しくじり_03

福岡のやばい父ちゃん  第8話 「岩男」

少し話ははずれるが

祖母にいいくるめられたものの

父ちゃんを配偶者として選んだ、母ちゃんもやはり変な人で

どこが変か?と言われれば、特に言えないのだが、少し常識がなかった

それはやはり、母ちゃんの父、つまり、私の祖父が類稀なる変人だったからだろう

まず、驚くのは働いた事がないのだ

私の先祖は昔でいう、長者であり
福岡の城戸という駅の周辺はほとんどうちの所有する土地だった

じいちゃんは、金がなくなるとすこしずつ、土地を売っていったのだ

典型的なごくつぶしである

母は働かない祖父に、なんで働かないのかなげかけると

祖父は

「金がなくなったら土地売ればよかろーもん、うっしっし」

と言ったそうだ

母が生でうっしっしという言葉を聞いたのは

それが最初で最後となる

売る土地も少なくなり

金に困った時に、とりあえず、売れ残りの土地に生えたタケノコを売ろうと
タケノコをほった

そして大量のタケノコをほってきた

祖父は途方にくれていた

売り方がわからない

と言い自分の部屋に行きそのまま寝たそうだ

母はこの時、小学生だったが

なんだコイツ

と思ったそうだ

また、無類の女好きで、家の近くに綺麗な女性を見つけると

白いタキシードを着て後をつけた

ちょっとお洒落なストーカーである

ちなみに祖母曰く、その求愛行動は成功したことはないらしい

三島由紀夫が好きで

日本刀をもった自分が表紙の

「政治家よ、読め」という

小説を自費出版した

内容といえば

今の日本がなぜ堕落したのか

延々と書いてある

中でも1番の悪は

ジーパンだという

女性がジーパンをはくようになり

今まで、着物で隠れていた体のラインが

ジーパンをはくことで腰の丸みがあらわになり

男性がそれに夢中になり

男性が働かなくなった

とある

もちろん、そんな事実はないだろうし

一度も働いたことがない人がそんなことをよく書けたものだ

その本は今でも実家に山積みになっている

早く絶版してほしい

それでも、祖父を嫌いになれないのには理由がある

祖父も父ちゃん同様、人を喜ばせることが好きだったのだ

夜、家近くの

城戸駅に忍び込み

ばれないように年始から

駅周辺にコツコツと

あじさいの種を植え続け

その年の6月頃

城戸駅はあじさいで満開となった

その何年後かに祖父は他界したが

変人が植えたあじさいは今も、福岡の山の中

城戸という名前の駅で咲き続ける


娘に甘いもの買います!