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1つの時代に2人のスター

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これほどまでにその決着に喜びと悲しみが
同伴する不思議な感覚に包まれた日はない。

那須川天心vs武尊

長年、格闘技ファンなら
いやそうでなくても世間が
待ち望んだ超特大ビッグカード。

これを語らずして何を語ろうか。
いやここ最近の格闘ウィークはどうかしている
村田諒太選手があのゴロフキンと激闘、
井上尚弥選手がドネア相手に超圧勝、
そしてついに同時代に現れた
キックのスター武尊と天心が激突した。
もうお腹いっぱいもいっぱい、
一回吐いてからまた何度も見て
吐いてを繰り返してもまた見たくなる
でも見たくない、そんな試合。

僕の格闘技の歴史は魔裟斗選手からでした。
K-1といえばヘビー級と言われるような
軒並み人気の超大型外国人やら
日本人・武蔵選手の健闘やらで
盛り上がっていた時代に
現れたミドル級のスター
〝反逆のカリスマ〟魔裟斗。
その華やかさと実力でK-1人気を引っ張ります。
ですがその道のりは決して楽ではなく
泥まみれで険しい道でした。
チャンピオンになったかと思えば敗れ、
そこからまた長いこと挑戦、挑戦の日々。
当時はサワーやブアカーオといった
これまた強い外国人選手がいて
魔裟斗は惜しくも彼らに敗れています。
ですが魔裟斗は一番辛い道を行くことが
一番成功の近道であると、常に
最大限の努力をし、そうしてついに
再び栄冠を手に入れるのです。
今、一番仕上がって一番強い、
もっと見たいと思わせているうちに引退する。
その言葉通り魔裟斗は引退試合
一度も勝てなかったサワーを完封するのでした。
そんなカリスマ性と生き様を貫いた姿を
魔裟斗は魅せたのです。
何を隠そうそれに影響を受けた世代
武尊や那須川天心。
ぼくら当時の格闘キッズたちは魔裟斗選手や
KID選手に多大なる影響を受けていたのです。
そんな魔裟斗選手が見守る中
両雄は拳を交えることとなる。

しかしここまでにも
二つの運命とも言えるドラマがあった。
2000年代を彩ったK-1の時代は終焉を迎え
一時期、格闘技を地上波で目にすることは
めっきり減った。ボクシングもやはり
全盛期に比べると放送は少なくなっていました。
現在YouTubeを拠点に知名度を上げ、人気の出る
格闘家は多いですがぼくら
平成ガラケーゆとり世代の時代には
そんな文化もまったく根付いていませんでした。
(HIKAKINはその点やっぱすげぇ)

こうした中、新生K-1が誕生。
深夜でしたが新K-1伝説なる番組があって
それを毎週録画して見てた大学時代が
本当に懐かしいです笑
何を隠そう中高と格闘技に憧れていた
僕もすっかり大学生になっていたのでした。
あの頃はまだまだK-1人気が
全盛期の半分もなかったような気がします。
それでも卜部兄弟や木村ミノルや城戸、
平本蓮やゲーオ、HIROYA大雅
小澤海斗に野杁山崎久保優太
そして武尊、さまざまな選手が名を挙げ
人気が着々と出始めていたと思います。
僕は渋谷の大学にいたので
代々木体育館で試合があるときは
学校終わりにしょっちゅう
見に行ったりしていました。
当時の印象は武尊は純粋に強くて
まだ今よりも若かったこともあり
とにかくパンチの強い
〝破壊者〟といった印象でした
その通り、武尊は勝ち星を挙げ続け
瞬く間に新星K-1を引っ張る存在になっていました
この頃はまだまだ武尊の方が
知名度も高く天心は他団体の強い選手
というイメージでしかありませんでした。

一方の天心も試合内容で魅せていきます。
ド派手で華麗な技の数々。毎試合ごとに
その名を確実に着実にひろめていきました。
僕が本当に顎取れそうになるほどビビったのは
RIZINでMMAのルールですら
勝利を飾ってしまうこと、さらにはタップまで。。
あとは学生時代ボクシングをしていたのですが
当時どうあがいてもこの人たちに勝てない
という全国区の有名選手の一人だった
エリートの藤田大和選手にも
勝ってしまったんですから。
身近で見ていた強くて恐ろしい選手を倒す天心は
じゃあどれだけ強いんだ、と
とにかくもう戦々恐々で衝撃的でした。
いやこいつぁ化け物だ、、、と
確信したのです。
その圧倒的な神童ぶりで彼もまた
あれよあれよとスターダムに駆け上がっていきます。
こうして格闘技に再び注目が集まっていきました。
待てよ。。。じゃあこの二人。。。

