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小説版『ヴァサラ戦記』〜エイザン外伝〜/大輪の花①【少年漫画あるある】

序章

「エイザンよ。
花は散る為に咲くのか、はたまた咲く為に散るのか
どちらだと思う?」

「それは未だ私めにはわかりかねます。
ただ、一つだけ言えることがあるとすれば・・・
命を燃やして凛と咲く花は、一際美しい。」

「フッ・・・お前らしいな。
エイザン、貴様は散ってくれるなよ。」

「・・・殿。
私はヴァサラ軍〝武神〟エイザンです。
それでは・・・。」


時は〝大戦極時代〟(だいせんごくじだい)ー。
世界は永き戦乱の炎に包まれていた・・・。
いくつもの国々が互いの利益を貪り奪い争い、
人々は飢え、多くの血が流れた・・・。

これは動乱の世を治めるべく
奮闘した大将軍〝覇王〟ヴァサラと
その忠臣、ヴァサラ十二神将〝武神〟エイザンの
始まりの物語であるー。

後に語り継がれることとなるこの伝説は、
〝エイザン和尚〟の愛称で広く親しまれた
ヴァサラ軍一の人格者がまだ
国をも脅かす賊人〝山鳴り〟のエイザンとして
悪名を轟かせていた時代に
時は遡るー。

第一章「芽吹き」

1.「山鳴り」

〝大地揺れ 山鳴く時 その魔物現れたりー〟

〝山鳴り〟のエイザン。
人々は彼をそう呼び、恐れたー。

身の丈2mを超える巨体からか、
あるいは見るも恐ろしい鬼の形相からか
男はそう呼ばれるようになった。
彼が根城にしている山には
人っ子一人寄り付かない。
各地の盗賊や国の要人すらも彼の領地に
足を踏み入れようとしないのだ。
ただ、その山に在るのは青々と生い茂る木々や
見るも鮮やかな花々、どこからか聞こえる
涼しげな川のせせらぎと小鳥たちの歌声だけだった。
本来、誰もが目にすれば感嘆せざるを得ない
景色に違いない。しかし、その美しさとは
相容れない、閑散とした様子が
より一層この山の鬱蒼とした
おどろおどろしさを醸し出していた。

どうして彼は人々からこうも恐れられているのかー。
彼を語るにはその生い立ちから
振り返らなければならない・・・。

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