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小説版『ヴァサラ戦記』〜エイザン外伝〜/大輪の花②【少年漫画あるある】

第二章「枯死」

1.「師弟」

「・・・地の極み?」

「そうですッ!それがあなたに与えられた力であり、
奇しくも私の持つ極みと同じ力なのです!」

「お師さんと・・・同じ力・・・!・・・なんかイヤだッ」

「えぇえッ!?!?」
「うそうそ!じょーだんだよッ!」
「元来〝土〟系統の極みは、
大地のように広く深い心を根ざした者にのみ
発現すると言い伝えられています・・・!」

「え?あぁそうなのか。
まぁなんでもいいけど・・・。」

「いえ、これはとても大事なことです!
あなたは優しい人間であることの
なによりの証拠なのですから。」
「覚えておいてください。
〝力〟というものは抑止力に直結します。
人々に安穏をもたらす他方、それは
脅威にも変わるということです。
あなたはその力に恵まれ、選ばれた責任がある。
・・・エイザン。約束してください。
あなたに与えられた極みを使うときは
必ず大切なものを〝護るため〟に使うのです。
・・・守れますね?」

「あぁ、約束するよ!師匠・・・!」

エイザンがリョウエイの元で学び
3年が過ぎたー。

初めの頃は獣と変わらぬ鋭い眼光で
牙を剥き出しにしていた幼き子も
かつての面影はすっかり消え、
優しく正義感の人一倍強い子へと
成長していた。

剣術を学び、道徳を学び
修行を通すことで日に日にエイザンの
くすんだ心は浄化されていったのだった。
やがてエイザンは心から
リョウエイを師と仰ぎ、
リョウエイもまた実の我が子のように
エイザンを可愛がっていった。

数年の月日でリョウエイは
誰にも語ることのなかったであろう
これまでの半生を初めてエイザンに話した。
かつて自分は国軍に従事し、
一兵隊長として隊を束ねていたこと。
現国王との不和と心身の疲弊により
戦線を離脱したこと。
平和と平等を尊び、自然を何より愛したこと。
そしてそれ以上に寺の子どもたちを
愛していること。

リョウエイとの日々で一番の学びは
真心〟を持つことだとエイザンは自覚した。
愛も感謝もすべて心一つ。
〝師のような立派な人間になる〟
これがエイザンの志になった。

幼くして両親を失い、この世を恨み、
絶望とともに生きながらえていた少年は
もうどこにもいなかった。



・・・かに思えた。

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