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モチベーション変革で売上とヒトを育てる

売り場のメンバーのモチベーションに変革を起こせば、売上は必ず上がる。

初めて店長をした店舗で年間予算を半年で達成して退店危機を逃れた時も、
ヒトの問題で年間3億の売上がたった1年で2億まで落ちた店舗を立て直した時も、関西にエリア進出したばかりの会社に転職して拡大した時も、
リーダーとしての取り組みはあまり変わらなかったのでは?と今までを振り返ると思う。

2人しか部下がいなかった時と、100人の時とその軸はあまり変わらない。

『売上が悪い』ということは、顧客の期待以上を提供できず、顧客が離れているということ。リーダーの多くは売上を上げようとする際、『お客様の期待を超える』ことを目指す。

そして「あなたから買いたい」を目指してスキルの教育をする。
「この店で買いたい」を増やそうとVMDに取り組んだり、内装や差別化したサービスの提供に躍起になる。

しかし、そんなことでは応急処置でしかなく、短期的な売上にしか繋がらない。

お客様の期待を越えるためには、「あなたから買いたい」の前に「あなたから買いたくない」、「この店で買いたい」の前に「この店で買いたくない」を徹底的に排除することの方が重要。

そしてそれ以上に大切なのは、売り場のメンバーに「このヒト(たち)と働きたい」「この店舗で働きたい」と感じさせ、『この店舗(この会社・ブランド)で働いていることを誇りに思える環境』を作ること。つまりは不快な環境を取り除くこと。

メンバーが売上のためではなく、お客様のこと、チームのことを自然に自分の心で考えて判断をして、行動できる心理的に安全な状況を提供することがリーダーとして最も重要な仕事の一つである。

そこには、莫大なコストや特別な能力は必要ない。
必要なのは根気強さと理念や使命のようなものをリーダーが持ち続け、メンバー1人1人を信じて向き合うこと。
メンバーを信じて向き合うリーダーの姿勢が、メンバーのお客様を大切に思って向き合う姿勢を育てる。

とはいえ、いきなり新しいブランドや、崩壊している店舗に入って改革を起こすことは、スーパーハードモード。

どのようにすれば、崩壊している店舗に新参者として入っても、うまくチームを再構築することができるのか?
そして、その過程でメンバーの心情や行動が変わっていくのか?

1、シェアド・リーダーシップ

実務者として心がけていたのは「関わる全ての仲間の模範的なフォロワー」であること。


『シェアド・リーダーシップ』という概念を知り、私が行ってきたのはコレだと感じている。

シェアド・リーダーシップ(shared leadership)」とは、職場やチームのメンバー全員がリーダーシップを発揮すること。
つまり「共通の目標」に向かって、自分らしさや自分の専門性を活かしながら、お互いに良い影響を与えあって前に進む状況のこと

新参者として店舗に入る場合、もともと店舗で頑張っているメンバーにとっては、歓迎というよりも「お前に何がわかるんだ!」と内心思っていることがほとんどで、おもむろに拒絶されることもあった。

正直言って「お前に何が分かるんだ」は正しい。
私は、昨日まで部外者なので「分からない」。

なので、分からないからこそ、『シェアド・リーダーシップ』が力を発揮する。
間違っても『トップダウンのリーダーシップ』で変革を行うことはない。危険すぎる。(※正しくは、トップダウンで『シェアド・リーダーシップ』を行うと決めているのだけれど)

例えば、百貨店のキャリアブランドから、路面店の海外メゾンを取り扱うセレクトブランドに異動し、課題店舗の改善に取り組んだ時は何も分からなかった。

メンバーは私よりオシャレで美しいビジュアルを持ち、優れた感性でVMDを作り、セレクトブランド一つ一つの知識も深く、そして何よりそのお店のお客様のことを知っている。

私が彼女たちより優れてる可能性があるのは、店舗運営の知識とマネジメント力だけだった。
なので、全面的に新人同様にメンバーに対して「教えてください」の精神で向き合った。

しかし、私は新人ではない。教えてもらいながら、私が持っているものを返す。
例えば、優れた感性でVMDを作るメンバーに、データ分析を行いどのアイテムをどのような目的で魅せてほしいか?を提案する。

接客ではブランド知識は浅いが、お客様心理は分かるので、不安解消のフォローには積極的に入り、メンバーの個人売り上げをあげる。

決して上には立たず、メンバー1人1人が得意なことをより得意と感じ、さらに成果として現れるアシストをひたすら行う。

分からないことは完全フォロワーに回り、彼女たちが輝くためのアシストをしながら、そばで情報を収集し、店舗の改善案を考察する。

メンバーにとって、私が店舗の仲間に入ってきたことで抵抗していた部分を、「あれ?この人は敵じゃなくて味方なのでは?」に持っていく。

VUCAの時代。要はよく分からない時代になったきた。
誰も正解は分からない。

特に、正解がひとつに決まっていなかったり、作業が固定的な事業ではなく、販売のように正解が多数ある仕事においては、このシェアド・リーダーシップは最も有効である。

シェアド・リーダシップを用いて、メンバー1人1人の特徴を理解しながら、情報収集し店舗改善案を練る。
そして、1on1で徹底的にエンパワーメントで自立したメンバーを育てる。


