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離婚後の子どもの幸せづくりと法制度

参議院議員、元滋賀県知事 かだ由紀子氏のFacebookページ2021.5.9の投稿より(本文、画像とも)

今日5月9日は「母の日」、5月5日は「子どもの日」。大変つらいですが、日本の子どもの自殺人数は2020年に過去最大となってしまっています。子どもの自殺率は世界でも最大と言われ、子どもの幸せ度はユニセフ調査で38ケ国中37位というデータさえあります。少し長くなりますが、参議院法務委員会での議論など踏まえ、「なぜいつまでも日本の子どもは離婚後放置されているのか」「なぜ実子誘拐」のような悲劇が起きるのか、日本の法制度、裁判制度とかかわらせて以下の問題提起をさせていただきます。5月9日。

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(1)日本の子ども数1493万人のうち親の離婚を経験している子どもの数は毎年21万から30万人であり正確な統計はないが、子どもの4-5人に一人が親の離婚を経験しているという高率です。

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(2)日本の民法(819条)は、離婚後は片親親権(監護権)を規定していて、離婚後の親子交流ができない離婚家庭が7割という報告が、5月7日のNHKの番組でありました。離婚後の養育費の支払いは24.3%というデータもあります。一人親家庭の貧困のひとつの要因となっています。

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(3)先月4月2日に将棋界を突然引退され、子どもの連れ去りの問題について精力的に周知活動をしている橋本崇載(たかのり)元棋士(8段)が、4月末に出版された池田良子さんの『実子誘拐ビジネスの闇』(ちょっとタイトルがセンセーショナルですが、内容は社会的事実として重く、データも信頼がおける書籍です)の書籍を読み、「この本に私の遭った境遇と私と同様の実子誘拐への怒りが込められています」と帯で紹介しています。日本中で統計はありませんが、突然子どもを相手配偶者等に連れ去られ、親子分離に遭う親の数は近年増えているようです。5月5日の子どもの日には橋本さんと、ミツカン親子分離事件当事者の中埜大輔さんたちのオンラインシンポが開催されました。

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(4)世界の先進国の中でも日本だけに残った明治民法以来の単独親権制度を改善して、「離婚をしてもパパとママ両方に会いたい」という子どもの願いを実現する「共同養育・共同親権」をめぐり私自身、2019年に参議院議員になってから法務委員会でこれまで25回ほど質問をしてきました。しかし壁は高いです。その構造は、法務行政の仕組みと構造にあることがだんだんわかってきました。

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(5)菅政権下で上川陽子法務大臣が誕生し、2021年2月10日の法制審議会に「離婚後の子どもの養育の在り方」について諮問され、具体的には3月30日に「家族法制部会」が開始されました。今、親子分断された父・母、祖父母、また子どもたちもこの審議会に期待をしていると思います。私もこの『実子誘拐ビジネスの闇』を読むまで期待をしていました。しかし、今回の審議会にも期待できない、片親親権の前例踏襲のまま、親子分断の実態は改善されないのではないかと暗たんとした気持ちになっています。(4月6日の法務委員会で『実子誘拐ビジネスの闇』の「あとがき」を印刷、資料提示しました)。

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(6)まず法制審議会のメンバーですが、民事局長など、行政職を担う幹部が、家族法制部会で議決権をもつ委員24名のうち4名はいっています。私自身、これまでいくつもの国の委員会にはいったことがありますが、行政職幹部が議決権をもつ委員になっている事例はみたことありません。そもそも審議会は、ひろく国民や専門家の意見をきくために公平、公正に構成されるべきです。審議会が、法務省の「お手盛り」に見えてしまいます。

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(7)しかもその行政職の法務省幹部は、もともと裁判官で、「裁判官から検事の身分(行政職)に転官して国の行政機関で勤務している者」と定義されます。「判検交流」と呼ばれる人事制度ですが、法令があるわけでもなく昭和22年からの慣例という人事システムです。「判検交流」人事を嘉田事務所で整理をして、4月6日の法務委員会で提出しました。民事局長、法制部長など主要役職が「判検交流」裁判官でしめられていることがわかります。

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(8)法務省だけでなく、霞が関のほとんどの省庁の法務系の職員として、170名以上が配置されています。原発問題なら資源エネルギー庁等、ダム問題なら国土交通省と、それぞれの問題を法務的に対応する行政職員として、最高裁判所事務総局が最終人事を担う裁判官が配置されているわけです。司法判断が国政中枢の方針に寄り添うことが多い仕組みが見えてきます。4月20日の参議院法務委員会では内閣法制局は、「判検交流」については「違法とも違法でないとも判断できない」という答弁でした。

