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【自転車部品業界のインテル】株式会社シマノをトレース&ニッチ戦略について解説#マーケティングトレース

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
さて、今回トレースしますのは株式会社シマノです。
この企業は平成26年に経済産業省が選定したグローバルニッチトップ企業100選にも選ばれた企業です。
投資業界では有名な会社ですが、普段生活している中では耳にしたことのない人が多いと思います。
ニッチ企業の代表格で絵に描いたようなニッチ戦略なので、この会社のマーケティング戦略は勉強になります。
また、シマノのマーケティング戦略を受けてニッチ戦略とは何かを解説できればと思います。では、早速トレースしていきましょう。

①会社概要

社名:株式会社シマノ
住所:大阪府堺市(本社住所)
創業:1921年
従業員数:1,345名(本社)/11,600名(連結)
主な事業:自転車部品・釣具

主な事業にあるのは自転車部品と釣具。
正直「えっ・・・」ってなりますよね笑
元々は自転車部品を専門に行っておりましたが、1970年に釣具にも参入しております。(下記データはシマノの有報より抜粋)

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②財務状況

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特筆すべき点はBSの純資産です。ニッチ企業に多くみられるのですが、財務体質がムキムキで筋肉質な企業が非常に多いです。ここまでの財務内容ですと本当に何が起きても全く動じることがないでしょう・・・

また、セグメント別の売上高は下記の通りになっております。

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約8割が自転車部品、約2割が釣具となっております。ニッチ企業の特徴ですが、狭く深くが基本戦略ですので、セグメントの数も非常に少ないです。

では、この会社のマーケティングについてBizMake様のフレームワークを使って分析していこうと思います。

③分析

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ファイブフォースにてシマノという会社を分析してみました。
1つ1つ見ていきましょう。

A 業界内の競争

自転車部品は世界シェアNo.1、釣具は世界シェアNo.3と共にシェアが高いのが特徴的です。
とりわけ自転車部品に関してはシェアが80 %という状態ですので、業界内での競争はほとんどないといっても過言ではないでしょう。


B 売り手・買い手の交渉力

こちらはほぼ同じ理由なのでまとめます。
自転車部品に関して言えば、高品質かつ圧倒的シェアなので自転車メーカーはシマノのギアやブレーキを使わざるを得ない状況になっていると思います。自転車メーカーに対しての売り手(シマノ)の交渉力は高いと思います。
買い手(自転車メーカー)に関してはシマノの商品を使わざるを得ない状況だと思われますので、買い手(自転車メーカー)の交渉力は低いと思います。


C 新規参入の脅威

自転車部品業界、釣具業界で新規参入の脅威はほぼないものと思われます。
まず、自転車部品に関してはシマノが既に世界シェア80 %のため、そこに参入し市場開拓するのは至難の技です。ある程度の設備投資も必要のため、企業の体力も必要です。また、釣具に関しては自転車部品業界ほどではないですが、市場規模は約7000億程度と言われております(缶コーヒーやレンタカーと同じ規模)。市場規模の低さや既に釣具業界が既に成熟している市場であることも相まって、新規参入者に旨味がある市場とは言えないでしょう。


D 代替品の脅威

問題はここです。
別領域からの参入やユーザー価値観の変化により代替品の脅威が出てきております。

①電動アシスト自転車の普及
日本では電動アシスト自転車(通称e-バイク)は電動ママチャリといった方がピンとくる方が多いかもしれません。ロードバイク向けの機械式変動ギアで市場を拡大していったシマノには関係ないと思われますが、近年欧米を中心にロードバイクにも導入されてきており、シマノの得意とする機械式変動ギア領域を侵食し始めております。


勿論シマノもe-バイクの対策を講じております。
SHIMANO STEP : https://set.shimano.co.jp/steps/

ただ、e-バイクは成長市場であり、欧州ではあの自動車大手であるボッシュがモーターを開発し各自転車メーカーへの供給しております。
シマノは世界での売上が約10兆円もあるボッシュと戦わなければならず、その動向が非常に注目されます。


②シェアバイクの普及
2017年頃から中国で話題になったシェアバイク。一時期は会社が乱立され、現在は淘汰され数社しかない印象がありますが、それでも一定数の需要がまだあると思います。その証拠に有報では中国の売上は減少したと書いてあります。(シマノIR資料より抜粋)

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自転車のシェアリングが当たり前になれば、自転車主流の国では販売台数が減少し、結果シマノの売上にも大きく影響がでることが予想されます。

この2点に関してはシマノにとって大きな懸念材料であり、しっかりと対策をとっていかなければビジネスモデルそのものを揺るがす事態になりかねません。


④ニッチ戦略のポイント

ニッチ戦略で成功する企業のポイントは下記の3点だと思います。
ここからは完全に個人の意見です。


1.  事業領域は狭く深く
2. 新規事業は既存事業のシナジーありき
3. ブームにのらない

1.  事業領域は狭く深く

中小企業やスタートアップにはリソースが大企業ほどありません。
そんな中で手広くビジネスを展開しても必ず失敗します。深みがある企業には絶対に勝てません。事業領域は狭くし、そしてそこに深みを持たせることが非常に重要になります(深みを持たすこと自体、非常に難しいですが・・・)
そして、事業に深みを作りビジネスモデルを確立すると、それが参入障壁につながります。結果、その市場で圧倒的なシェアを誇り、超筋肉質な財務体質を作り上げることができます。
シマノを見てみますと、自転車部品の中でもギアという超ニッチな部分に注目し、徹底的に深堀りして技術力を高め、他社が真似できないほどの高品質の商品を作りました。その結果が現在の財務内容に現れていると思います。

YKKがファスナーに注力したり、朝日印刷が大手のやらない医薬品パッケージの印刷に注力したりといったことも同様です。


2.  新規事業は既存事業のシナジーを効かす

これは一般的に言われていることです。
シマノはギアを作るノウハウや技術を応用して高品質なルアーを作り、釣具業界に参入しました。既存事業とシナジーが効くため、この横展開はシマノにとって大きなプラスになりました。
ただ、ここで言いたいのはシナジーを効かした新規事業に参入すると失敗したときの代償を少なくすることができます
既存の設備をそのまま利用して横展開ができれば、設備投資せずとも新規事業をすることができます。また、ノウハウが全くない状態で新規事業をするのと、既存事業のノウハウが使える状態で新規事業ができるとでは新規事業のスピード感も全く違うと思います。
なので、新規事業は既存事業のシナジーを効かしたものの方が良いです。
(ただし、その業界自体がなくなってしまっては元も子もないので、そういう業界を選択しないことが大事ですね・・・)


3. ブームにのらない

自転車のギアのブームやルアーブームなどはなかったと思うのでシマノには当てはまらないと思いますが、ブームにのらないことは非常に大事です。本質的にビジネスとして強くない可能性があるからです。
上記でも述べましたが、2017年は中国でシェアバイクブームが起き、様々な企業が参入しました。そして、値下げ合戦が行われ結果的に多くの企業が淘汰されていき現在に至ります。このようにブームに便乗してビジネスを立ち上げると悲惨な目にあいます。
(個人的にいまブームのキャッシュレスあたりがやばそうです。最終的に3社くらいまで淘汰されていきそうです・・・)


以上で今回のトレースを終了したいと思います。
最後は自分自身の意見をぶちまけただけになってしまいました・・笑
よろしければフォローなどして頂ければ幸いでございます。

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