2、店舗で改善可能な「ソフトのS」を集中改善

店舗改善の手順は、組織要素7Sでいうならば、店舗でコントロール可能な
ソフトのSを取り組む。

7S…組織を考える上で必要な7つの要素(経営資源である)

ハードのS
…経営者が比較的短期間に変更可能でコントロール可能
・組織構造(structure)…組織階層、上司部下の関係
・システム(system)…給与制度、評価システム、資源配分、経営管理システム
・戦略(strategy)…競争優位の源泉、優先課題、経営資源配分

ソフトのS
…働く人々によって決まる。通常、簡単に変更できずコントロールしにくいもの
・スキル(skill)…社員や企業が持ってんる特定の能力、育成、研修
・人材(stuff)…採用、配属、リーダーシップ
・スタイル(style)…組織文化
・共通価値(shared value)…経営理念、価値観

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経営者から見るとハードのSがコントロール可能であるが、現場の人間にとっては、ハードのSの改善障壁は高い。

店舗やエリア、部内で改革可能なのは「ソフトのS」である。

同じ会社や部署内でもリーダー次第で大きく異なる場合も多い。
ソフトのSの整合が取れているか否かは、皆さんも自分のチームと違うリーダーのチームを想像すれば、リーダーの手腕がソフトのSの整合性にどれほど影響を与えるのかは理解できるに違いない。


①共通価値(shared value)…経営理念、価値観

まず、手を加えるのは「共通価値」をメンバー間で作ること。
ほとんどの場合、課題店舗には共通価値がない。
共通目標は売上やそれにつながる行動目標(Do)ばかりで、マインド的なもの(Be)がない。

つまり、明確に評価できる目標ばかりで、なおかつの目標を達成できないことで自己効力感に欠け、次第にお互いの悪い部分ばかりが気になるのだ。

「共通価値」を作ることは、お互いの一挙手一投足に向けれた視線をそらし、同じ目標に向けることで同じ方向に向けさせる効果がある。

また、「共通価値」を概念的な「在り方」にすることで、KPIでは測れない目標…つまり売り上げに左右されず、毎日自分に「○マル」をつけることができるようになり、自己効力感をあげることが可能となる。

もちろん、リーダーとして、売り上げ以上に共通価値につながる行動ができた時は認め、できていない時は正す。
一人一人の「律」の集合体である「チームの律」をしっかりと作り、実行させることが重要なのである。


②スキル(skill)…社員や企業が持っている特定の能力、育成、研修

メンバーがリーダーのことを少しづつ信頼し、みんなの共通価値が見つかり、同じ目標に向かい始め、少しずつ空気が変わってきたところで、知識やスキルを身につける環境を提供する。

まずは私が講師をするのだが、ゴールはメンバー一人一人が自分の強みを生かした勉強会をできるように育成する。

以前のnoteにも書いたけれど、人に教えることができて一人前。
言いたいことが伝わらない経験が内省と客観視を育て、ヒトを成長させる。

また、自身がチームに貢献していることの実感を与え、自分の得意や強みを見つけ、自己効力感を育てるきっかけにもなる。

そして、リーダー自身の負担も減るし、部下から学ぶこともできる。
しかし、任せて任さじ。意味ある失敗以外はさせてはいけない。


③人材(stuff)…採用、配属、

多くの場合、課題店舗の場合ヒトの問題が多く、人材不足で採用が必要な状態であることが多い。
かつて担当した店舗は、本部の配属に不満で、新しく配属された店長をことごとく嫌がらせをして辞めさせるという状況だった。(もちろん、私も例にならって同じ目にあった気もするが、、、今思えば、貴重な経験ということにしておこう。)

店長でさえ耐えられない劣悪な環境なので、新人さんは続く訳がない。
なので、人員補充の目的だけでヒトの採用をしない。
どれだけ店舗の人員が足りていなくても、
「充分に人は足りている。それでも欲しい人材か?」というスタンスで採用活動をする。

採用以上にメンバーの退職は、リーダーを含め全員のモチベーションに影響を与える。採用で簡単に店舗の問題を解決しようとしてはいけない。

実は、シフトやオペレーションの改善で人員補充しないままでも、運営可能になる場合も多い。

また、他店舗へのヘルプ交流・合同勉強会なども増やす。
自分たちと違う価値観や文化を学ぶことで、今までの自分たちの在り方に疑問を感じたり、肯定できるきっかけとなる。


