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「もうかる漁業」の末端にいる鮨職人


運営母体の会社は、漁業コンサルタントをしている。といっても、どういうコンサルをしているのかは、わからないし、そもそもコンサルタントの定義が、僕にはわからない。

わかっていることは、仕事相手が漁協だったり、役所の水産化だったりすることだ。国がどういう方向で「漁業」を捉えているかがわかるはずなので、それは大変勉強になる。

今、とある産地から、会社経由で魚が届くのだけれど。全くもって、いい状態じゃない。保冷剤に魚を直当てしてるし、魚は重なっているし。魚種もごっちゃごちゃで、この前はアオリイカの墨で、発泡の中身の氷水が真っ黒になっていて、魚がその中に浸かっていた。

魚屋さんが発送するには、全く考えられないやり方だ。

もう4回くらい届いているけれど。毎回「釣りずきのおっちゃんが、遠くに住む親戚に魚を送っている」ような感じ。というか、釣り好きで魚好きなおっちゃんだったら、もっとちゃんと管理をする。


「あぁ、さすがプロの仕事だなぁ」と感じることが全くない。

この前来た、真鯛は市場で3日も売れ残って「これ、あげるから持って行って」というような状態だった。

(内臓が溶けて、身に色と匂いがうつっちゃってる。)

高くなってもいいから、魚屋さんを通して欲しい。なんで、わざわざ漁協が直販をしなきゃいけないのかもわからない。

状態を見れば「本気で美味しい魚を届けたい」という気持ちじゃないのは明らかだから、可能性があるとしたら「やらないと補助金がもらえないから」とかそんなんじゃないかなと思った。

「社長、これって、あれでしょ?こういうことやってますってやらないと、補助金つかないからやってんじゃないですか?」という話をしたら、全くその通りだった。

今、水産庁は「もうかる漁業」という事業政策を取っていて。


漁協は直販で、一週間に一度くらい、こういう魚を送って報告すると、その「もうかる漁業」の事業の一環ということで、予算がつくのだ。結果はどうであれ「新しいことやってますよ。頑張ってますよ。送ってますよー!!!!」ということが、大切らしい。結果はどうであれ!!!

こんな消化試合に付き合う時間はないんだけどな。

もちろん「もうかる漁業」の助成金を使って素晴らしい魚を送っているところもあるでしょう。でも結局、事業内容の審査も数字しか見ないだろうし、品質があがっているかとか、そういうところは悲しいかな、気にしていないようだ。



(せめて、せめて!!氷と魚はそれぞれ、別の袋に入れて欲しいと言ったら。魚は袋に入ってたけど、口が空いてるから結局水が入って、魚の血が回って血生くさい水に使った魚になって届く。)

だから、例えば、もし僕がその産地にいき、市場に通い、いい魚を見つけても、そこから買うことはない。あくまで「漁協が、新しいことして、直販頑張ってますよ」というカタチが大切なのだ。

その「もうかる漁業」は、生産者にも影響している。
何億とかかる、新しい船をつくるのに、その助成金は「もうかる漁業」の一環として、お金がおりる。漁協が窓口となり、その助成金をつかった船が取って来た魚は(はじめの数年間)、すべて「漁協のもの」という定義になる。言い方を買えると「漁協の船」でとってきた「漁協の魚」ということなのだ。ガッチガチの社会主義か笑。

そして、「漁協の船」でとってきた「漁協の魚」その行く末が、こんな状態の魚。
そもそも、そのコンサルを請け負ってるのが、母体の会社だとしたら。結局、能無しなのは、コンサルしてる、この会社じゃねーのか??って話になって、結局、長い目でみたら会社の信用もなくなるよね。 

もうかるかどうかは後からついてくるから、とりあえず「よろこばれる漁業」を考えて欲しい、まじでー。誰かによろこばれないと、もうからないよね??

この前は、穴子、アマダイ、真鯛、マトウ鯛、アオリイカ。5種類きたけど、メニューに入れた、というか、入れられる状態だったのはアオリイカだけ笑。送料込みで13000円。アオリイカは3ハイで2キロあったので、1キロ6500円のアオリイカを仕入れたと同じ結果だ。

まぁ、コンサル先なので、その産地からは助成金経由のコンサル料が入るんだろうし、その一環だと考えると数字はマイナスじゃないんだろうかね。

結果、もろもろのしわ寄せがくるのは、末端の僕で、それを提供して、がっかりされるのも、僕だ。「美味しくない」と思われるのも僕なので、それは食い止めなければならない。

結果、選択肢は「つかわない」ということになる(すり身にして使ったけど。)。原価が上がり、行く行くは「なんでこんな原価になってんの?」って時がくるかもしれないけれど。まぁ、そうなったらそうなっただな。

ここで働くと決めたのは、僕で。
いつ辞めてもいいと思いながら仕事しているのも、僕だ。自分にできることを、毎日やって。それで、「この環境なら、本気でできない」とおもったら、新しい環境をつくるしかない。




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