しくじり_03

福岡のやばい父ちゃん 最終話 「粋」

父はスピーチがうまかった。

「部下のB君は人柄もよく仕事もでき、見た目によらず、動物を愛する心優しい男です。」

「彼は特に馬が好きで、週末はいつも一面に広がる芝生の上を一列に並んで走る馬を見に行っていました。」

ギャンブル好きをお洒落に暴露し、笑いを誘ってました。

父はスピーチに引っ張りだこだった。

父が亡くなる5年くらい前だろうか、父は有馬記念で三百万を当てた。
父はバスを二台借り、町内の人と旅行した。

もちろん父のおごりで。

お金の使い方が、派手だった。

俺の若い頃は、1週間で30万使ってた、お前も1週間で使え。

30万渡されたが、3万使った時点で心が折れた。

そして

僕はバイトのシフトを少し減らした。

亡くなる一年前にも僕に十万円くれた。

現金書留の中に

「これが、最後」
とメモが入っていた。

よくこずかいをくれた。

僕は30を越えていたので別にこずかいなどいらなかったが、なんだかさみしかった。

葬式の日になった。

僕は喪服を着た。
喪服は持っていなかったので父にもらったものだった。 

何か不幸がある時は九州で起きるので必ずこの服を着ていた。

ポケットに手を入れると一万円入っていた。

普段父も着ているので、取り忘れたのだろう。

最後までだらしないなと思った。

何気なく一万円を見ると 

鉛筆で

「本当の最後」

と書いてあった。

「え?」

思わず声が出た。

父の最後のいたずらだった。

僕は少し泣いていたかもしれない。

娘に甘いもの買います!