④スタイル(style)…組織文化、風土

ソフトのSの改善として①〜③を行うと、3ヶ月くらいで組織文化はかなり変わる。そして、売り上げは伸び始める。

メンバーは同じ目標を見ながら、店舗と自分のことに集中し始める。
今まで、ルールだからやっていたことを、やりたいという自分の中から湧いた内発的動機で動き始める。

その頃には、仲間の揚げ足や買ったくれなかったお客様のこと、環境が悪いと言っていたメンバーたちが少数派になり、
多くのメンバーが店舗のことを考え、どうやったら買ってもらえるのかを考え、外部環境を踏まえながら、自分たちの武器で行動をするようになる。

3ヶ月くらいで、1度大きな成功体験をうむことが多く、爆発的な成功を体験させることができれば、あとは自走し始める。
(しかし、トラブルはあります。チャレンジしているので。でも、トラブルの質は格段に良くなります。)


3、実績を作りながら、上層部に「ハードのS」の改善提案

ハードのS…経営者が比較的短期間に変更可能でコントロール可能
・組織構造(structure)…組織階層、上司部下の関係性
・システム(system)…給与制度、評価システム、資源配分、経営管理システム
・戦略(strategy)…競争優位の源泉、優先課題、経営資源配分

前述した通り、ソフトのSは現場でコントロール可能だが、ハードのSは全社レベルの課題であり、経営層の判断によるのでコントロールは難しい。

しかし、現場の問題を解決する中で、ハードのSの課題に気づくことは多い。現場の不満の発端は整合しないハードのSにも課題があることが多い。

戦略が現在の外部環境にあっていなかったり、評価制度に透明性や納得感がなかったり、閉鎖された組織構造であったり。。

リーダーとして、現場でしっかりと実績を積みながら、情報収集をし、健全な提言を本部にあげていく。

どちらか一方だけでなく、現場でソフトのSの改革を起こしながら、水面下でハーノのSの改善提案を全社目線で具体的にあげていくことが重要である。

また、現場の意見を本部に提言をしている姿は、メンバーの心を動かす。
不満を言うのではなく、不満があるなら自分が動くのだとのだということを知る。
そして、自分たちのためにアクションを続けるリーダーについていきたいと思い始める。そしていつか、自分もそんなリーダーになりたいと思う。


4、重要なのはオーセンティックなリーダーであること

メンバーがリーダーに求める条件は自分よりスキルがあることではない。
部下が上司の求める最重要な条件は、自分に対して自分がよくなるためのアクションを試行錯誤してくれることなのである。

Googleの優秀な上司の条件
1. 良いコーチであること
2. ある程度部下に任せ、細かい管理をしないこと
3. 部下の成功と幸せを気にかけていることを態度で示すこと
4. 生産的で成果志向であること
5. コミュニケーションを良くとり、チームの意見に耳を傾けること
6. 部下のキャリア開発を支援すること
7. チームのために明確なビジョンと戦略を持っていること
8. 部下にアドバイスできる重要な技術的スキルを持っていること

試行錯誤できるリーダーになるには、自己認識力をあげることが必要。
様々な出来事に対して、「自分が正しい」と思うのではなく、物事に向き合い、内省し他者からのフィードバックにより「自己認識」を深める。

「まだまだ自分は足りないかもしれない」という危機感が、試行錯誤を繰り返す姿となり、より信頼されるリーダーを作っていく。

「メンバーをどう変えるか?」を考えがちだけれど、メンバーが変わっていくためには、それ以上にリーダーがどう変わるか?である。

メンバーを信頼されるリーダーに育てたいからこそ、リーダー自身が彼女たちが信頼できるリーダーで在る努力をし続ける。

理想のリーダー像があれば、自走することができるのだ。

まとめ

売り場の答えは売り場にある。
販売員の多くは、私がそうであったように「長期的な目標」や「ロジカルな思考」には乏しい。
だけど、「今を敏感に捉えて表現」することや、「感情に素直に反応」するチカラ、「創造的な思考」の能力はとても高い。

一度スイッチが入れば、凄まじいスピードで思考を巡らせ工夫することができる。

売り上げを上げるための答えは、現場にいる販売員が持っている。

売り場改善を行う際にしていたアクション
1、信頼して彼らが現場の課題を話せる心理的に安全な環境を作る
2、メンバーから出てきた課題を整理して体系的に現場に改善を加える
3、現場を変えながら組織を変えるアクションを起こす
4、リーダーとして、誠実に学び続ける

今回お伝えしたのは、売り場のテクニックというよりも、メンバーのモチベーションをあげるためのチーム作りのハナシ。

簡単な「HOW TO」はない。
だけど、課題店舗の多くは売り場のメンバーの中にすでに全ての答えはあって、その答えを導き出すことができる環境を整えれば、とても単純で簡単なこととも言える。



最後に…

しかし、商品が悪ければ、売れない。
従業員を満足させる、授業員が自信を持って販売できるものを作っているだろうか?ということも、前提として問いを置きたい。

お読み頂きありがとうございます^_^ 読む前よりもポッと心の温度が上がったとしたら、とても幸せです。 サポートは、note内での他の方へのサポートや、コミュニケーションの時間など、note内で還元させて頂いています!