〝最強はどっちだ〟

二人のカリスマが生まれ
運命の歯車が動き出しました。

ただ、勘違いしてはならないのが
二人は天才であると同時に
天才級の影の努力をしているということ。
だからこそあれだけの実力と
この一試合に価値があったのです。
勝ち続けるというのは本当に難しいこと。
いままで新生K-1になってからも昔のK-1も
他の格闘技にしろ団体にしろ
多くの選手が出てはいつのまにか聞かなくなる
ということを何度も経験しています。
その中でも武尊は絶対的エースとして
君臨しK-1を引っ張り続けていました。
天心もロッタンや堀口といったドデカすぎる
ビッグネームを打破し爆発的にその名を
広げていくのでした。
これがどれほどすごいことか。

昔、ヘビー級の武蔵選手がジャンクスポーツで
僕、努力の天才なんて言われてるけど
天才だったら努力しませんから!笑
って語ってましたがいやいやそんなことない。
あなたも十分ぼくからしたら天才です。
その上で努力家なんです。だからあなたも
日本人としてここまで戦ってこれたんだ!
と僕は勝手に思っていました。
それだけ結果を出すための
努力を続けることには
尋常じゃない才能が必要だと思うんです。
だから武尊・天心はすごい。
周りに何を言われようが結果を出す。
ただ勝つのではなく圧倒的に。
その二人が戦うんです。
手に汗握るどころじゃないでしょうよ。

最初は小さいリングだったでしょう。
観客も少なかったでしょう。
それでも、それだからこそ二人は勝って勝って
勝ち続けた。もがき苦しみながら汗水流して
そうしてなんと5万人以上が集う
東京ドームにまでたどり着いた。
歴代最高記録の視聴者数、興行収入
多くの記録を塗り替える
この一戦は日本中の注目の的となった。
もう既に映画よりも映画です。

そんな対戦、いや大戦はというと
勝負の世界にはつきものですが
残酷なんです。
特に格闘技の世界は顕著だと思います。
その全てがその体、その背中に
のしかかる。
勝てば天国負ければ大地獄。

僕はボクシング部時代、監督さんに
こう叩き込まれてきました。
『リングに上がれば侍の一騎打ちと同じだ』

僕らはこのリングに上がるのに減量し
文字通り身を削り、生活の全てを注ぎ
血反吐のような地道な練習を繰り返し
ようやく整った舞台に立つことができます。
そこでの真剣の斬り合いはまさしく命懸けです。
勝てば全て報われます。いままでの苦労も我慢も
全て勝利が意味合いを変えてくれるのです。
ですが負ければ一瞬で全て失います。
負け、それはつまり死なのです。
だから命懸けの一騎打ちなんだと、
監督さんはまっすぐな目で教えてくれました。
これに関して武尊選手も
まったく同じことを言っていました。
並々ならぬ覚悟が必要で
並々ならぬ重圧が全身に重くのしかかります。

本当に勝負の世界は残酷です。
だから僕は見たいけど見たくなかった。
今日この日どちらかが敗者になる。
全てを失ってしまう、
そんな思いに駆られていたのです。

そうして第一試合から会場の熱気に包まれて
最後の天心武尊戦まできました。
昔から体育館で見ていたあの野杁や山崎が
ドームで試合してるという感動から
最後、武尊・天心で僕の興奮や
いいしれぬ感動は最高潮でした。
早く始まってほしい、いや始まらないでほしい
でもこの日が終わってほしくない、
様々な感情の渦の中ゴングが無情にも
切り裂くのでした。

事件は軽やかに一ラウンドで起きました
それこそ真剣でスパッと切れるような
天心のカウンター。
あの武尊がマットに体を打ち付けているではないか。
歓声と悲鳴と怒号とが入り混じったものが
ドーム内にこだます。
何だこの景色、すごいことが起きてるぞ。。。

