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追悼 前田恵理子先生

前田恵理子先生が2月8日に急逝され、多くの方が追悼の言葉を述べられています。これまでの前田先生の歩み、また遺したものがきわめて大きく、我々にとって大切な精神的支柱を失ったことを改めて感じます。

前田先生について、傑出した人物だと感じたことは、以下の2つです。

ひとつめは、ご自分の病気(病状)を隠さなかったことです。前田先生は、後頭葉に大きな脳転移を生じ、その結果、半分の視野を失ったときすら、その画像を公開し、細かく自分の症状を報告しました。

脳というのは、さまざまな知的活動を司るところです。そこに転移を生じたことを他人に公開することは、身体の他のどこかとは、はっきりと意味が違います。だれだって嫌なことだし、敢えてそれを言うことはしません。

それを画像とともに公開し、議論する。半分視野を失った感覚はこうだと説明する。こんなことは前代未聞ですし、おそらくは、空前絶後でもあると思います。

ご自身が医学を信じ、とくに画像診断学の発展に自分の身体を使って寄与しようとする、強く固い決意の証だと思います。きっと、前田先生の名前を遺す賞が創設されるに違いありません。

写真は、2019年1月21日に、肺がんが肺内に播種(はしゅ)を生じたとき、入院直前の朝8時に八重洲クリニックに来てDWIBS法の撮影をお受けになったときの写真です。

まったく時間のないところのワンチャンスを生かされた結果が残ることになりました。前田先生の行動力、瞬発力、決断力を示す端的な例だと思います。

もうひとつは、三重県の農家、奥川克己さんの育てている平飼い鶏のたまごや、野菜、また手作り・手打ちのそばを、繰り返し、定期的に購入されていたことです。

こうした行為が農家の安定収入にもなるからと助け、またそれを皆にも勧めるということをなさっていました。僕も奥川さんから購入しましたが、継続的にこういったことができる方は、なかなかいないものです。大切なことを育む、その優しい思いに満ちていました。

個人的には、気象に関して、2019年の台風や、線状降水帯のことでさまざまなやり取りをしたことが印象に残っています。

今朝も、夜明けの金星や火星、射手座やさそり座を背景に、薄く積もった雪を眺めながら、

「気象庁の「夜間みぞれ」の予測はとても正しかったですね。今回の南岸低気圧の通過に伴う積雪はわずかでしたね」

と、暁の空の向こうの前田先生に話しました。


2月15日火曜日
前田恵理子先生の告別式に参加してきました。

ご導師さまがご説明をしてくださったので、ご参列の希望がありながら叶わなかった皆さまにご報告をいたします。

読経の途中で、ご導師さまは、前田先生に引導を渡されました。
ご導師さまによると「引導を渡す」と言うのは、俗世間においては悪い意味で使われますが、仏様の世界では、「浄土につながる道を迷うことなく辿って行けるようにお導きをする」と言う意味だそうです。

前田先生の誕生日が4月15日であること、また神奈川県の秦野市で生まれ、東京大学の医学部に進学し、続いて東京大学医学部に奉職され、その後、幾度と無く癌が再発したにもかかわらず一生懸命頑張っていたと、私たちにもわかる言葉で、お経の中で読んでくださいました。

告別式の読経に引き続いて初七日のお経も読まれましたが、ご導師さまの説明によると、阿弥陀教(あみだきょう)においては、浄土に昇るまでに、七日を一つの単位とし、七回これを繰り返すとのことです。

昨日が最初の七日目に相当するので、初七日(しょなのか)だったと言うことです。来週の月曜日は「二七日(ふたなのか)」、再来週の月曜日は「三七日(みなのか)」と言うことになるので、毎週月曜日が来るとき、前田先生のことを想って下さると良いとの事でした。
これが七回繰り返して四十九日が来るとのことでした。

早かれ遅かれ誰もが命が尽きますが、阿弥陀教では、 行きている間に善い行い(功徳;くどく)を行うことにより、浄土において再会できると、説いているそうです。

「前田先生は、皆よりも先立ったのであるから、優光院(ゆうこういん)とつけられた戒名のごとく、優しい光として皆さんを照らし、皆さんがたくさんの功徳を施し、いつの日か浄土で再会出来るように見守ってください」というお経を読んだと言うことでございました。

そう説明してくださったご導師さまは、信じられないほど全くよどみなくお話をされ、「え〜」と言ったようなお言葉は、ただのひとつもありませんでした。その、整然とした、分かりやすく人を引きつけるお話は、まさに生前の前田先生を彷仏とさせるものでございました。

寝顔はとても安らかで、 最後にみんなでお花を手向け、出棺までお見送りをいたしました。

前田先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

朝、500mLの魔法瓶用にコーヒーをたっぷり淹れて出発します。意外と半日以上ホカホカで飲めるんです。いただいたサポートは、美味しいコーヒーでアイデアを温めるのに使わせていただきます。ありがとうございます。