さしすせそサイン【毎週ショートショートnote】

彼は水金の夜に私の部屋へやってくる。そして二人のお気に入りの音楽をかけ、私が心を込めて作ったご飯を食べて、気になっていた映画を見る。その後に何をしているかは秘密。そして彼は夜遅く帰っていく。私はその帰っていく彼の車を、窓から見送るのが習慣だ。

彼は見送る私を確認し、車に停めてブレーキランプをアイシテルと五回点滅させる。

私はまだ部屋にかかっているドリカムを聴きながら、彼の余韻に浸るのだ。

付き合って三年経った頃、私は彼にプロポーズをした。しかし彼は浮かない顔をした。

「なんで?愛してないの?」
「愛してるさ」
「じゃあ、何で?毎回アイシテルってサインを送ってくれていたじゃない」

彼は頭を抱えた。

「違うんだよ。いつか気づいてくれると思っていたんだけど。ア・イ・シ・テ・ル、じゃないんだ。さしすせそ、だ」
「どういう事?」
「君の料理の味がね。調味料を上手に使って欲しいんだ」

私はまばたきで、ジャ・ア・ツ・ク・レとサインを送った。

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