スタートアップのデザイナーが考えるブランディング

スタートアップのデザイナーが考えるブランディング

製品リリース後のスタートアップでは、基本的な機能開発を優先しつつも、付加価値となる機能設計や情緒設計、ブランディングを将来的にどうしていくかも考えなくてはなりません。またブランディングはすぐに効果を発揮するものではないため、逆に数年後の為に今から考え、実行することも重要になります。

リリース後に浮かぶ課題

すでに市場でのブランドが築かれており、自己認知と市場認知に乖離が無い場合は問題ありませんが、まだサービスの市場認知がされていない、かつスタートアップのような起業家の強い想いで事業が立ち上がった場合、機能開発もさることながら、ブランディングにおいても創業時の想いを優先させるのか、市場分析から得られたニーズを優先させるのかで議論が巻き起こります。

起業家の強い想いで事業が立ち上がった場合、自分たちはサービスをこうしていきたい、こう見られたいという想いがブランディングにも強く表れます。しかし、製品をリリースすると浮き彫りになるのが、起業家・POの創業時の想いと現在の市場ニーズとの違いです。これにより想いとニーズどちらを軸にブランディングをしていくかが課題となります。

また、市場ニーズに関しても問題はあります。通常、自社製品の強みや、競合分析をすることで市場でのポジショニングが図れ、それをブランディングに活かすことが出来ますが、スタートアップが提供する今までに前例の無いハイテク製品においては、市場自体が不安定であり、機能開発同様、ブランディングにおいてもその方向性を決めるのに苦労します。

スタートアップでブランディングをやる理由

スタートアップの提供する製品はプロダクトの機能が一連のユーザ体験を満たすのにまだ十分ではないことが多く、主に付加価値の要素が大きいブランディングにそもそも気が回らないこともしばしばですが、サービスの初期段階でブランディングを考えることは、プロダクトの方向性やその上位概念である事業戦略にも大きく影響します。なぜなら、従業員に対するインナーブランディングも含め、サービス提供側が自己認知を深め目線合わせをして機能設計や情緒設計を行うキッカケになるからです。

また、アウターブランディングにおいても、ハイテク製品であること自体が差別化要因であった初期市場から、メインストリーム市場に向かう段階で、情緒設計をどのターゲットに向けて、どのように訴求するかを考え、規定することは、製品の市場浸透に大きく影響すると考えるからです。

スタートアップのデザイナーが考えるブランディング

では、初期市場における自社サービスのブランディングに必要なものは何かというと、起業家の「想い」と市場の「ニーズ」の2つを融合させることだと思います。

創業時の強い想いは、それだけで他には真似のできないブランディングの要素になりますが、主語が「自分たち」だけになる場合は危険です。世の中を変える・自分たちの製品が市場に受け入れられるためには、必ず自分たちの「ユーザ」はどうなりたいか、自分たちは「ユーザ」の自己実現のために何をサポートできるかを考え、それに寄り添いユーザと一緒に新しい世界を創るという姿勢が必要になります。

ユーザの協力無くして、事業者が目指す世界へは辿り着けません、しかし、そのユーザは事業者の提供する製品に興味があるわけではなく、自分たちがその製品を通してどうなれるのかに興味があります。この点については下記のMediumの記事が参考になります。

Medium:People Don’t Buy Products, They Buy Better Versions of Themselves

一方、ユーザの声を聞きそれに迎合することも違います。ユーザは未経験な価値を正しく評価すことは出来ませんし、現在のニーズを捉えるだけでは新しい世の中は創れません。また、ドライに勝つことだけを考えても、UXリサーチからまともな戦略を立てるだけでは、他の将来的な競合と似たような機能設計や情緒設計に陥り、結局は後から参入する資金力のあるビックプレイヤーに負けてしまいます

事業者とユーザが一緒になって実現したい未来と、それを市場での自社サービスのポジショニングとして活用し、他では真似の出来ない独自の想いから、他社とは違う視点で機能設計や情緒設計をして、ブランディングをしていくことが、スタートアップでの勝ちに繫がることだと考えています。

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