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(9)「判検交流」について、上川法務大臣は、法務省行政に、「法務実務の経験を有する法律専門家を任用することは、合理性がある」と4月20日の参議院法務委員会で答弁しています。また法制審議会に「判検交流」人事による行政職裁判官が議決権をもつ委員として4名もはいっていることについて、「法務省職員は、専門的知識および経験に基づいて行われるもので、法務大臣の指揮監督を受けるものではない」と4月27日の法務委員会で上川陽子大臣は答弁しています。

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(10)これには驚きました。つまり法務省職員であっても専門的知識、つまりこの場合、裁判官としての専門性で判断してよろしいということです。つまり法務省の民事局長は、内閣総理大臣のもとにある法務大臣の指揮監督ではなく、裁判官としての専門性で判断してよろしいと。つまり法務省は、法務官僚の意のままに動かせる、行政権トップの総理大臣も法務大臣の指揮監督は受けないということになります。「判検交流裁判官」の意のままに動かされることになります。

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(11)「判検交流」で裁判官が法務行政職の幹部を占め、単独親権という親子分断の前例に従い、父と母、両方が子どもとのつながりをもちたいという離婚夫婦のどちらかに親権を与える基本方針は裁判官の判断次第となります。この時の判断が「継続性の原則」といわれ、決して法律などに明記がないのですが、「より多く子どもといっしょにいた親に親権を与える」という判断です。

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(12)単独親権で、どちらの親を看護者や親権者と決めるか、という時には「経済力」「看護者としての信頼度」「子育てへの熱意」などいろいろあると思います。しかし「それまでいっしょにいた人を選ぶ」という「継続性の原則」が裁判官の判断で決定されるという出口がわかると、多くの離婚関係弁護士や、そこから示唆をえた母や父が、相手配偶者に無断で子どもを連れ出し、しばらく子どもといっしょに身を隠して時間を稼ぐという流れができてしまいます。そこで無断で連れ出した理由に「DVから逃げるため」と言って、DVによる診断書があれば鬼に金棒。5月9日(写真はイメージです。6年前にわが家の前の比良浜で遊ぶ孫ふたりと彼らが描いた砂絵、お父さんとお母さんに仲良くしてほしいという願いか?)。

*原文ママ (12)一、二行目「看護者」は「監護者」の誤記と思われる。

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(13)DVは今の日本では、警察が加害者、被害者双方から調書をとるという厳格な対応は少なく、訴えるだけで認められる傾向にあります。「実子誘拐」「実子連れ去り」を未然に防ぐためにもDVの厳罰化は必要です。池田さんの本にでてくる卒田さん(仮名)の例も、千葉家裁松戸支部の一審で、妻が娘さんを連れ出した事案で、「DVと認めるにたる証拠はない」ということで裁判官がDVの主張を否定。でもこのような例は大変少ないようです。いったんDV夫(まれにはDV妻)とされるとその判断を覆すことが難しいという訴えをたくさんききます。

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(14)一方多くの裁判官らは、実子誘拐をした親に親権を与える判決をし、親権を奪われた親から「養育費を強制徴収」して、さらに「監視付き面会交流」を押し付けることで、「実子誘拐ビジネス」に関与していると池田良子氏は記述しています。その裁判官らが、実子誘拐ビジネスに関係する離婚後の家族の在り方を審議する法制審議会に正式委員として関与をするのは「利益相反」ではないのか。

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(15)法制審議会に参画している法務行政職員は、法務大臣の指揮監督下にない、と前述のように、法務委員会で上川法務大臣が答弁しました。これでは今回の実子誘拐連れ去りで、最終的に「継続性の原則」で判断する裁判実務を知り、そこに適合するように、法務省職員が法制審議会で判断をしていい、ということを法務大臣からお墨付きをもらったことにもなります。これはまさに三権分立違反ではないでしょうか。法務省は行政組織として独立性がない、法務大臣の指揮監督は、法務省職員には働かない。

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(16)では法務省の行政職員となった裁判官の人事権は、となるというまでもなく、最高裁判所事務総局です。裁判官の任地や出世など人事判断はすべて最高裁の事務総局です。裁判官の人事評価の最大基準はさばいた裁判の内容と数と池田良子氏は書いています。