そこからのことはもう正直
はっきりと覚えていない。
僕はとにかく大声を出していた。
後から見返すと武尊の良さを封じつつ
天心の有効打が入っているというような印象。
さすが神童と言わざるを得ない。
格闘感、というか勝負ところ組み立てのうまさ。
徹底したクレバーな処理能力。。。
しかし最後まで打ち合いに向かう
武尊のかっこよさもまた痺れた。
二人の天才の技巧と気迫は
すでに狂気的な域に達していた。
勝負は判定になる。
三人目のジャッジが出た時に
天心の顔が喜びに、
武尊の顔が悔しさに歪んでいった。
何度も言う。勝負の世界は残酷だ。
この日全てを手に入れたの天心だった。
この日全てを失ったのは武尊だった。

ぼくはそこからもう武尊のことしか
考えられなかった。

武尊は最後まで頭を深々と下げ
泣きながらもこの東京ドームのリングをあとにした。
さまざまな誹謗中傷と戦いながら
この最強K-1のリングを守るために結果を出し
死ぬほど努力を続けてきた男。
その後ろ姿は他の何よりも格好良く
形容し難い神々しさを放っていたと思う。
負けてもなおカリスマ性の止まらない武尊選手。
そんな選手が他にどこにいるだろうか。
ぼくは涙が溢れていた。

天心が勝って嬉しい。
でも武尊が負けて悲しい。
なんだこの感情は。
意味がわからない。
できることならこんな感情に
なりたくはなかった。
でも決着は見たかった。
勝敗が逆でもこれは起きた
それほどもう語彙力を失う
意味のわからない稀有な一戦だったのだ。

武尊は負けた。
たしかに負けだった。

試合後インタビューで
武尊は日頃支えてくれる人への感謝と
戦ってくれた好敵手・天心を讃え
応援してくれた人への謝罪をしていた。

ふざけるな。

武尊が何を謝ることがあろうか。

これほどまでに素晴らしい試合を
濃密な6年間を見せてくれたではないか。
ぼくは武尊選手のその姿に
最も感動した。

武尊は負けて本当に全て失ったのだろうか。
それは第三者以上離れたぼくが
勝手に決めていいことではない。
だが、かつて魔裟斗やKIDを見て
キラキラしたように
今回武尊の活躍でより多くの人間が
格闘技に興味を持ち
多くの子どもたちが武尊に憧れて
キックボクシングをすることだろう。
それだけの影響を全世界に
二人は発信したのだ。

もちろん勝負は勝たねばならないとは思う。
だが勝ち以上に価値のある負けがあるとすれば
今回はその一つだ。

僕は常に思う。格闘技とは、リングとは、
自分という人間やその生き様を魅せる
最高の表現の場だと。
それはボクシングでもキックでもMMAでも
プロレスでも全てそうだと思う。

今回はたくさんの選手の生き様を見た。
こんな日が来ると思ってなかった。
正直一夜明けてから翌日の夜まで
力が入らなかった。
そんな人が日本中にたくさんいるであろう。
徐々にこれを受け止めていくしかない。
それほど一生の思い出になった。
僕だけじゃないはず。

僕はボクサーだったので天心選手のこれからも
応援し続ける。
そして武尊選手が今後どういう動きをするかは
まだわからない。
だが武尊選手のこれからのドラマも
ずっと応援していきたいと思う。
武尊選手がこんな拙い僕の文章を見ることなど
万に一つもない。ただ、日本全国に
こうして武尊選手から勇気やパワー、
エネルギーをもらっている人間がいることを
忘れないでほしい。そうした意味で
今回は熱い思いを記し残すことに決めた。

武尊、本当に最高に格好良くて
愛してるぞ。

p.s.今回このビッグマッチに行けるような
セレブリティのないぺーぺーの若手芸人に
席をご用意してくれた長年の親友には
ほんっっっとうに心からの感謝を。。。
武尊や天心から活力をもらい、僕自身も
日頃自分のやるべきことに全力で向き合っていく。
なにより親友に夢を見せれるように。
必ず僕も結果を出す。俺はまだまだだ。
たくさんの人々に喜んでもらえるよう
生きる活力を与えられるよう精進していきます
見てて。

試合終わりたくさん泣いた後のワイ

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