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"The LEPLI" ARCHIVES-47/ 「ある友人への手紙。 巴里、オムコレクション'12-S/Sから、 一つの時代を閉じる時?」

文責/平川武治:
初稿/2011年6月25日:

”家の外にないものは どんなに遠くに行ってもない”、
 ”たいせつなものはもうすでに持ち得ている”

 ー映画”オズの魔法使い”の主人公、DOROTHYの言葉。

 やはり、『僕たちの世代が、あの時。』と言う感が拭いきれずに
巴里へ来ても考え込みます。

 今回のこの企業事故は僕たち日本人がこの21世紀と言う時代に
享けた”神の啓示”。
 確実に”新しさ”が変わり又僕たち、体験者が変わらなくてはいけないと。
僕たちから”世界へ発信出来る”ものが、ここで初めて見えて来たはずです。
 ここに僕はこれからの日本の若い人たちの可能性を観ております。
『しってしまった事に対して、何をし無ければ!!』と言う
こゝろの在り方が大切です。

 “新しさが変わる”と言う事は
ただ、今までのような見えている部分だけではなく、
当然ですが、『こゝろの在り様』が変化する事です。
 この変化を感じた”こゝろの在り様”を
どのようにそれぞれが今後の生業に対して『行為』してゆくか?
 僕は歳を取ってしまったからなのでしょうか、
『自心の、こゝろの在り様』を自分の行為にする事に徹したいと。
 そのためにはどのようなことを学びどのような時間を過ごすべきか?
どのような人たちと関係性を持って行けば良いのか?
何を美しいと感じられればいいのか? 
 現代における“新しさ”が変わる事とは、“モダニズム”が変化する事。
即ち『近代』が変わらなければと言うまでの発想が在ります。
 根幹の『近代性』が”あいまいさ”に変わってゆかない事だけを
祈っています。
 曖昧さが継続すれば、またあのような事故が起ります。

 このような視点で今回のコレクションに接していますが、
この答えはなかなか、すぐには出難いもの。
又、出す事に躊躇してしまう事も。

 ここに『勇気ある決断』が必要ですね。
しかし、ここに確実に、僕たちの今回の体験が
新たな可能性を産み出せると言う『こゝろの在り様』が先ず、必要です。
 これらが感じられる日本人デザイナーたちを捜して、対話してゆく事、
これが僕が言う『イエローマインド』へ繋がってゆくはずだと言う
問題意識を持って。

 コレクションは如何ですか?
僕が読んでいる、『ユニフォーミズム』は来ています。
この新しさは昨日のCdGにも観られました。
2シーズン続きこの発想も今回はソリッドになっています。
アイテムはユニフォームから、
そこへあてがう素材とディテールは女性ものを。
 これによって、いわゆる、『女』『男』の世界観
即ち、“femme object"や“homme object"という
モードが持っていた変わらぬ、解り易い20世紀までの
使い古したコンセプトが
これからは”Hummen Object"へ、”ジェンダー”の彼方へ
生まれ変わるでしょう。
 男、女だけど、人間としてと言うまでのチャーミングなポジティフな
僕流には“新-当たり前主義”が始るでしょう。
 これが”ポスト-ジェンダー以後”の
作り手が無節操に、無教養に、何の謙虚さも無く
学びのこゝろを待たない
ただ、解り易い”下心”を持っただけで
ファッションシーンに関わって来た若者たちが多くなった
この10年間程を批判する僕の新たな眼差し。

 母性的なるフォーカスが必要なので、 
女性デザイナーの方が巧いでしょう。
 ”穏やかさ、優しさ、おおらかさ、安心感、コージー感
そして、カッコいいよね!!着てみたいよね感”が大切。
 もう一つ、このユニフォーミズムは或る意味で時代への逆流化。
元々、アメリカのカジュアルファッションの育ちのボキャブラリィーは
”ユニフォーム工場”から始ったファッション産業。
あの、ブルックスブラザーズにしても
ミリタリーや作業服ユニフォームの工場が母体でスタートしたアパレル。
 ここには、ユニフォームの美しさの一つ、
『サイズ』によってデザインされていること。
既製服においては、”サイズ”が持っている美徳の一つに
この美しさが在るでしょう。
 ここにはモデニズムの難しさ,技術の問題もありますね。
ユニフォームの機能美はこのサイズ観から生まれているものの一つ。

 これも、昨日のCdGには在りましたね。
スーツ、ジャケット、女性もの的なスプリングコートなどにこの美しさが。
ディテールのこなし方にも最小限の女性らしさを加えていました。
安心さや優しさのアイテムに“パジャマ”が使われていたのも
嬉しいまとめ方でした。
と言う事でやはり、僕にはいろいろ勉強になった
昨日のCdGのショーでした。

 ジュンヤは少し安直でした。
が、彼がきっと、言いたい”手の温もり観”や
“庭仕事が癒しや愉しみ”を与えてくれるなどの、
“新-当たり前主義”なコレクション。
 きっと、彼の実家が郡山ですから被害もたいへんだったのでしょう。
コレクションどころではなかった状況が裏に読めました。

 他では、R.オーエンのメンズはここ数シーズンとても好きなのです。
時代が読めます。彼の世界観でカッコ良く出しています。
 今日のANNと今夜のラフがどのように出るか?
急遽、ロマン君のコレクションが、”ロマン+ニコラ”によって、
”シン・ミュグレーコレクション”になってしまった。
ロマン君の時代に振れるあの感性は好きです。
VISVIMの”BORO"に影響をされたコレクションも、
タイミングが良かったのか、時代の読み方が鋭かったのか?
とても穏やかな、変わらぬおおらかさを感じさせるものでした。
幾つかのメゾンで“ハリラン”や”クリストファーネメス”を感じる事が多く在りましたね。

 日本人にしか出せない『ポスト-原発事故』の
新たな「こゝろの在り様」をどのように
例えば、”もののデザイン”へ落とし込めるか、
期待している僕です。
 僕たち、日本人が持っている
性格、起用さ、勤勉さと真面目さとポジティフさ、
それに経験と使って来たお金を持って、
今こそ、大いにそれらを使って世界へ発信して行くべき
いいチャンスが今という時代観です。
 これは本当に僕たちが
それぞれの『知ってしまったこと』を持って
”白人たちの世界”へプレゼンテーション出来る
僕たちだけの素晴らしいチャンスと可能性であると認識しましょう。

文責/平川武治。
初稿/6月25日朝、ST.-CLOUDにて。

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