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(17)4月27日に、金子修司法法制部長に確認しました。「法制審議会では、発言者を明記した議事記録を作成する」と参議院法務委員会で明確に答弁くださいました。今後、法制審議会での個々の委員の発言を注視しましょう。3月30日の審議会の議事録もまだでていません。

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(18)共同親権に反対する署名をかつて法務省に提出をした赤石千衣子さんは今回の法制審議会の正式委員で、本年2月10日に掲載されたヤフーニュース記事で「安全安心な面会交流の実施についてインフラ整備を行うべきです。現在調停、裁判で面会交流が決まったあとに安全に面会交流を行う支援機関があまりにも少ないのです」と述べている。一方で、超党派国会議員による共同養育支援議員連盟は1月27日「安全安心な面会交流の実現に向けた国による民間の面会交流支援機関の育成・公的支援の拡充及び制度化に、ただちに取りかかること」を要望する緊急提言を提出しています。この二つは全く同じ事を言っているように見えます。国会議員による共同養育支援議員連盟と共同親権に反対をしている赤石千衣子さんとは連携をしているのでしょうか? だれかがここをつないでいるように見えてなりません。

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(19)多くの子どもを連れ去られた親が、いわゆる共同親権反対派と言われる方々に苦しめられてきました。私も2019年7月の参議院選挙の時に「共同親権」というひとことが政策集にはいっていたせいか、ネット上で落選運動をされました。反対派の中心に居る方と、信頼を寄せてきた国会議員による共同養育支援議員連盟の方が実は繋がっていたということになれば、この問題の改善に向けて大きな障害になると感じますが、実際のところはどうなのでしょうか?

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(20)法制審議会家族部会の委員であるある大学教授や家族法の専門研究者が、「監視付き面会交流」をビジネスにしょうと、国としての「認証制度」を準備しているという情報もあります。

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(21)海外で、このような監視付き面会交流の仕組みがあるかどうかについて、5月5日のシンポジウムに参加をした「ミツカン親子分離訴訟」の当事者でありイギリスの事情に詳しい中埜大輔さんや、フランス人の当事者やイタリア人の当事者に尋ねました。「親子交流は自主的になされるもので行政機関等による支援はあるが、犯罪者のように“監視”などありえない」という回答でした。

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(22)法制審議会は、上川陽子法務大臣が、まさにチルドレンファーストとして、民間の意見を公平、公正にきくために設置しています。その学識経験者の意見や当事者の意見も法務省職員が差配しているとしたら、そもそも法務大臣の役割とは何なのか。菅内閣の役割とは何なのか?
(22) 法制審議会では、きちんと「裁判所の親権者(監護権者)決定基準として、「継続性の原則」ではなく「フレンドリーペアレント・ルールを採用すること」と「DVの刑事罰化」を審議していただきたいと願います。2011年の民法766条改正の時に、当時の江田法務大臣は、「継続性の原則をつかってはいけない、フレンドリーペアレントルールが子どもの最善の利益にとって必要だ」と明言しています。

*原文ママ。「(22)」の見出しは重複している。

(23)

(23)海外では離婚後も当事者の父母がたとえ高葛藤であっても「フレンドリーペアレント・ルール」を導入し、子どもとの時間を最大限、両方の親が確保、楽しめるような方針に合意できる親を有利にする離婚後判断がなされています。

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(24)日本だけが、子どもの願いに配慮できない、相手配偶者をおとしめるような親ばかりなのでしょうか。監視や料金の支払いせずに、週末や夏休みなどに別居親が自然と子どもと時間を過ごすことができる、そのような親子交流こそ、今、日本の離婚後の親子が心から望む生活ではないでしょうか。そのためには、離婚時の「共同養育計画」を市区町村役場の戸籍窓口や、離婚を考える親の相談にのる地道な自治体によるサポートが必要です。そのための第一歩は、民法819条の単独親権を共同親権化する民法の改正が基本です。同時に、DVの厳罰化が必要です。左でしめて、右で共同化をすすめる、そのバランスある法制化が必須です。

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(25)滋賀県では私が知事時代(2006年~2014年)に、虐待やDVの現場での厳しさをみていました。それで知事として、滋賀県警察の生活安全課の人員を強化して、特に女性警官を増やして、児童相談所などに、正式に出向してもらうような手配をしました。先日、TVのワイドショーで、児童相談所に警察官を正式に出向させて警察と協力体制をつくったのは滋賀県がはじめてと言っていました。

