切符を発券依頼することができます。

学割証は、通常通り、100km以上の乗車券を購入する際に適応できます(今回は余裕で100kmオーバー)。大学で発行して「稚内~肥前山口、経路は別紙参照」の片道乗車券を購入するとして用意すればよいのですが、大変なのは、別紙として用意しなければならない経路の書かれた紙となります。


それがこちら。

今回、自分で用意した経路の書かれた別紙は、なんとなく味を出すために、全て経路を手書きで書き出しました。しかし、経路が伝わればよいので、別にWordで作成して印刷したものを持って行っても問題なく発券してもらえますし、なんなら地図上にルートをなぞった紙を持って行っても対応してくれるでしょう。


みとりの窓口で発券依頼

世界一の駅で注文する。

6月19日、日曜日。案の定、昼前の新宿駅東西連絡通路は、いつも通り人でごった返しています。学割証と経路が書かれた紙をもって、みどりの窓口へ入りました。以下、窓口で繰り広げられた会話です。

最終のルート確認。とにかく入念に。頭の中に叩き込みます。

「次の方、どうぞ~」と呼ばれて、窓口に持ってきたものを提示します。
「あの~、学割証使って、多経路の乗車券を発行したいのですが。」
「はいー。期間はいつからにしますか?」
(まさかの実習中の方だった!)
「8月の1日からでお願いします。それで、経路が複雑で、これ通りに作ってほしいのですが。。」
(経路の書かれた紙を差し出す)
(5秒ほど硬直)
「こ、これは、少々お待ちください汗」
(ベテランの方が出てきて、経路の書かれた紙を見て、全てを察する)
窓ベ「これだとちょっと今日中に発行することができないので、一度コピーを取らせていただきますね。」
「もちろんです!」

(数分間、コピーのため待機)

窓べ「お待たせいたしました。それでは、今から経路の確認を致します。」
(日本全国の路線図が印刷された紙を、おもむろに取り出す)
窓べ「では、稚内から始めますね。(マーカーのキャップを外す音)」
(約30分かけて列島縦断。地方が変わるごとに、確認が入った。)
窓べ「んで、最後、早岐から肥前山口ですね。」
「はい、ありがとうございます。こんなに長くてすみません。」
窓ベ「いえいえ、大丈夫ですよ(ニコニコ)。学割証は、また支払いの時に確認いたしますので、そのときにお持ちください。」
「わかりました。」

窓べ「それでは、1週間ほどしましたら、お渡しの準備ができると思うので、こちらにお名前と電話番号をご記入いただいてもいいですか。」
「はい!」
(記入)
窓ベ「お電話かけても、ご都合悪くない時間帯はいつでしょうか。」
「夕方から夜にかけてですかね。21時まででお願いします!」
窓べ「かしこまりました、それでは7月1日以降で連絡しますので、受け取りに来てください!」
「わかりました。お手数おかけします。ありがとうございました。」

こんな感じです。時間が時間だったので、後ろに続く列が絶えず続いているのが少しきまづかったですが、さすが世界一の乗降客数を誇る新宿駅のみどりの窓口です。窓口が5,6こあったので、そこまで長蛇になることはなく、スムーズに対応されていました。

最初に案内してくれた新人の実習中の方は、次々にマーカーで線が引かれる日本列島の地図を見て、「一体この男は何をしようとしているんだ」と唖然としていたような気がします。ベテランの方は、すぐさま裏から「多経路の乗車券発行のマニュアル」的な紙を持ってきて、そこに記載されている順序に従うように発券依頼を受けてくれました。

ひとまずこれで、発券依頼は完了です。いつもは青春18きっぷで全国飛び回っていますから、このように乗車券を購入するというのは、未だに緊張します。完成するのを待つことにしましょう。

JRから電話

発券依頼から1週間以上たった7月3日、日曜日の夕方。「電話まだかな~」と思っていたちょうどその頃、新宿駅みどりの窓口から電話がかかってきました。

「こんにちは、新宿駅みどりの窓口です。先日、依頼されました切符の発券準備ができまして、連絡させていただきました。」
「ありがとうございます。よかったです。」
「何点か、確認したいことがございますので、お時間の程、数分間になりますが大丈夫でしょうか?」
「はい、大丈夫です。」
「購入される経路に不通となっている区間が2か所ございまして、根室本線と日田彦山線の区間なんですが。」
「根室本線の新得~東鹿越間と、日田彦山線の夜明~添田間ですよね。代行バスが走っている区間ですね。」
「その通りでございます。そこで、その区間を理由に切符の再発行することができなくなっておりますので、ご了承ください。」
「わかりました~」
「では、何日の何時ごろ受け取りに来ることができますか?」
「それでは、次の水曜日の夕方あたりに受け取りに行きます。」
「かしこまりました。受け取り場所は、この前と同じ地下のみどりの窓口にしますか。」
「じゃあ、そうします!」
「ありがとうございます。それでは、水曜日、お待ちしております。学割証を忘れずにお持ちください。」
「かしこまりました。ありがとうございます。」

発券を依頼した窓口の人とは、違う人だったので、おそらく新宿駅のみどりの窓口の中で「最長片道切符を購入した客」として僕のことが共有されていたのだと思います。もちろん「最長片道切符」という言葉は非公式なので、あくまで会話で用いるときには「多経路の乗車券を購入した客」とただしていました。

みどりの窓口から電話がかかってくる、ということも一つの新鮮な経験で、何か特別な感じがしました。また、JR東日本の方から「根室本線」「日田彦山線」という言葉が出てきたのも、自分的にはゾクゾクしました。

みどりの窓口で受け取り

来る7月6日の夕方、再び新宿駅の東西自由通路にあるみどりの窓口に戻ってきました。待望の最長片道切符を受け取ります。経路の確認と支払いを済ませ、4枚もの別紙が括りつけられた乗車券を入手しました。

有効期間は8月1日から56日間。まさかの4枚に分けて経路が記される形式になっており驚きました。お値段は学割を効かせて75190円。これだけの値段がする乗車券が、いざ自分の手に渡ると、自ずと果てしない長旅の現実味が出てきて、ついに買ってしまった感がすごかったです。

学割で2割引きされているので、実際の値段は9万円を上回ります。鉄道にあまり詳しくない方からしたら、「こんなのが乗車券なのか。」と仰天されるかもしれませんが、小さな緑の紙が出札補充券、略して出補しゅっぽと呼ばれる紙で、その紙のまん中あたりに経由地を記入する欄があるのですが、今回は経由地が膨大のため、別紙に印刷された経路が書かれた紙が4枚ホチキス止めされているという形式になっているのです。

何より、このような煩雑な乗車券の発券をしてくださった新宿駅みどりの窓口の皆さんには、お世話になりました。大変深く御礼申し上げます。この乗車券を全て完遂して参ります。

旅のスタートは7月30日。東京を出発して稚内へ向かうことから始まります。

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