平成の終わりに、痛くない乳がん検診を始めて

平成最後の年末、今年を振り返ってみて、なんと言っても一番の印象は、「痛くない・見られない」MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)を開始し、受診者の数が積み上がってきたときに、「がん発見率1.4%」という、途方もない成績が眼前に現れたことです。

超音波やマンモグラフィーを一切参照せず、MRIだけでブラインド読影した結果です。浸潤癌がほとんどで、手段も結果も、常識とはまったく乖離した方法です。

触診で分かるものを除くと、マンモグラフィの発見率が0.20%(大内論文)、超音波やトモシンセシス(3Dマンモ)を加えても50〜100%増し、が常識の中にあって、造影をしないMRIで、500%増しという、にわかには信じてはもらえない結果が示されました。

MRI装置は、「パラメータ(撮像条件)が同じならどれでも同じ」と思われてきましたが、同じ機種でも、かなり大きな画質の差があることがわかりました。このため企業に特別な調整をお願いして、9つの病院で、可能な限り画質を良くしていただき、私も参加し、討論し、評価し、納得してはじめることができました。

古くは遠藤登喜子先生がマンモグラフィの画質の標準化を、またLANCET論文では大内憲明先生が超音波技術と画質の標準化に腐心されましたが、MRIもその例外ではなく、画質の調整がなにより大切であることを痛感しました。

マンモグラフィを受けない理由を「なぜ?」と尋ねると、「痛いから」という理由が多く聞かれることは常識となっています。しかし我々が、ドゥイブス・サーチ(無痛MRI乳がん検診)を受けていただいた方に「何が良かったですか」とお伺いすると、「痛くない」ことの次には「【見られない】ことが良かった」という声が返ってきました。声なき声を聞かせていただきました。

「見られたくない」という気持ちは、多くの人の心の中にあります。長らく肥満で、時にからかわれてきた自分には、とくにこれが痛いほどわかります。女性にとってとりわけ大切でデリケートなところを、たとえ女性相手にもあらわにはしたくない。そういう気持ちは、万人に共通するものではないでしょうか。

(イラストは、八王子クリニック井藤尚文院長のご厚意による)

いま、マンモグラフィを受ける方は、40歳以上の方ですら、45%だと聞きます。つまり過半数の人は、無防備に、乳がんの危険にさらされています。30代から増える乳がん。彼女らに、マンモグラフィは(放射線被曝のため)推奨されません。つまり、30代はさらに無防備です。

もうすぐ10人に1人がかかるようになる乳がん。1センチ以下でリンパ節転移がなければ、1ヶ月で職場復帰もできる乳がん。家族の中で奥さん・お母さんは、太陽のような存在で、家族をつなげるとても大切な役目をしています。進行して見つかると、家族が成り立たなくなるかもしれない乳がん。シングルなら、生活そのものが直ちに成り立たなくなります。それが失われないようにしたい。

私は、受診をこれまで避けてきた全ての皆さんに
この方法を届けたく思っています。

母の七回忌に相当する今年、大腸がん(ステージIV)で母の後を追うように1年後に亡くなった父とともに、合わせて法要を営みました。親戚の高齢化も考慮したからです。

父は最期まで、医学の貢献に使ってほしいと、身体を差し出し、DWIBS法を受けてくれました。

「太郎、決してこの方法をお金儲けに使うな、人々のために使え」と遺言を残して逝きました。学術的成果に満足するだけで、検診として普及させる努力を怠っていた私。父すら救えなかった、情けない私は、涙が止まりませんでした。


今、MRI乳がん検診の噂を聞いて、画質の調整をしているのかしていないのか、少しずつ、知らない病院でMRI乳がん検査が始まっています。いずれも、かなり安く提供されているようで、そのこと自体は良いと思います。

検診は、一度誤って「異常なし」とすると、それを強く信じるので、受診者が後で体調の変化やしこりに気づいても、「大丈夫」と過信し、診断が遅れる懸念もあります。患者さんにもこのことをよく知ってほしいと思います。

それだけに、可能な限り精度をあげなくてはならない、画像専門の自分すら画質調整に苦しんでいるのに、本当に大丈夫なんだろうか。心配です。DWIBSによる、乳がんMRI検診は精度調整が難しいので、同じ志を持つ病院と連携してこの検診を進めていきたいと思います。

私は、新しくくる年も、微力ではありますが、進行乳がんで見つかる方を、少しでも少なくするために、少しずつでも、前に進もうと思います。

被曝がなく、相対的に安価で、感度の良い、「無痛MRI乳がん検診」。
真剣に考えてくれる有志が、「ドゥイブス・サーチ」と命名してくれました。

一般には「非造影MRI」と呼ばれているこの方法は、まだ学会では正式には認められず、推奨度はグレードD(すべてのランクのうち最低)です。

しかし、年末には、大きな病院も提携してくれる可能性がでてきました。多くの協力をしてくださる方、受診してくださる方に支えられ、きっと近い将来、一つのオプションとして、考えられていくと信じています。

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乳がん

乳がんの検診をはじめるまで、はじめたあと、のいろんな考え方、見聞きした医学情報について書いていきます。
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