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(26)4月13日の参議院法務委員会でも、「家族問題に刑事罰をもちこむことに躊躇があるか」と上川法務大臣に尋ねました。法務大臣は、「実子連れ去りは刑法224条の未成年者略取誘拐罪の構成要件に該当する」と答弁しております。刑法224条の保護法益は、「未成年者の自由と安全」「監護側の監護権」とはっきり川原刑事局長は答弁しています。実子誘拐は刑事罰の要件にもなること、現場の警察や裁判所で理解をすすめていただければ、橋本棋士のような、理不尽な実子連れ去りの悲劇は減らせることと思います。
何よりも、当事者の願いと思い、また声をあげられない子どもたちの声を代弁する組織は何としても必要と思います。5月5日の子どもの日に、改めて私自身、決意を固めています。長い文章におつきあいいただき、ありがとうございました。
#離婚後単独親権 #共同養育・共同親権 #判検交流 #法制審議会 #家族法制部会 #実子誘拐ビジネスの闇 #橋本崇範棋士 #ミツカン親子分離事件 #中埜大輔 #刑法224条 #民法819条

コメント(抜粋)

子どもオンブズマン日本 事務局長 鷲見洋介氏のコメント

Yousuke Sumi
嘉田先生
三権分立に関わる裁判官訴追委員会、裁判官弾劾裁判所を調べると、双方とも国会議員が運営しているものの、事務局に最高裁裁判官が出向で入っています。
これで公平公正に裁判官を弾劾するとは思えません。
裁判官は本当に守られていますね。
裁判官弾劾裁判所
https://ja.wikipedia.org/.../%E8%A3%81%E5%88%A4%E5%AE%98...
裁判官訴追委員会
https://ja.wikipedia.org/.../%E8%A3%81%E5%88%A4%E5%AE%98...

かだ由紀子氏の返信

かだ由紀子
Yousuke Sumi 裁判官弾劾裁判所の事務局には、最高裁判所から参事が出向しておりまさに「判検交流」ですので、お手盛りになりがちでしょうね。戦後弾劾裁判で罷免された裁判官は10名ほどでそれも性的な問題が多いですね。判決内容などで問われることは全くありません。裁判官が守られの身分保障は裁判の独立性で大切と思いますが、裁判現場のおかしさは、たとえば瀬木比呂志さんが書籍にまとめています。

私(小島太郎)のコメント

小島太郎
(18),(19)の疑問について
共同養育支援議連は、ハーグ条約を骨抜きにした実子誘拐社会維持派の議員たちが多く含まれ結成されています。議連の情報は、議連に物言う実子誘拐被害当事者は排除され、従順な別居親団体のみに情報が共有される一方で、共同親権反対派の利権団体には筒抜けの状態で管理されています。議連の目的に合致しない議員を含めて構成させていることから生じている問題です。
ある議連役員事務所では、SNSの匿名アカウントを用い、共同親権反対派とつるみ、実子誘拐被害親を貶める活動をしていました。
200名ほどの構成になっている共同養育支援議連において、本来の存在目的である親権目的の誘拐被害を憂いでいる議員は、一割にも満たない10名強です。それであってもご指摘の通り、共同親権反対派と同じゴールを目指しており、被害親子救済は絶望的な見通しです。
例えば、実子誘拐被害を憂いでいる希少な議員である三谷議員や柴山議員が目指すゴールは、面会交流支配業者への助成増にみえます。共同親権反対派・実子誘拐被害否定派の赤石氏ら、嘉田先生の落選運動をした駒崎氏らと同じゴールです。
例えば、実子誘拐被害を憂いでいる希少な議員である串田議員は、家庭裁判所の予算増をゴールと考えています。共同親権反対派・実子誘拐被害否定派の木村草太教授と同じ意見です。
このように解決(救済と予防)に導かずに、現状を維持強化するような愚策を目指しながら、何も進まずに10年以上が経過している原因は、自由闊達な意見表明(批判)が封じられていることに因ります。法制審議会同様に、議連総会の議事録も公開され、誰がどのように発言をしているのかが明らかにされるべきです。実子誘拐被害当事者の言論封じの役割に成り下がっている全国連絡会のみに情報を与えずに、公開することが必要です。

https://www.facebook.com/kadayukiko2/posts/776669443020979

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本業の他に,子育て支援員や面会交流支援員など家族問題に関わる社会活動をしております。 https://tarokojima.themedia.jp/